頭脳明晰なお姫様
「か、科学?それで何が出来んねん」
魔王が意味が分からないというふうに聞いてくる。
そりゃそうだ。戦ってる最中に今から科学の実験しまーすって言われてもな。
「まあまあまあまあ‥‥ここに白い粉があります」
「それどっから出したん‥‥」
「薬物ですか?」
「まあまあまあまあ」
服の中から取り出した謎の白い粉を見てロベリア達は引いている。
「ではー、魔王ちゃん。もう一度酸の魔術を。あ、水球でね」
「え、でも‥‥」
「早く早く、いつ君の父親が攻撃してくるかわかんないよ」
魔王を急かす。嫌々ながらも作ってくれた酸の水球にサッとイリスは先ほどの粉を入れた。
「アヴニールに向かって撃ってみて」
「いや、でも‥‥あーもう、魔王の扱いが乱暴や!」
どうにでもなれ!とロベリアが酸水球を放った。
ジュウウウウウウ‥‥先ほどと同様に鉄格子やコンクリートを溶かした。
「‥‥!」
「どういう事や‥‥めっちゃ溶けてんで‥‥!」
「おー、大成功」
実はというとさっき私が入れた粉は塩酸濃度を上げたものを粉じょうにしたものである。
昔、錬金術師からの依頼で魔術無しで楽に金属を溶かす物を作ってほしいと無茶を言われたときに作った試作品だ。
まあ、塩酸が強すぎてあたりの金属をほとんど溶かすという失敗で終わったけどな。
「ア、アンタ、何入れたんや‥‥」
「ん?んー‥‥まあ、軽く言うと酸水球を強くする粉を入れたんだよ」
「「ほ―――‥‥」」
魔術がダメなら錬金術!どちらかでも無理なら魔術と錬金術の両方とも入れればいい。そんな事をどこかの本で読んで気がするんだよね。
今となればめっちゃ良いこと書いてた気がするな。
「ま、こんな粉入れたところで、先代魔王様には効かなかったんだけどね」
キイイイイィィィイン
イリスが結界を展開すると同時にアヴニールの新たな攻撃がぶつかった。
あの酸水球に当たってもなお、立ち上がるとは‥‥どれほどまでに頑丈なんだ。自分がいる場所には酸の水たまりだっていうのに。
「‥‥風と火ですね」
「『混合魔術』かな?」
『混合魔術』‥‥いくつかの魔術を組み合わせたもの、このような魔術を使うには魔力の消費量が半端ないとか何とか。
「なんていう魔術だろうね~、初めて見た!」
「混合魔術なんて使える人間いなさそうですしね。記録がないんでしょう」
「何なんやこいつら、何でこんなに落ち着いていられんのや‥‥‥」
冷静に分析するイリス達を見て、魔王は若干の恐怖を覚える。
「さすが元魔王だね!ほら、まだまだ来るよ!」
アヴニールが右手をかざした。
地響きが鳴る。突然、赤黒い手が地中から出てきた。
「うわぁ、グロ‥‥」
「これR18Gだろ」
魔王とロベリアがそれぞれの感想を述べる。
赤黒い手は多少きょろきょろした後、イリス達めがけて飛んできた。
「‥‥‥ねぇ君たち、結界ばっかり私に守られてばっかりなのもつまらなくない?」
「「え」」
『灰炎』
赤黒い手は灰と化して消えた。
「君たちに、してほしい事があるんだけどぉ‥‥」
■
「‥‥それって、姉さん一人で大丈夫なんですか!?」
「そうやで、いくら何でも一人でおとんと戦うなんて‥‥」
「だいじょぶだいじょぶ!ほら、行った行った!」
心配そうにもある方向に飛んで向かう二人を見送る。
『堕雷』
アヴニールに向かっていろんな方向から雷が堕ちる。それをアヴニールは結界で防ぐ。それでも構わず雷を堕とす。
「頑丈なのは体だけでいいのになぁ‥‥」
「‥‥‥」
相変わらず何も喋んないな~、でも大人しい方なのか。昔、魔力暴走になると自我が保てず、そこかしこを暴れまわると本に書いてあった。
けれど、アヴニールは静かに立っているだけなのだ。
「静かに壊れてる、なんて‥‥こんなにも恐ろしいことはないよね!」
イリスの声は、雷の音によって消されてしまう。
「歴史なんて‥‥綺麗ごとだね。だってこんなにも絶望している魔王なんて見たことないんだもん」




