魔族の登場
魔族——‥‥それは魔王配下の中で最も位の高い、魔術も使え、人の言葉を話す魔物を示す。特に人型の魔族が多いとかなんとか。
一匹だけで恐ろしい程の脅威‥‥、下手すれば国一つが滅びる可能性もある。そんなものが束になって襲ってきたら、人々は諦めるしかない‥‥。ある一つの国を除いて。
「なんかちょっとワクワクしてきたなぁ~」
「ふふふ、魔族相手に戦えるのか。楽しみだな」
「これは久しぶりに冒険者ギルドも立ち上がる必要がありますね」
その顔には絶望でも恐怖でもない、笑顔が浮かんでいた。
皆、やる気満々だ!私だって胸が弾む。
「人間でも魔物でも魔族でも‥‥喧嘩売ってきたなら買う。それが『無敗の国』ハスライムの美学だからね!」
『無敗の国ハスライム』‥‥教育を受けている者であれば、耳にしないことはまずないだろう。
ハスライム王国を全世界へ広めた理由‥‥それは戦である。基本的にこちらから戦争を仕掛けることは無いのだが、戦うとなれば一転、絶対に勝つのである。SS級の魔物の群れにも勝ったという逸話があるくらいなのだ。
「ま、戦は段取りが大事だからな!これからどうやって相手を煽るか‥‥どう戦うか考えなくちゃな!」
「ゴ~!」
数週間後——‥‥
山から街を見下ろす私たち。犯人は魔族かもしれないと父上に話したところ、私たち四人で倒して来いとのことだった。ていうかヘデラは戦えないし。
「父上も無茶言わないでほしいよね。実質三人なんて死ぬかもしんないし」
「ま、それだけで倒せるなら全然いいでしょ。てか何これ。ヘデラちゃん寝てんの?」
「まあまあまあまあ。それに、ほら。俺らのカンは当たってたらしい。魔力が感じるぞ。人間以外の魔力が」
「‥‥!ホントだー!何日間も見張ってたかいがあったね!」
「奴も上手くいきすぎて自己過信したのでしょう。だからこんなにもスキが出たんだ」
私たちが見てる方向にはその魔力の持ち主と思われる人がいた。
「どれだけ姿を隠しても、魔力が漏れてちゃあ、バレるんだよなぁ。人の姿をしてるし、よく見ればツノとか生えてるし」
「うわー‥‥杖出したよ。確定じゃん」
「え?やばくね?今行かなきゃダメじゃね?」
家を燃やそうとし始めた魔族に私たちは慌てる。
「ええいっ!腹をくくれぃ!お前ら突撃じゃぁっ」
「「おおおおお!!」」
こうしてヘデラ以外のトリオは魔族に突進していった。
「ふ‥‥。本当に愚かな人間達だな」
魔族は思っていた。こんなにも上手く物事が進むのかと。
上手くいきすぎて逆に仕組まれてるんじゃないかと思うが、そんなことはありえない。きっと私が神に好かれすぎているのだ。
「ハハハ。この家は終わりだな。それでも最後は私に殺されるのを光栄に思うが―――」
「「「うおらああああああ!!」」」
「ブベラッッッ!?!?!?」
勢いよく魔族と共に飛んで行ったのはイリス達だった。
声を掛けるより突っ込んだ方が早いと判断したのである。
「———な、なんなんだ貴様らはっ!」
「魔族め!捕まえたぞ!このまま殺してやる!!」
「覚悟しろ~」
「このまま殺される訳ないっだろっ!」
ピチャン‥‥
魔族が水になって消えた。
三人はいきなり消えた魔族に困惑する。
「フハハハハ。私は『水化のアノイトス』。この国を滅ぼす魔族の名前さ」




