眠気には抗えないのが姫なのよ
刺殺未遂事件から数日後———‥‥
私はいまだに殺されそうになっていた。刺客がこちらに向けて剣を降ろしてくる。
「死ねぇ!!—————ぎゃんっ」
剣と共に刺客の顔面を殴ったら、想像以上に飛んで行ってしまった。
確認すると、刺客は気絶していた。
「‥‥‥毎回思うんだけどさ、どうすればいいだろうね。これ」
「さあね、そこら辺の土にでも埋めときなさいよ」
「‥‥えー‥‥」
土に埋めたら死んじゃうからいやだなぁ。できれば問題にならない方法で殺した方が‥‥
「にしても面白いわね。アンタこれで四回目じゃない。すごいわよ、ここまで暗殺されそうになるって‥‥アンタどこで誰にどんな恨みを買ったのよ」
ケタケタ笑う黒猫———‥‥セラの口にネギを突っ込もうとする。うわ、避けられた。
「笑わないでよ」
「じゃ、誰かに相談したら?」
「誰かに‥‥」
そんな発想一度も思いつかなかった。でもなぁ、誰かに相談って言っても‥‥‥グラジオラスは論外でしょ?ロベリアには心配かけたくないし、カルミアは‥‥‥うん、何考えてるか分かんなくてぶっちゃけ怖い!
「ごめん、私の交友関係なさ過ぎて相談できる相手いなかったわ」
「アハハ」
うっそ、喋れる相手もいないのぉ?と、煽ってくるセラに正拳突きをおみまいしてると
「なぁ‥‥さっきお前の部屋からやべぇ音聞こえたんだけど、大丈夫か?———ってお前何一人で何もない空間殴ってんだよ」
ドアを開けて入ってきたのはライアスだった。
■
「あー、なるほどなぁ。え、ウケる。何?お前命狙われてんの?おっもろ」
ハハッと笑うライアスに殴りかかった。普通に受け止められたのだが‥‥ムカつくなぁ。
本当どいつもこいつも私が命を狙われていると知ればなぜ笑いだすのだろうか。
「そう怒るなって。チョコやるから。機嫌直せって」
「いいよ」
「え、うん‥‥早いな」
チョコを頬張ってモグモグしていると、突如セラが私の膝の上に寝っ転がってきた。
「ちょっと、降りてよ」
「えー、良いじゃない。減るもんじゃないし」
「君の体重で私の膝が潰れたら泣いちゃうね」
「失礼な!」
私とセラがギャアギャア言い合っていると、その様子を見ていたライアスの顔が引きつっていた。
「え、お前‥‥なに一人で騒いでんだよ」
「一人?いや‥‥‥セラもいるで———‥‥‥モガッ」
突如セラの前足で口を思いきり押さえつけられた。
『喋ってはダメよ』
いきなり脳にセラの声が聞こえて来た。これは‥‥『神経接続』精神魔術の一つである。脳に直接つながるので、人と連絡を取ったり人に聞かれたくない時に便利な魔術だ。
『どうして?』
『さあね、特別な人間にしかアタシの事が見えないの。それに‥‥‥アタシの事を言ったら‥‥‥』
『言ったら‥‥‥?』
ゴクッと唾を飲む。そんな真剣な表情されたらちょっと困るな。
『アンタがやばい奴だと思われるわよ』
『なっ』
それはマズイな。絶対に言わないようにしよう。ていうか、私以外の三人もセラの事が見えてたような‥‥
「おい、大丈夫か?急に押し黙って」
「あ、ごめん。寝ぼけてたのかもね~、何ていったってほら。刺客が多くて眠れないから」
「あ、ああ。そうだな」
部屋の隅にある、さっき気絶させた刺客を見ながらライアスは、頷いた。
■
「クソッ、化け物め‥‥‥だが、私の魔術を受けてみろ!水鞭!!」
イリスは攻撃をサッと避けるとそのまま殴って気絶させた。
「これで何人目?いい加減疲れた‥‥‥」
「あら、このままだと神拝祭に行っても刺客が来そうね。ていうかどうでもいいけどこの部屋どうするの?」
「あ‥‥‥」
さっき避けた攻撃が、部屋をボロボロに壊していたのだ。
「仕方ない。魔術で直すか‥‥」
「その間眠れないじゃない」
「うーん‥‥‥じゃあ、寝ながらやってみよっか」
「いやベットも壊れて‥‥‥て、どこ行くのよ」
イリスは部屋をでてある場所へと向かった。
■
ドンドンドンッ
ある人の部屋を思いっきりノックする。
「やめろやめろ、部屋が壊れちまうだろ」
「私の部屋は今壊れてるのに?」
「げ‥‥‥おま‥‥‥」
「泊めて。ライアス」
イリスはライアスの部屋へと来ていた。
「やめてくれよ。俺まで命を狙われちまう」
「そう、いいね」
「聞いてないだろ」
イリスは今、ライアスのベットの上に寝っ転がりながら部屋の修理をしていた。魔術で片目を部屋に、もう片方で今いるところを見ていたのだ。
「早く帰れよぉ」
「‥‥‥うん」
「あれ、イリス?ちょっと眠そうじゃない?おい、あ、寝るな!!」
ここ数日連続で刺客の相手をしていた私は、さすがにこの眠気には、勝てな‥‥‥い‥‥‥




