二十一幕 旧友
ちょいと少なめ
「ゴメンなさいね、ずっとここに待たせたままで悪かったわ」
法国で拾ってきた知らない男の子、どうしてか愛しい不思議な子、髪も目も金色の私よりも少し高いくらいの背丈の大切な子。
今は催眠魔術を掛けてて返事はないけれど、いつか必ず獣を殲滅して安全になったら解放してあげるわ。
「……私の部屋に行きましょうか」
以前ここに居たときに『塔』が用意してくれた私の部屋、あそこは邪魔は入らない私だけの空間だからこの子を匿うには最適でしょうね。
しばらく歩いて部屋の前にたどり着く。
「それじゃあ入りましょうか」
扉に黒い先の見えない穴を作り出す、この扉は普通に入っても何もない部屋に繋がるだけ、正しい方法で入らないと『月』の空間には辿り着けない。
「ただいま」
穴の先には大きな月が浮かんだ部屋が広がっている、部屋には少女が好むような人形や、数々の服が納められたクローゼット、まるで親に溺愛されている貴族の少女の部屋のようだ。
「……ただいま、元気にしてたかしら?」
その部屋の真ん中、お淑やかに椅子に座る私と瓜二つの少女が一人。
「元気……そうね」
少女は何も語らない、いや語れない、顔から首にかけて服に隠れて見えなくなるまでの小さなスペースに大きな裂き傷があり、片眼と共に肉が抉られている。
いつもの光景……あの時からずっと変わらない痛ましい姿。
「今日はお友達を紹介しに来たの、これから一緒にここに居てもらうわ」
元気……元気……
そう思っていないと心が砕ける、脆く組み上げた安寧が崩れ去る。
元々の彼女の部屋に置かれていた大量の人形を寂しくないように部屋に飾り、美しい容姿に合うように服で着飾り……いつまでも幸せだったかつてに閉じ込めている。
…………
………………
「お休みなさい……いつまでも」
私は彼女に語るべき言葉を持っていない。
いつか復讐を果たすまで、彼女の笑顔が戻るまで、私はずっと戦い続ける。
彼女が眠り続けるように、私もまた戦い続ける。
「それじゃあまたね、いい夢を」
夢が現実に変わるまで、その時まで彼女は起きることはない……。
「ル~ナちゃん♪」
『月』の空間から外に出た後、廊下を歩いていたら後ろからサティに抱き付かれた。
「あらサティ、さっきの騒がしいのは終わったのかしら?」
ずっとあそこに居たら眠る彼女の邪魔になるかもしれない、それに私の気が滅入る……。
「うん終わったよ~、ルナちゃんが逃げちゃったから残念そうにしてたけどね~」
「勝手に残念がっておけばいいわ、私はもう一度たりともあそこに立たないって決めたのよ」
「もうつれないこと言って~、ちょっと楽しかったくせに」
「そんなことは断じてないわ」
「でも料理は食べてもらえて嬉しかったでしょ?」
「……否定はしないわ」
「や~んデレた~、可愛いなぁもう!」
「あ! こら止めなさい! 髪の毛荒らさないで!」
「ふっふっふ~良いではないか~良いではないか~」
「いい加減にしなさい!」
「ぎゃふ!」
服に手を入れペタペタ触ってくるサティの脳天に手刀を落とす、手の素材を硬いものに代えるオマケ付きでね。
「ル……ルナちゃんの愛が感じられて僕は嬉しいよ……」
「それは良かったわね」
床に頭を抱えて蹲る女の子、『悪魔』のサティを改めて観察する。
髪は黒くてそれなりに長い、今は左右に纏めてツインテールにしているようね、涙目で見上げてくるその瞳は赤く、宝石を彷彿とさせる美しさを持っている。
背丈は私よりも高いがそんなに差は無い、歳の近い姉妹のような差だ。
「黙ってれば可愛いのだけどね」
その性格が全てを台無しにしている、へっへっへと笑いながら近づいてくるところを見ると千年の恋も覚めるというものだろう。
「……? ……! 今可愛いって言わなかった? 言ったよね? 私のことが可愛いって!」
そしてめげない地獄耳、突き放しても何度もくっついてくる。
「言ってないわ、勘違いよ」
「嘘だ! 絶対可愛いって言った!」
「そう……頭がお花畑なのね」
「酷い言われよう!?」
これくらい言っても大丈夫、そんな信頼感がサティにはある、あのオタクどもとは違うけどサティが人気な理由が分かる気がするわ。
「それで、何か用かしら?」
「いや? メアちゃんを見かけたから抱き付いただけだよ?」
「そう……それなら気は済んだわね、サヨウナラ」
「あぁ待ってよルナちゃ~ん、せっかく久しぶりに会ったんだからお喋りしようよ~」
理由もなしに抱きついて服を脱がせてくる、こんな子なのよねサティって。
「はぁ……それなら最初からそう言って頂戴、別に断りはしないから」
でもそんなサティを私は好ましく思う、屈託のない笑顔をいつも変わらず向けてくれるサティだからこそ私は安心できる、ここまで落ち着けたのはサティのおかげだもの。
「相変わらずツンデレだね~、お姉さん今日は寝かせてあげないぞ~」
「あらそれは楽しみだこと、一体どんな話をしてくれるのかしら?」
「えっとね~それじゃあルナちゃんが法国に捕まっちゃった後に起こったことを順々に話していくよ~」
ワイワイと。
多分サティだけじゃないかしら? 私が友達だと思える貴重な相手。
だけど忘れちゃいけない、あくまでもサティとは、『悪魔』とは協力関係にあるだけなのだと。
気を許してもこちらの領分に踏み入ることは許さない、もし踏み入るならば戦うしかないだろう、逆もまた然り。
お互いに上辺だけと理解している友達って素敵じゃないかしら? だって気遣う必要がないもの。
「へへ……流石ルナ様だぜ」
「あぁ……あのツンデレがたまんないよな」
「サタニシア様とルナ様! いろんなペアがあるけど、あのカップリングが最高よ!」
「クールでツンツンしてるけど押しに弱くて受け身なメア様、明るくて元気でイケイケなサタニシア様……相性ばっちり」
「お~らお前たち~、分かってると思うがルナにバレたら全員没収になりかねないってこと忘れんなよ~」
「分かってますぜ『塔』の旦那、これはこの国の……ひいては魔族全体の宝じゃありやせんか」
「しかし……サタニシア様は了承しておられるので?」
「あぁそれなら問題ない、むしろルナとの思い出として僕も欲しいって言ってたからな」
「ほほぅ……それは心強い、流石はサタニシア様ですな」
「いいか~お前たち、こうやってルナ成分は随時補充してやるから本人にはちょっかい掛けるなよ~、また遠くの砦に引っ込まれちゃ叶わんからな」
「「「「「YES! BOSS!!」」」」」
「よろしい! ……また攫われるのは御免だからな(ボソッ)」
「何か言いましたか旦那?」
「いいや何でもない」
中島みゆき歌ってたら眠くなってきた……zzz




