刺客
「やっほ~、昼ぶりだね。じゃあ私寝るから。おやすみ~」
そう言ってベットにもぐろうとする私を黒猫が止めてきた。
「ちょっと待ちなさいよ!なに勝手に寝ようとしてんのよ!」
「え~、良い子は寝る時間‥‥」
「アンタは良い子じゃないから寝なくて良いわよ」
「失礼な」
私のどこが良い子じゃないのか。鬱陶しいな~この猫。
「えーっとえーっと、あれ~?持ってきたはずなんだけどなぁ~」
持ってきたリュックの中をあさる。アレどこいったんだろ。
「探し物?」
「うん。ネギはどこかなって」
「いや‥‥アタシにネギは効かないわよ」
え?猫ってネギ食べると死ぬんじゃないの?なんだ~、せっかく食べさせようと思ったのに‥‥
「私の睡眠を妨害する奴は殺すって決めてるんだ~」
「え、それやめなさいよ‥‥てか何でネギ持ってるのよ」
「ん~?何か、いるかなって」
「んな訳ないでしょ」
でも何で持ってきたんだろ?そん時お酒でも飲んでたのかなぁ?
「ハッ、そんなことしてる場合じゃないのよ。今夜アンタに刺客が来るらしいのよ」
「え?」
早くない?まだこの城に来て一日も経ってないんだけど。
「何で早く言わなかったのさ」
「アンタが恐ろしいこと言うからでしょ」
その時だった。バルコニーから男の声が聞こえたのだ。
「おい、ここか?イリスっていう奴の部屋は」
「ああ、そうに違いない。一刻でも早く殺すぞ」
そのまま、男二人組はイリスの部屋に突入した。
「‥‥‥おい、いないぞ」
「なに?部屋を間違えたのか?」
先程まで猫と喋っていたイリスの姿が消えていたのだ。男二人はもう一度バルコニーに戻ろうとした。
ゴトッ‥‥何かが落ちる音がした。
「あ?何か物落ちたか?」
男の一人が確認しに行く。
「おい、何も落ちてな―――‥‥」
男の声が突如途切れた。それきり、気配も消え去った。
「おい、どうした?何だよからかってんじゃ‥‥ね‥‥」
男は、恐ろしいものをみた。天井から仲間が吊り下げられていたのだ。
「う、う‥‥‥あ、あぁ‥‥‥」
恐怖で声も出せない。男は尻もちをついて後退りをした。
「ねぇ」
「うぎゃあああああああっっ」
突然耳元から聞こえてきた声に、男は驚きの余り失神してしまった。
「‥‥しまった。やり過ぎた」
「アタシは知らないわよ」
「どうしよう。この‥‥‥人間達は」
「もっと良い言い方ないの?」
■
ズル‥‥‥ズル‥‥‥何か引きずる音が聞こえる。
見れば引きずられているのは男二人‥‥‥そして引きずっているのは一国の姫だった。
「これ‥‥‥どこに捨てよう」
「あら、捨てたいの?ならこの二人を雇った奴の元に返せばいいじゃない」
「でもさ~、その雇った人が分からないんだよぉ」
「アタシは知ってるわよ」
‥‥‥嫌な猫だ。こいつはどこまで分かっているのだろうか。それに‥‥一般人にはこいつの姿が見えないらしい。だとすると‥‥‥神の御使いか、精霊か‥‥‥それとももっと高貴なものだったりして。
「‥‥‥教えてもらわなくていいの?」
「う~ん‥‥‥君に貸しを作るのは嫌だしなぁ‥‥‥」
どうしたもんか‥‥あ!思い出した!男の服をゴソゴソと漁る。
「何してんのよ」
「雇い主の大体は刺客にバレないよう追跡してるの」
そして、自分が危険に会わないように魔術を使う。
「これとか」
私の近くにあった茂みの中からあるものを取り出した。
「‥‥‥!それは‥‥」
「魔物だね。魔術を掛けられてる。この魔物を使ってこの二人を見ていたらしい」
これを見つけたってことはもう雇い主は逃げてるか。
「さ、帰るよ」
「行かなくていいの?」
「この魔物は東洋に生息する魔物だよ。ここは西だし、行きたくもない」
「ふ~ん」
「ゲッ、ついてこないでよこの猫」
「あら、アタシはセラって名前よ。よく覚えて」
最悪だ。てか名前あるの?野良猫に!?何か嫌な予感する~!




