二十幕 アイドル『悪魔』
設定が変わり続ける小説、は~じま~るよ~
今宵は月夜に雨が降る
砕けた月が冷たい道に降り注ぐ
日が沈まぬ日が無いように、月が昇らぬ日はあり得ない
でももし月が沈まない日があったなら?
月が沈まぬ日が無いように、日が昇らぬ日はあり得ない
きっとそれは一日なのだろう、長い長い終わりなき一日
「ルナ!」
誰かが私を呼んでいる、こんな‘夜中‘に誰かしら?
「ルナ! 大丈夫!?」
あぁ……誰かしら、私はこの子を知らないわ。
「ルナ! ねえルナ! 聞こえてる!?」
何故かしら、あぁ……知らない子なのに愛おしい。
「くそ! エリーは何やってたの! ルナを守ってるって言ったじゃないか!」
愛おしい……愛おしい? 大切なもの? 奪われる?
「ルナ! ……城に戻ろう、僕は絶対に離れないから……だから今はお願い、城に戻ろう」
離れない? 離さないわ、獣になんて奪わせない。
「お願い」
「ルナ!? 大丈夫だよ! 何でもいって!」
「絶対に離さないわ」
「ルナ?」
「The requiem of marionette(カラクリ人形のレクイエム)」
「ル……ナ?」
何かを忘れてる気がする、大切だった気がする。
思い出せない……思い出したい。
でも必要かしら? 思い出すのは獣を駆逐した後じゃないと意味がないじゃない?
その頃には大切だったはずの何かがなくなってるかも知れない、でも仕方ないと思う。
夜はまだまだ終わらない、悪夢の一日は終わらない。
「会いに行かなくちゃ……」
私には待たせてる人がいる、会わなきゃいけない人がいる。
『月』ハマダマダ沈マナイ……
「さて、半分終わったわよ」
ずっとあの幸せが続いていれば良かったのだけどね……今でも思うわ。
「お……おぅそうか」
途中から皆食入るように見ていたものね、いきなり現実に戻されて戸惑ってるのかしら?
「どうかしら? 何か質問はあるかしら?」
「そうだな……『役』にも強弱があるのか?」
「強弱というか相性ね、魔術に『役』を乗せて使う『月』のようなタイプは時間があれば強いわ、逆に自分とか他人を強化して使う『吊るされた男』とか『太陽』みたいなタイプは遭遇戦みたいな一秒の判断が命取りみたいな戦いでは強いのよ、他にも戦闘系の方が対応力が高かったり魔術系の方が幅が広かったりとか……挙げていくとキリがないわよ」
『役』の特性も関わってくるもの……強弱は何とも言えないわ。
「あ、あと一つ多きな違いがあるわよ、詠唱の有無ね」
「詠唱と言いますと、魔術の前に言う言葉でしたか?」
「そうよ、戦闘系の使う強化は厳格には魔術じゃないの、だから無言で『役』を使うことができる……暗殺のようにね」
そしてそれに対抗する魔術系の『役』がある、いたちごっこね。
「さて! 『役』についてある程度分かってもらえたと思うわ、どういう人が『役』を持つのかも多少はね」
『役』には明確に役目がある、その素質は『役』には欠かせないわ。
「とりあえず寝てるサロさんを起こして次を見ましょうか、ここから先が大切なのよ」
『役』の危険性、その役目、『役』が『役』たる所以がこの先見えてくるわ、混沌としていくケド。
「それじゃあもう半分、いくわよ」
私は私の役目にしたがってだけ……けっして間違いじゃなかったと思ってるわ。
「ここに来るのも久しぶりね、『悪魔』は元気かしら?」
一般に魔王と呼ばれる人物が居る魔王城、その最奥に構えてるのが『悪魔』の『役』を持つ私の知人、いわゆる魔王様ね。
魔王様って聞くと怖いイメージが強いけど、あの子にそんなイメージはない、むしろ明るくて好ましい性格をしていると思う。
「だからこその『悪魔』、『堕落の悪魔』、可愛い顔して堕落に誘う正真正銘の『悪魔』、私と同じように生物にめっぽう強い『役』、下手をすれば一人で国を内側から何の抵抗もなく崩壊させてしまうような能力、無邪気……ではないわね」
人の思考を操作するのが得意……あぁ騒がしいいつものやってるわね。
「みんな~! 盛り上がってる~?」
メガホンだったかしら? かつての勇者が作った声を大きくする道具を通して甘えたような『悪魔』の声が響いている。
その直後雷が落ちたかのような、文字通り地鳴りを引き起こす大音量で魔族の雄叫びが聞こえた……男女問わずの。
「今日は僕の為に集まってくれてありがと~!」
「「「「「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!!!」」」」」
「今日はみんなに報告がありま~す!」
「「「「「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!!!」」」」」
……付き合ってられないわ、何でいちいち叫ぶのかしら? このノリが嫌で一人で砦に籠って居たのよね。
「今日はなんと~! ジャカジャカジャカジャカ……」
会場に色彩豊かな光の球が駆け巡る、魔術じゃなくて光る玉をゴーストに持たせてるみたいね、確かに綺麗だけどわざわざゴーストを集めてやる意味が理解できないわ。
「ジャーーン!!」
先ほどまで無作為に飛び回っていた光の球が私の上で止まり、暗闇の中に私の姿を強調する。
「なんと! 今日は『惑わしの月』ことみんなのアイドル、メアちゃんが帰ってきてくれました~!」
「「「「「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!!!」」」」」
…………
逃げましょう全力で、あのはた迷惑な『悪魔』に捕まる前に、このオタクどもの波に呑まれる前に。
踵を返して走り出す、後ろを見てはいけない、しかし……。
「残念、回り込まれてしまった……ってところかな?」
道を塞ぐように立ちはだかるダンディーなオッサン、あのアイドル『悪魔』を生み出した自称やり手プロデューサーの『崩落の塔』がそこに居た。
「退きなさい! あれに巻き込まれるのはもうゴメンよ! あんな面倒なの……ってもう来てる!?」
「はっはっは、今日くらいは大人しく捕まるんだな、皆心配してぞ? 俺たちのツンデレゴスロリ少女が奪われた~ってな」
「私は私の……ええいもういいわ! 助けてお月様! Phantom dodge(亡霊回避)」
「魔族の塔は世界一! Collapse(崩壊) それは甘過ぎだぞ?」
せっかく『役』まで使った魔術なのに、同じく『役』を使った魔術で崩されてしまった……卑怯よね、魔術そのものを崩すんだもの……。
「ど~して逃げようとするのメアちゃん? ほらほら僕と一緒に舞台に上がろうよ!」
「放しなさい! どうせまた歌わされるのでしょ? また晒し者は嫌なの!」
そっとステージに目を向ける、妙にごてごてした装飾に飾り付けられたお立ち台までの道が綺麗に空いており、その両脇には大量の魔族達が……。
「おい……マジだぞ! マジでお帰りになられたんだ!」
「うおおぉぉぉぉおお!我らがメア様の帰還に万歳!」
「メア様~私を蔑んで~! あぁん! 今! 今私をあの冷たい目で!」
背筋が凍る、馬鹿じゃないの馬鹿じゃないの馬鹿じゃないの!?
前も大概だったけど今はさらに悪化してるじゃない! 蔑んでって……ここはあれかしら? 特殊な変態どもの巣窟にまで墜ちたのかしら?
「ほらほら~恥ずかしがらないの、ファンの皆が待ってるよ?」
「そんなファン要らないし喜ばせる気もないわ! だいたい私があそこに立ったのは一回だけでしょう? どうしてファンなんてものが居るのかしら?」
「それはね~メアちゃんだからだよ~」
「理由になってないわ、私は私の部屋に帰るの、まだ残ってるわよね? 残ってなかったらどっかの砦まで逃げるわよ」
「それに関しては大丈夫だぞ、『月』の結界を破れる奴は俺とサティだけだからな」
サティは『悪魔』の名前、本名はサタニシア何とかって名前だったはず、まぁサティとだけ覚えておけば問題なかったからハッキリ覚えてないのよね。
「うんうん、僕たちは何にも弄ってないからあのままのはず、でも何もないんじゃなかった?」
「そう……それならいいわ、じゃあ私はあの子を連れて部屋に籠ってるわね」
「あの子? あの子って誰……いやそうじゃないでしょ! ほらほらステージにカモンカモン!」
「それじゃあねサティ、その騒がしいのが終わったらまた会いましょう」
逃げるが勝ち、逃げは恥じゃない……あれに巻き込まれるくらいなら私はどれだけでも背中を晒すわ。
「ちょっとルナちゃ~ん?」
「やれやれだな、まぁそんなツンツンしたところが人気のわけなんだがね」
ツンツン? 違うわ嫌悪よ、どうして嫌悪感を向けられて喜ぶ輩がいるのかしら。
ある程度離れたところでまたサティの声が響く。
「みんなゴメンね~メアちゃん恥ずかしがっちゃって部屋に戻っちゃった~」
「「「「「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!!!」」」」」
「でも今後はここに居てくれるからまた会う機会はあると思うの~、見かけたらまた声かけしてあげて欲しいな~」
「「「「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!!!」」」」
……安易に出歩けないようね。
本当に三章の投稿が終わったら何にもストックが無くなる……四章どうしようかな? 結構予定より大幅に変わりそうなんだよね~HAHAHA




