ドS姫
『火』
これは一応初級魔術だが、イリスはドSモードに入っているため、通常の『火』よりも六倍の威力で放たれている。
「んふふふふふ」
「ぎぃやああああああ」
さすがに結界でも防ぎきれなかったのか、オダマキは逃げまわっている。
笑いと悲鳴が響き渡る戦いを見ているロベリアとイリスの教師兼、ロベリアのメイドは、二人してため息を吐いた。
「あれはもうダメですね。期待が外れました」
「こんなんじゃ、杖どころか涙さえ見れないか。でも、良い情報はあった」
「?」
ふふ。ロベリアは不敵に笑う。
「ま、次も私に勝てるといいね。お姉さま」
「ああ、そう。私はクソみたいな男どもの相手をしなくちゃいけないからここを抜ける。あなたは後でオダマキに伝えときなさい」
「御意」
ドーン、ゴーン
戦う音を聞きながら(一方的にやっているとも言う)ロベリアは闘技場を出て行った。
「ひいいいいいっ、棄権!棄権します!」
ピーーーーッ
笛の音が鳴る。終わりの合図だ。
「えー、勝者、イリス様~」
「わーい」
やったやった。ぴょんぴょん跳ね回る。
クソッとうなだれるオダマキは本当に悔しそうだった。
「もう一度だ!もう一度!」
駄々をこねるオダマキにメイドは近寄る。
「オダマキ様。ロベリア様からの言伝です。後で——」
何を言ったのか分からなかったが、ただ一つ、それは尋常じゃないことだけは分かった。
なぜなら、オダマキは大量に汗をかき、震えていたから・・・
「イリス様。先に部屋へ戻っていてください」
「はーい?」
腑に落ちないが素直に部屋へと戻る。
そのあと、何があったかも知らないまま。
■
「ふう、今日は怒られないで済んだ」
どうやら寝て怒られたことはすっかり記憶から消えているらしい。
服を脱ぐ。
「お風呂♪お風呂♪」
ガラッ
扉を開ける。
今までは侍女が付いてて風呂に安らぎなど感じた事がなかったが、今は一人で入っているので気持ちよく入れる。
「ふい~」
あー、あったかーい。疲れが取れる~。
一人にしてはさすがに広いが、独占できるのは最高だ。
「風呂って眠くなるんだよなぁ~・・・ぐう」
完全に風呂で寝落ちしたイリスだった。
■
「イリスゥ~?」
父上に呼ばれた。原因は私が風呂で寝た事らしい。
「え、ねえ、何で五歳児でもしない事を君はするんだい?パパ心配になっちゃうよ?」
自分のことパパって呼ぶのやめてほしい。きもい。ていうか、私の心配なんて一ミリもしてないくせに。
せっかくの風呂上りの気分が台無しだ。体が冷えた。
「次からはほどほどに風呂に入るように!」
そんなこんやで父から釈放された。
■
「嫌だ!助けてください!次は・・・次は!」
必死にすがってきているのはオダマキだ。
今は森の中にいる。そこは『魔の森』と言われるほどで、危険な魔物がうじゃうじゃといる。
「無理です。一度失敗したなら次は来ないんです。そう主がおっしゃっていたありませんか。今回はそれがあなただったのです。残念ですが・・・さようなら」
「おい・・・!待て!待ってくれ!カルミアァァァァァ!!!」
そこにいたのは、イリスの教師であり、ロベリアのメイドだった。
背中を向け去っていく。奴がこんなにも強かったなんて・・・
逃げようと動く。だが、さっき足を切り落とされ動けない。
どうすればいい!?恐怖で思考が回らなくなる。
「あの女のせいだ。あいつのせいで私は負けたんだ。あいつがいなければ、あいつのせいで・・・!許さない。イリスゥゥゥ!!!」
魔物の気配を、感じた。




