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28話

昨日見つけた隠し空間が、頭から離れなかった。


私は王妃の私室に入り、扉を閉める。


姿見は、昨日と同じ場所にある。


けれど、その裏には昨日まで知らなかった空間がある。


「……ここに、何を隠していたんだろう」


私は姿見を少し動かした。


壁との間にできた隙間から、昨日見つけた小さな扉が見える。


周囲を確認する。


誰もいない。


私は扉を開いた。


中にあったのは、昨日見た布包みだった。


薄い布で丁寧に包まれている。


私はそれを両手で取り出した。


思ったより重い。


机の上に置き、布をほどく。


中から現れたのは、一冊の古い書類だった。


表紙には何も書かれていない。


けれど、留め具には封蝋が残っていた。


「これは……」


赤黒く変色した封蝋。


その中央には、見覚えのない古い紋章が刻まれている。


今の王家の紋章とは違う。


私はしばらく眺めてから、書類を開いた。


最初の頁には、古い文字が並んでいた。


私はゆっくり読み進める。


しばらくして、手が止まった。


「王太子……」


その言葉が書かれている。


さらに読む。


そこには、ある人物を王位の正式な後継者として認めること。


その人物が王家の正統な血を受け継いでいること。


そして、その継承を認める者たちの署名が並んでいた。


「署名……」


一人ではない。


何人もの貴族の名前。


それぞれの横には印章まで押されている。


最後には、王家のものと思われる大きな印があった。


私は息を止めた。


ただの古い手紙ではない。


これは、何かを証明するための正式な文書だ。


ページをめくる。


途中に、はっきりと書かれていた。


――正統なる後継者。


その言葉を見つめる。


「王位を継ぐ資格を……証明する書類?」


声に出してから、自分でも驚いた。


そんなものが、なぜ王妃の私室にある。


しかも、こんな隠し場所に。


私はもう一度、最初の頁から読み直した。


文章の細かな意味までは分からない。


私は政治について詳しいわけではない。


けれど、ひとつだけ分かった。


この書類は、王位に関わる。


しかも、かなり重要なものだ。


そして。


書かれている内容が、今の王宮で語られている歴史と同じではない。


「……違う」


私は呟いた。


今の王家が王位に就いた経緯について、私が知っているのは教えられた歴史だけだ。


その歴史と、この書類に書かれたことが一致しない。


では。


どちらが本当なのか。


考えたところで、私には判断できない。


ただ、この証書を隠した人間がいる。


それだけは確かだった。


私は証書を見つめた。


王妃は、この場所を知っている。


ならば、王妃が隠したのだろうか。


それとも、もっと昔からここにあったのか。


分からない。


けれど、ひとつだけ気になることがある。


十五年前。


ローザ。


王女の死。


そして、ノルデン村。


これまで見つけてきたものが、また一本の線でつながり始めている。


そのときだった。


廊下から、足音が聞こえた。


私は顔を上げる。


一歩。


また一歩。


誰かがこちらへ近づいてくる。


「……まずい」


私は証書を見る。


元に戻すべきか。


持っていくべきか。


迷った。


けれど、このまま隠し場所に戻せば、次に誰かが来たとき、この証書がどうなるか分からない。


私は布を広げた。


証書を包み直す。


そして、胸元に抱えた。


足音が、扉の前で止まる。


私は息を潜めた。


そのとき、包みの隙間から古い紋章が見えた。


その紋章を見て、私はふと思った。


「……この印」


どこかで見たことがある。


まだ、思い出せない。


けれど。


この証書に書かれていることを知るには、もっと古い記録を調べる必要がある。


私は証書を握り直した。


今度は、十五年前の事件だけでは済まない。


もっと前から続いている何かがある。


そう思った。

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