アヴニール
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‥‥アヴニールは何かを感じていた。一言で言えば不思議、そう、不思議や。あの少女からは強者の威勢も、俺への恐怖も、微塵たりとも感じへん。なぜや‥‥?
突然、イリスが後ろに下がって"何か"を避けた。
その直後、さっきまでイリスがいたところに雷が堕ちた。
「!」
「あれ、初めて表情出したんじゃない?」
一瞬、アヴニールが出した驚きの表情をイリスは見逃さなかった。
何や、ありゃ……。まさかまた神と関係してるんか?やとしたら今度は何や……?
「驚くのも無理ないね。何かね~見えてくるんだよ。未来が」
「未来……?」
「君喋れるんかい。そうそう、未来……て言うよりかは予知かな?」
予知……?んなバカな…人間の限界を超えてるで。
そう…イリスの力は、神と関係している。『神の寵愛』、これは一族代々と引き継がれていく。その中でも最も神に気に入られた者、近しい者がある力を持つ。
今はまだ知らない……そのうち未来ではこれを
『六神力通―天眼通未来』
と呼ばれることになる。
「マズい、流石に手の内を見せすぎた~、後で消すか」
イリスの不穏な言い方に若干の恐怖を覚える。そんな中でも攻撃できるのだから普通ではない。
あぁ、嫌なるわ。全て見透かされてるなら戦ってもムダや。なのに…なのに、身体が止まんないんや、まるで、勇者と戦ってるみたいで…。
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(……私は勇者じゃないんだけどな~)
一つ、分かったことがある。それはアヴニールが私を勇者として見ている事だ。こうなったらアヴニールを殺すしか今の私には手がないわけだが、そしたら魔王が悲しむのでどうしようもない。
「勇者だったらどうしてっかな~?」
(考えたところで無駄か)
そんなことを考えていると、がれきやらが飛んできた。
「わ~」
ひょいとかわす。こんな事続けていてもキリがない。そろそろ終わらせたいが、魔王が来ないと私は動けない。とりあえず大人しくさせとくか。
『神器——祝福の鎚』
真正面からアヴニールに片手で鎚を振り落とした。
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「や‥‥やめぇい」
「!」
何と、魔王が私の一撃を手で受け止めていた。それでも腕は威力の重さに耐えきれず、骨が折れまくってる。
アヴニールを守った‥‥?まあいいか。
「姉さん!」
魔王の後ろからロベリアが走ってくる。
「ロベリア‥‥‥」
「大丈夫ですか!?ボロボロですよ!」
「うん‥‥‥」
サッと折れた右腕を隠す。
「それよりも、アヴニールは———」
「おとん!?どうしたんや急に!」
見れば、アヴニールの口からは血が溢れ、倒れた。
「おとん‥‥!!」
「代償だね」
「だい‥‥しょう‥‥?」
「魔力暴走ってのは、脳のリミッターを壊して限界以上のパワーを放出し続けるんだよ。そんなことを何十分も続けていたら体が壊れるのも当たり前だね」
「それを知っ———」
「まだ、魔力暴走の抑え方は発明されてない」
魔力暴走‥‥人も魔族も関係なく蝕み、やがて本体そのものと朽ちていく。私でさえ、見たのは初めてだ。
「ゲホッガホッ」
「おとん!」
「大丈夫や‥‥心なしかすんごい体が元気に感じられるで」
「え!?」
「それでも後数分で死んじゃうけどね」
「ははっ、せやなぁ‥‥すまんな、アンタら。最後まで勇者の幻影を追い続けてしもうた」
「おとん‥‥」
魔王が泣きそうになる。
「あー‥‥イリスとロベリアやっけ?早く帰り。俺が死ぬと旧魔王城も崩壊するで」
「そう、じゃあ帰るとするか」
「そうですね」
「じゃ、またね」
イリスとロベリアは踵を返して旧魔王城に向かってった。
「良いんですか?戻って‥‥」
「いいよいいよ、これからは‥‥‥親子の時間だもん」
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「ゲホッ」
アヴニールの口から大量の血が噴き出した。
「おとん!」
「ええって、気にすんな。‥‥知っとるか?俺は勇者を七人中、六人殺したんやで」
「えぇ!?」
「すごいやろ?でも、あと一人に、負けてもうた。完敗してたんや」
「おとん‥‥‥」
「その勇者の事ばっか思ってて、リュミのこと全く見れんかった。ホントにみっともないなぁ」
こんなこと話しても許されるわけやないのに。
「リュミ…これだけは覚えとき。自分を倒す勇者は、超おもろい奴や!」
いつか、リュミも出会う出会うんやろなぁ。
静かに涙をこぼすリュミエールを見る。ダメだ、眠くなってきた。
「あぁ、いつか……いつか、種族の隔たりが消えた、平和な世界になったあかつきには、永遠の友情を誓おうや。"孤独の勇者"」
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「姉さん、道が崩壊してきました。早く帰りましょう」
「うーん…」
「何して……って、何ですかその古い本は」
「いや…何かさっき、道に落ちてるの拾ってさ」
「えぇ……」
何てもん拾ってんだこの姉は…と思いつつもロベリアも気になるのか道が崩壊していく中、本を見る。
「……これ読めます?何て書いてあるんですか?」
「知らん」
「えぇ……」
ウソだ。本当は読める。……私には分かる。この文字は聖文字だ。
にゃ~ん
崩れていく道の中、何故か猫の鳴き声が聞こえた。




