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夢小説

「とりあえずいったん解散!寝込み襲われないようにね~」

「軽く怖いこと言うな」


 バイバーイと手を振り、私はロベリア達がいる方へ向かった。



「ロベリア~!仲良くやってた~?」


 第六王子の部屋にイリスは突る。

 

「え!二人ともどうしたの!?」


 そこにはロベリアとグラジオラスが死んだように倒れていた。その横では第六王子が嬉しそうに何かの本を読んでいる。


「あ、姉さん‥‥‥ハハ‥‥すごいんですよ、こいつ‥‥‥姉さんが連れ去られてから、ずーっと本を読み聞かせてくるんです‥‥‥」

「しかも、その本のジャンルが特殊で‥‥‥ずっと恋愛もの読んでるんです。あんたらが帰ってくるまでに10冊以上は読んでて‥‥‥」


 なるほど、さっきから聖女とか勇者のキーワードしか聞こえてこなかったのはそういう事か。第六は恋愛が好き?じゃあ、あれも分かるか?


「ねえ、第六君」

「ユローフ」

「ユローフ君‥‥‥スゥ———‥‥‥今人気の恋愛ものの本って何?」


 少しだけ聞いたことがある。人は、自分も本の主人公になりたいが為におかしくなることがあるらしい。しかも、その本の大体が恋愛ものとか何とか。


「今人気の‥‥恋愛もの‥‥?何を質問してるんだろな。姉さんは」

「さあ?知りません。というか今のうちにこの部屋から出ましょう。早く用意された部屋に行きたいです」

「賛成だ」


 後ろでこそこそと逃げようとするロベリアとグラジオラスの肩を逃がすもんかと私は掴む。二人は膝から崩れ落ちたが、私には知ったこっちゃない。


「今人気の恋愛小説は、『聖女様と王子様』です!!すごいんですよ!この物語は平民の出の聖女が城にやって来て、第一王子と婚約することになるんです。しかし、聖女が自分よりも地位が高くなることを許せなかった第一王女が聖女をいじめるんですが、ある日そのことが国王様にバレてしまい、結界的にその王女は見放されて通報されるのです!そして聖女と王子が———‥‥むごむご」

「ストップ!ストーップ!!」


 耐えられず、ユローフの口を塞ぐ。

 あ、危なかった‥‥このまま話させてたらどうなったことか‥‥


「ほらな、やっぱり聞いてたら狂うって」

「そもそもあの人は、何であんな事聞いたんでしょうね」

「知らん。‥‥‥ハッ、まさか姉さん恋愛に目覚めて‥‥‥」

「それは無いに決まってますよ。何て言ったって、ユローフが言ってた第一王女とそっくりそのまま民衆に伝わって———‥‥ダァッ」


 グラジオラスに向かって本を投げる。顔面に当たったらしく、グラジオラスは顔を抑えて悶えていた。

 失礼なこっちゃ。私は善良なお姫様だっていうのに。


「そうだ!イリスさんにこれあげます」

「え、なにこれ‥‥」

「さっき言ってた『聖女様と王子様』です!そろそろ僕勉強の時間なので!次会ったらたくさん語り合いましょうね!!」


 ユローフに背中を押されて部屋を出る。パタン‥‥‥扉が後ろで閉じられた。

 え、今、この本について語り合う約束をされた‥‥!?


「どうすれば‥‥‥」

「この本読んでみればいいのでは?」

「え、ちょっと待って。一旦皆で読んでみよう。一旦」

「いや、あらすじだけにしたいっす。それか最初の一行だけ」

「と、りあえず辛くなるまで読もう。オッケー?」

「「「オッケー」」」


『ガタンガタン‥‥馬車が揺れる。私、今日から城で過ごせるんだ!

 私はカリン、平民の出の女の子だよ。どうして私が城に住めれるようになったのはね、私が世界で5人もいない聖魔術を使えるから何だって!王子様と国王様に会うのはちょっとだけ緊張するけど‥‥精一杯気に入られるように頑張らなくちゃ!』


 パタン‥‥本を閉じた。


「どうして平民の出が城に住めるんだ!!」


 ロベリアが突っ込む。


「確かに‥‥普通は聖女は聖女でも、高くて公爵家止まり‥‥絶対に王家に入れることはないもんね」

「あぁ‥‥これで平民の女の子達は夢を抱いてしまう訳ですね」

「因みにこの後ヒロインが乗ってた馬車が蛮族に襲われ、王子に助けられる展開があるよ」

「あっはは、聖魔術使えや」


 この本の感想をそれぞれ口にしていると、突如どこからか突きつけられるような視線を感じた。それも一人じゃない‥‥何人もいる‥‥!一体どこから‥‥‥!?


「すごい睨まれていますね。メイド達から」


 カルミアがボソッと呟いた。


「え、マジ?まさかメイドにまで好かれてる感じなの?この本」

「いや、まさかだけど、ねぇ?」

「とりあえず、部屋が用意されてるらしいから各自戻ろう」



「ここか、私の部屋は」


 くだらない事をしてる間に随分と暗くなってしまった。

 ガチャ、ドアを開ける。


「にゃ~お」


 猫の鳴き声が聞こえた。視線を巡らせると、バルコニーに黒猫がいた。


「君は‥‥‥」

「待ってたわよ。イリス」

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