この世界、なんでもありだね
「ねえ、何してくれてんの?」
ロベリアは婦人の耳に口を寄せ言う。
「え、え?へ?」
突然のことに一切驚きを隠せない婦人。
ロベリアの顔はどことなく不機嫌そうだった。
「だからさあ、何『あたしの』お姉さまに勝手に手ぇ出してるのって話。理解しろよ」
完全にキレてるロベリアに婦人がガタガタ震えだす。
「・・・あなた、ちょっと来てちょうだい」
婦人の手を思いきり引っ張る。
想像以上に力が強く、女の子とは思えない強さだ。連れていかれたのは裏庭で、人もいないところだった。
「どういうつもりよ」
もう一度ロベリアは問い詰める。
「すみませんすみませんすいま――」
ドンッ
後ろの壁が崩れた。
ロベリアの手には杖が握られている。魔術を使ったのだ。
「謝罪はいいの。あなた下級貴族でしょう?命令される以外はありえないわ」
「誰に命令されたか教えなさい」
杖を向ける。本当にこのまま殺しても構わない様子だ。
「あ、あ・・・・ソ、ソフィア様です・・・」
「ソフィア?あぁ、あの、権力だけの貴族」
ロベリアはバカにするように言う。
その煽りを受けた婦人はキレた。
「いくら姫様でもソフィア様をバカにするような言葉は許せない!!」
ロベリアが杖を持ってるにも関わらず、婦人は手を伸ばしてきた。殴る気だ。
バンッ
キレイな音がした。
だけどうずくまっていたのは婦人の方だった。
殴ったのだ。ロベリアが。
現に婦人は頬をおさえている。
「るっせえよ、三下。大体お前が姉さんに手ぇ出してんのが悪いんだろ」
「え?」
急に口調が変わったロベリアに疑問を抱いているようだ。
「分かったら失せろ。二度と俺にその面見せんな」
「ヒッ・・・」
走って逃げてしまった。そりゃ無理もない。
誰から見ても、か弱い女性が不良に絡まれてるようにしか見えなかった。
「さすがにやりすぎなのでは?ロベリア王子」
メイドのカルミアが音もなくそばに立ってた。ロベリアは思わずのけぞる。
「しょうがないだろ・・・。完全に向こうが悪いし」
ロベリアは手に持ってた杖をしまった。
「あーあ、姉さんが魔術使えなくなるように杖とかもろもろ全部奪っとく作戦だったのに、何で失敗するかね」
そう。ここで言うが、ロベリアは男だ。本来は女要素が一つもない。
そしてシスコンだ。どうしようもない程のシスコンだ。・・・もう一度言う、ロベリアはシスコンだ。
「だからってあの魔術師を魔の森に放置するのはいかがなものかと・・・」
知っていると思うが、あの魔術師というのは・・・名前忘れた、何だっけ・・・・ああ、オダマキだ。
そのオダマキは、先日イリスと決闘し、その際煽りに煽って結局負けたバカである。
「別にいいだろ。生きてたりゃ帰ってくるし」
軽い。人の生死なんてどうでもいいみたいだ。
「それよりもさ、何でみんな俺を女だと思ってんの?」
確かに。世間には第一王子として発表されてるはずだ。
「みんな本当に知らないか、知ったうえであのような行動をしているのでは?」
あのような行動というのは、以前、男たちとお茶会をした後、婚約を申しこんできたことだ。
「大体、女装してるロベリア様が悪いのですよ」
「仕方ないだろ!俺だってしたくてしてるわけじゃないんだよ!」
そうなのである。実はこの国は、厄災から身を守るため、第一王子だけ女装するのである。
「何で俺だけなんだよ・・・・ていうか姉さん俺の事、女だと思ってんのありえないって」
普通にショックを受けている。
いまさらだと思うのだが、それでも悲しいらしい。ドントマインド☆(ドンマイ)。
「そういえば!着替え終わったな~。早く見に行こう!」
ロベリアは走って行ってしまう。
やれやれと、そのあとをカルミアが追った。




