『異世界に転生したら人生楽でした〜現実では底辺だった俺ですが異世界では英雄として愛されています〜』
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田中海斗は、薄暗い部屋の中でスマホを見つめていた
画面には、自分の小説ページ
『異世界に転生したら人生楽でした〜現実では底辺だった俺ですが異世界では英雄として愛されています〜』
「……長ぇな」
自分でつけたタイトルなのに、口に出すと妙に恥ずかしい
海斗はベッドへ倒れ込む
スプリングが軋む音
六畳ワンルーム
コンビニ弁当の空容器
飲みかけのエナジードリンク
机には開きっぱなしのノートPC
典型的な“売れてない創作者の部屋”だった
「最初はマジで売れると思ってたんだけどなぁ……」
スマホをスクロールする
一話
二話
三話
この辺りまでは、ちゃんと考えていた
伏線もあった
世界観も作ってた
キャラ設定だって、ノートにまとめていた
……五話くらいまでは
「途中から完全にライブ感だったな」
海斗が苦笑する
人気が出ない
読まれない
反応もない
すると、だんだん分からなくなってくる
何を書けばいいのか
何が面白いのか
誰に向けて書いてるのか
だから、とりあえず盛った
最強
ハーレム
覚醒
新能力
設定追加
後付け
その場のノリ
「どうせ誰も読んでないし……」
何度も使った言葉だった
海斗は更新履歴を見る
最終更新、四ヶ月前
綺麗にエタっていた
「……続きどうすっかなぁ」
PC横のメモ帳を開く
【今後の展開候補】
・主人公覚醒
・新ヒロイン追加
・実は魔王いいやつ
・やっぱ黒幕
・人気なかったら消す
・ラスボスどうするか未定
「終わってんな……」
自分で書いて、自分で引く
でも消せなかった
本当につまらないと思っていたなら、とっくに削除していた
未練だけが残っている
海斗はぼんやり天井を見る
「……創作って、なんなんだろうな」
誰にも読まれない物語
評価されない作品
意味なんてあるのか
才能ないなら書かない方がいいんじゃないか
そんなこと、何回も考えた
それでも結局、消せなかった
書きたかったからだ
頭の中に浮かぶ物語を、どうしても形にしたかったから
たとえ誰にも届かなくても
ピコン
通知音
「……ん?」
スマホを見る
【新着コメント 1件】
海斗が目を見開く
「え……?」
震える指で通知を開いた
『更新、まだですか?』
たった一文
それだけ
なのに
心臓が、強く跳ねた
「……読んでるやつ、いたのか……?」
次の瞬間
スマホ画面が、バチッと白く弾けた
「うおっ!?」
光
熱
文字列が画面の中で暴れ始める
キャラクター名
設定
没案
タイトル
全部がぐちゃぐちゃに混ざり合う
「な、なんだこれ!?」
画面の奥から、“声”が聞こえた
『――やっと、続きを書いてくれるんですね』
知らない声
なのに、どこか懐かしい
世界が歪む
視界が白に飲まれていく
最後に海斗が見たのは、
『異世界に転生したら人生楽でした〜現実では底辺だった俺ですが異世界では英雄として愛されています〜』
自分でつけたそのタイトルだった
まるで、
誰にも言えなかった願望を、そのまま叫んでいるみたいなタイトルだった




