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さよならと告白

僕は、イチゴとの暮らしをしながら健斗さんの病院に足を運んだ。


健斗さんは、一度も目を覚ます事はなかった。


春が終わり、6月1日に健斗さんはその生涯を終えた。


「助けられなくて、すみませんでした。」


上條先生は、お医者さんなのに泣きながら僕に頭を下げた。


「別に、先生が悪いわけじゃないですよ」


僕は、ようやく健斗さんをイチゴに会わせてあげられた。


イチゴは、戸惑いながらも健斗さんの近くに居てくれた。


葬儀は、僕が喪主を勤めた。


健斗さんは、その性格のよさから100人以上がやってきた。


健斗さんは、あまり泣かない人で正義感が強かった。


そんな人の葬式が、どしゃ降りなんてなんかやるせなかった。


葬儀が、無事に終わった。


僕は、何度も棺に抱きついた。


だけど、健斗さんは生き返らなかったし、冷たいままだった。


お骨をもって帰ってくると、イチゴは狂ったように鳴いていた。


僕も涙がとめられなくて、イチゴを抱き締めていた。


僕は、会社に辞表を出した。


残りは、有給を消費する事にした。


遺言書を弁護士さんに見せた。


共同の貯金は、もうすぐ1000万になる予定だった。


健斗さんのものは、全て僕のものになった。


健斗さんが、亡くなって一週間が経った。


僕は、仕事場に健斗さんの荷物を取りにきていた。


その帰りに、先輩が声をかけてきた。


「辞めるのか?浜井」


野上先輩は、煙草を吸いながら僕を見つめていた。


「何かもうやる気がなくて、すみません」


「謝んなよ」


野上先輩の結婚式のスピーチは、出来なかった。


「ちょっと、胸借りていいですか?」


「いいぞ」


僕は、狂ったように野上先輩の胸の中で泣いたんだ。


「無理すんなよ。いつでも、連絡しろよ」


「はい、お世話になりました。」


仕事場から僕は、帰った。


「人殺すのだけは、やめておきなよ」


帰宅した僕に声をかけた。


「何で、先生がいるんですか?」


「これを、返すのを忘れていまして、すみません」


紙袋を渡された。


「これは、返すものじゃないですよね?」


「バレちゃいましたか」


僕は、紙袋から花束を取り出した。


「ふざけてますか」


僕は、怒って紙袋を返した。


「好きだと言ったら殴られますか?」


上條先生は、僕を抱き締めた。


「ふざけないで」


「離さない」


「離せよ、気持ち悪いんだよ」


「嫌だ」


「どうして…」


「言ったよね。俺は、浜井さんの気持ちが痛い程わかるって。殺そうと思ってない?犯人の事。未成年だったよね」


上條先生は、そう言った。


「何なんだよ、あんた。最低だろ?僕達の愛の巣にズカズカ現れて、気持ち悪い告白までしてきて。何なんだよ」


「好きになったんだから、仕方ないだろ?初めて、自分をさらけ出したいって思ったんだからとめられなかったんだよ。命を扱ってる俺には、恋に落ちるなんて一瞬で、いつ死ぬかわからないから気持ちを伝えたかったんだよ。迷惑かけるつもりはなかった。五木結斗、調べてくれ。それと、このお花は冴草さんに…。救えなかったお詫びです。私は、もう二度とあんな思いをしたくなかった。なのに、助けられなかった。だから、お供えして下さい。」


上條先生は、そう言って帰って行った。


五木結斗…


僕は、家に入った。


「ただいま、イチゴ」


【ニャー】


僕は、イチゴをゲージから出した。


意味わかんないよ


僕は、花瓶に花をいれた。


「健斗さん、変な人が付いてきたよ。守ってよ。健斗さん」


僕は、お花を供えながら話しかけた。


スマホを取り出して、【五木結斗】を検索した。


平仮名で、検索したけどすんなりと出てきた。


当時、14歳の同級生の少年に暴行を受けて、搬送先の病院で死亡した。


はっ!!!


健斗さんが、運ばれた日。


痛い程よくわかると言った気持ちがわかった。


同じ痛みを感じていたのだ。


だから、先生は、ほとんど毎日のように、健斗さんの病室にいてくれたんだ。



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