27話
昨日のことが、気になっていた。
姿見。
埃の跡。
そして、わずかに動いたこと。
私は朝一番に王妃様の私室へ入ると、真っ先に姿見を見た。
「……やっぱり」
昨日と同じだった。
右側の床だけ、埃が途切れている。
私は掃除道具を置いた。
今日は、確かめる。
部屋には誰もいない。
私は姿見の両側に手をかけた。
「よいしょ……」
少しだけ力を入れる。
動いた。
昨日より、ほんの少し大きく。
床を傷つけないよう、ゆっくりと動かす。
すると。
「……え?」
壁が見えた。
いや。
壁ではない。
姿見の後ろに、細い線がある。
縦に一本。
その上に、横に一本。
まるで小さな扉のようだった。
私はしゃがみ込んだ。
指先で縁をなぞる。
埃がない。
「ここだけ……」
周りの壁には埃が積もっている。
なのに、この継ぎ目の周囲だけ妙にきれいだった。
誰かが触っている。
そう思った。
私は一度、手を引いた。
勝手に開けていいのだろうか。
王妃様の私室だ。
見つけたからといって、何でも触っていいわけではない。
けれど。
私は昨日のことを思い出した。
ローザ。
エドガー。
ノルデン村。
そして、セシリア。
この部屋に何かが隠されているなら。
それが今まで調べてきたことと関係している可能性はある。
「……確認するだけ」
私は自分に言い聞かせた。
扉のような継ぎ目に指をかける。
少し押した。
動かない。
反対側を押す。
今度は、わずかに沈んだ。
「開く……?」
もう一度、ゆっくり押す。
かすかな音がした。
扉が内側へ動いた。
その先は、暗かった。
私は息を止めた。
小さな空間だった。
人が入れるほどではない。
棚もない。
ただ、奥にひとつ。
布に包まれたものが置かれていた。
「……何、これ」
私は手を伸ばした。
布は古い。
けれど、埃は少ない。
長い間放置されていたものではない。
私は布の端をつまんだ。
中に硬いものがある。
紙。
いや。
紙だけではない。
何枚か重なっているようだった。
私は包みを持ち上げた。
その瞬間。
廊下から足音が聞こえた。
私は動きを止めた。
ひとつ。
ふたつ。
こちらへ近づいてくる。
「……誰?」
声がした。
王妃様の侍女だ。
私は反射的に振り返った。
まだ姿見は動かしたまま。
隠し扉も開いている。
そして私の手には。
この部屋に隠されていた包みがある。
足音が、すぐ近くまで来た。
私は包みを見下ろした。
まだ、中身を見ていない。
けれど。
これがただの古い紙ではないことだけは、分かった。




