表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
42/52

アヴニール


 ‥‥アヴニールは何かを感じていた。一言で言えば不思議、そう、不思議や。あの少女からは強者の威勢も、俺への恐怖も、微塵たりとも感じへん。なぜや‥‥?


 突然、イリスが後ろに下がって"何か"を避けた。

 その直後、さっきまでイリスがいたところに雷が堕ちた。


「!」

「あれ、初めて表情出したんじゃない?」


 一瞬、アヴニールが出した驚きの表情をイリスは見逃さなかった。

 何や、ありゃ……。まさかまた神と関係してるんか?やとしたら今度は何や……?


「驚くのも無理ないね。何かね~見えてくるんだよ。未来が」

「未来……?」

「君喋れるんかい。そうそう、未来……て言うよりかは予知かな?」


 予知……?んなバカな…人間の限界を超えてるで。

 そう…イリスの力は、神と関係している。『神の寵愛』、これは一族代々と引き継がれていく。その中でも最も神に気に入られた者、近しい者がある力を持つ。

 今はまだ知らない……そのうち未来ではこれを


六神力通(ろくしんりきつう)天眼通未来(てんがんつうみらい)


 と呼ばれることになる。


「マズい、流石に手の内を見せすぎた~、後で消すか」


 イリスの不穏な言い方に若干の恐怖を覚える。そんな中でも攻撃できるのだから普通ではない。 

 あぁ、嫌なるわ。全て見透かされてるなら戦ってもムダや。なのに…なのに、身体が止まんないんや、まるで、勇者と戦ってるみたいで…。



(……私は勇者じゃないんだけどな~)


 一つ、分かったことがある。それはアヴニールが私を勇者として見ている事だ。こうなったらアヴニールを殺すしか今の私には手がないわけだが、そしたら魔王が悲しむのでどうしようもない。


「勇者だったらどうしてっかな~?」


(考えたところで無駄か)


 そんなことを考えていると、がれきやらが飛んできた。


「わ~」


 ひょいとかわす。こんな事続けていてもキリがない。そろそろ終わらせたいが、魔王が来ないと私は動けない。とりあえず大人しくさせとくか。


『神器——祝福の鎚』


 真正面からアヴニールに片手で鎚を振り落とした。



「や‥‥やめぇい」

「!」


 何と、魔王が私の一撃を手で受け止めていた。それでも腕は威力の重さに耐えきれず、骨が折れまくってる。

 アヴニールを守った‥‥?まあいいか。


「姉さん!」


 魔王の後ろからロベリアが走ってくる。


「ロベリア‥‥‥」

「大丈夫ですか!?ボロボロですよ!」

「うん‥‥‥」


 サッと折れた右腕を隠す。


「それよりも、アヴニールは———」

「おとん!?どうしたんや急に!」


 見れば、アヴニールの口からは血が溢れ、倒れた。


「おとん‥‥!!」

「代償だね」

「だい‥‥しょう‥‥?」

「魔力暴走ってのは、脳のリミッターを壊して限界以上のパワーを放出し続けるんだよ。そんなことを何十分も続けていたら体が壊れるのも当たり前だね」

「それを知っ———」

「まだ、魔力暴走の抑え方は発明されてない」


 魔力暴走‥‥人も魔族も関係なく蝕み、やがて本体そのものと朽ちていく。私でさえ、見たのは初めてだ。


「ゲホッガホッ」

「おとん!」

「大丈夫や‥‥心なしかすんごい体が元気に感じられるで」

「え!?」

「それでも後数分で死んじゃうけどね」

「ははっ、せやなぁ‥‥すまんな、アンタら。最後まで勇者の幻影を追い続けてしもうた」

「おとん‥‥」


 魔王が泣きそうになる。


「あー‥‥イリスとロベリアやっけ?早く帰り。俺が死ぬと旧魔王城も崩壊するで」

「そう、じゃあ帰るとするか」

「そうですね」

「じゃ、またね」


 イリスとロベリアは踵を返して旧魔王城に向かってった。


「良いんですか?戻って‥‥」

「いいよいいよ、これからは‥‥‥親子の時間だもん」



「ゲホッ」


 アヴニールの口から大量の血が噴き出した。


「おとん!」

「ええって、気にすんな。‥‥知っとるか?俺は勇者を七人中、六人殺したんやで」

「えぇ!?」

「すごいやろ?でも、あと一人に、負けてもうた。完敗してたんや」

「おとん‥‥‥」

「その勇者の事ばっか思ってて、リュミのこと全く見れんかった。ホントにみっともないなぁ」


 こんなこと話しても許されるわけやないのに。


「リュミ…これだけは覚えとき。自分を倒す勇者は、超おもろい奴や!」


 いつか、リュミも出会う出会うんやろなぁ。

 静かに涙をこぼすリュミエールを見る。ダメだ、眠くなってきた。


「あぁ、いつか……いつか、種族の隔たりが消えた、平和な世界になったあかつきには、永遠の友情を誓おうや。"孤独の勇者"」



「姉さん、道が崩壊してきました。早く帰りましょう」

「うーん…」

「何して……って、何ですかその古い本は」

「いや…何かさっき、道に落ちてるの拾ってさ」

「えぇ……」


 何てもん拾ってんだこの姉は…と思いつつもロベリアも気になるのか道が崩壊していく中、本を見る。


「……これ読めます?何て書いてあるんですか?」

「知らん」

「えぇ……」


 ウソだ。本当は読める。……私には分かる。この文字は聖文字だ。


 にゃ~ん


 崩れていく道の中、何故か猫の鳴き声が聞こえた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ