神器の名は
「ハハハハハ!受けるがいい!!私以外使えぬ魔術を!!」
アノイトスは呪文を唱える。
『オクシニ・ヴロヒ』
突如雨が降ってきた。
慌てて屋根の下に逃げ込む。
「じ、地面が‥‥!」
雨が付いた壁やコンクリートの地面などが溶け始めたのだ。
「なるほど‥‥酸か~」
「えぇっ、なんでそんなもの急に降ってきたの!?」
「まさか、この国も大気汚染と化してたのか!?」
「違うわ!!まさか私の詠唱を聞いていなかったというのか!?なめ腐れおって‥‥!」
アノイトスはキレた。
「人間ごときが‥‥私のことを無視しおって‥‥!断じて許さん!!私は神に好かれているのだ!ふざけるなよ‥‥!!ゴミ種族が!!!」
『マザ・オクセオス』
アノイトスの手には大きな水のかたまりらしきものがあった。その後ろにも何個か同じ大きさのかたまりがる。
「悔やむがいい。この私に喧嘩を売ったことを!!」
かたまりが一斉に、こちらに飛んできた。
物質の溶ける音が聞こえてくる。
「ふん‥‥。死んだか‥‥、人間ごときに魔力を使いすぎた。私も大人げないな」
今回は諦めようと帰ろうとしたときのことだ。
アノイトスの腕が吹っ飛んだ。
「‥‥?」
何が起きたかさっぱり分からなかった。いや別に問題ない。魔物とは痛覚があまりないのだ。だから腕が一本失ったところで‥‥。
「——ガッッ!」
全身にもの凄い激痛が襲った。痛すぎて立っていられない。地面に転がって悶える。
「何をしたァ‥‥!人間ンンンンン!!」
「‥‥段取りって本当に大事だね」
「本当本当。いやー、よかったよ。イリスに魔除けの魔術を張ってもらっといて」
「魔除け、だとぉ?」
魔族は必死に正気を保っているつもりだろうが、その顔は今にも狂いそうだな。
「それに苦しく死にたくないならあんまり動かない方がいいよ。心拍数によって毒の強さが変わるから」
「毒‥‥?」
「あ、やば、言っちゃった」
テヘッと少しでも許してもらえるようにかわいいポーズをする。
わぁお、普通に睨まれた。こりゃ後でボコされるな。
「ふふふ、ふふ。毒か‥‥じゃあ平気じゃないか」
「ぬ?」
『アニディトネロ』
「これでまた動ける‥‥!」
魔族は立ち上がった。
ドガンッ、衝撃を受けまた倒れこんだ。
「‥‥ケハッ‥‥一体何が‥‥?」
これは毒じゃない。だけどすごく痛い。何が‥‥一体何が起きたんだ!
「こらっ、勝手に起き上がったらダメでしょ!!」
「お前‥‥なんだそのでっかいハンマーは‥‥」
グラジオスがドン引きするそれは、イリスが持ってる神器だった。
「これ?分かんない」
「ねぇこれ神器じゃーん。世界に七個しかないっていうやつ~。名前は?」
「え~?なんだっけ~?」
「は‥‥?え‥‥?」
あまりの軽さに魔族は驚愕する。そりゃそうだろう。神器といえば魔界でも幻と言われる程のもの。持ってるだけで世界のトップに入れると言わている。
まあ、この軽さについては二人特有のものだと思われるが‥‥。現にグラジオラスは隣で驚愕しているし。
「あ!思い出した!これの名前はね!」
『祝福の鎚』
世界で一つの代物。




