魔族の死
「ひっ、ハ、ハハッハ‥‥」
え、ビックリした。急に笑いだしたんだけど‥‥壊れた?
「神器?そんな物持ってるやつと戦うと‥‥?冗談じゃない。早く、早く逃げなければ!!」
ボソボソと独り言を呟き、魔族は飛んだ。そのまま逃げようとする。
「ブフォオッッ」
「だから逃げんなって」
神器を体に叩きつけられた。骨と内臓がつぶれる音がする。
そのとき魔族は感じた。こいつは、いや、こいつらは普通の人間と違う!!
「き‥‥さまら、本当に人間か?お前らの戦い方はまるで―――」
「そーいや、燃やした家の住民ってどこにやったの?」
イリスが魔族の上に座る。そこがちょうど傷つけられた場所だったらしく、魔族は絶叫する。
「教えてよ~。君を殺してから助けに行かなくちゃいけないからさ」
「ハハッ‥‥、そうか殺されるのか。傷も癒えてきたところだ、お詫びに教えてやろう。あの家の中にいた奴らなんてとっくに死んでるさ。私の研究によってな」
魔族は逃げようかと考える。この小娘一人など軽い。このまま飛び、空中で落としてやろうかと。
「そっか。じゃあ後は君を殺すだけだ」
神器を魔族の上に落とした。
「‥‥いない‥‥!」
振り落としたはずの場所には魔族がどこにもいなかった。
「ハハハ、はー‥‥、こんなにも人間が愚かな物とは‥‥やはり神は私を愛していたようだ!!やっと効果が切れたか‥‥!言っただろう!私は水と一体化していると!!要するに私は水になれるのだー!!」
ハーッハッハッハー!!と、ザ・悪役みたいな笑い声をする魔族にイリス達はドン引きする。
そうなのである。実はあの毒にはもう一つ効果があった。それは特定の魔術を無効にすることだ。あいつは自分で水の魔術専門と言っているもんだったからな。毒の成分にもう一つ、術式を混ぜといたのである。
「水は切れない!つまり物理攻撃のお前たちには何の脅威でもないのだ!残念だったなぁー!!お詫びに長く苦しく溺死させてや―——」
ジュッッ‥‥音と共に魔族の体が蒸発した。見るとイリスの手には杖が握られている。
「知ってる?火は水に弱いわけじゃないんだよ?」
「なっ‥貴様ァ!!私をだましたのか!!魔術を使えないふりをしおって!!」
「嫌だなぁ?別に使えないふりはしてないよ?ただ使ってなかっただけ~」
イリスは魔族を煽った。キレた魔族は感情任せに魔術を使うが、どれもイリス達がいる場所とは違うところに当たる。
「ここまで来ると可哀そうだ。早く殺してやれ」
「オッケーイ」
イリスは杖を構える。
「は?は?殺す?わたしを?私は神に愛されてるのだぞ!!」
神‥‥かぁ。そんな言葉をこいつの口から何度聞いたことか‥‥。
「君は神にすがっているんだね。神を信じているんだね。可哀想に‥‥」
「貴様‥‥神を侮辱するなど無礼千万。今すぐに殺———」
「だから、勝てないんだよ」
ジュワッ‥‥魔族は蒸気となり消えた。
「この国とは違う考えだ‥‥」
悲しそうな顔のまま、討伐したことを伝えに城へと戻っていった。
「ヴワッ‥‥はぁっ‥‥はぁっ‥‥危なかった。神の加護があってよかった‥‥。やはり私は神に愛されている。このまま神を侮辱した小娘を殺しに‥‥」
後ろからガサッと音がした。振り返るとそこには一人の少年がいた。その手には、手のひらサイズの箱が一つ握られている。
「何だクソガキ。ブチ殺すぞ」
「へぇー、それはいいね。俺はいつも殺す側だからさ。こんな風に、ね?」
水化する余裕も、声を出す余裕もなかった。あの箱から大量の剣が一つにまとまって魔族の全身を貫いた。
『神器・死の箱』
「帰るぞカルミア。そろそろあれが始まるからな」
「あれ‥‥ですか?」
「お前この国に住んでんなら分かるだろ‥‥。勧誘だよ。宗教勧誘。神を布教しに世界から信者どもが集まるお祭りだ」




