これは行き違いなんです。。
2人が今いる所は地下、アンダーグラウンドだ。異能力者とその関係者が暮らしている。訓練校も研究所も司令塔もここにあるし、住居や買い物出来る店に、ハウス栽培している所もある。
ここで生活するようになって2週間。
「森原君、無茶しないようにな。 ちゃんと帰って来いよ。」
「うん、待っててね。」
現地に行くのは森原1人、布池は留守だ。
森原はこれから、護衛の彼らと見回りと称して共に行く。
彼らからすれば正直迷惑と思われているだろう。実際に会わせて怖い思いでもすれば、その内諦めるとも考えていると思う。上の指示だから渋々といったとこだ。
布池は不安に思いながらも、消えて行った森原を見送った。井ノ原と言う子が瞬間移動の能力持ちだとか。
布池は指令室で社長らと待つ。そこでは職員たちが情報を統括している。
大きなパネルがいくつもあり、エリア地図が映し出されている。アンフォーンが出現すると表示されるようだ。
布池が物珍しさにキョロキョロしていると、社長が傍に来た。
「一緒に行かなくて良かったのかな?」
「え?あぁ・・。 俺、そんな度胸ないから。 守るのも2人より楽だろ?それに、 ・・俺がついて行っても腰抜かして終わると思うしな。」
正直に言う。
「それで彼だけで行かせたと?」
「・・・。俺だって始めは止めたんだよ。今だって心配だし。。でも・・・、行ってみないと分からないってさ。 俺が行っても役に立たないし、それに森原君の案だしな、自分で出来るか確かめたいんだよ。」
ちょっとだけ皮肉な言葉に感じたが、布池はそう返した。
「・・・。 森原君は胆があるね。 交渉力もだが。」
「うん。 俺が情けないくらいには社会人に思える。」
「おや、布池君にも良い所はあるだろう?」
「ん? まぁ、人並みにはあるんじゃないかな。」
社長は布池の事を見下してはいなかった。ただその人柄は分かりやすく、心に素直な所は擦れていなくて、だからこそ噓がない事に会話が楽と思う。
そして眩しい。
だからなのか、ポロっと口から本音が出る。
「私からすると、君たち2人は羨ましいくも妬ましい。」
「え?」
「 戦う事のない子供時代を過ごし、この様な所に来ても私たちの方を選んだ。 偏見もなく。 目的があるとは言え、逃げずに立ち向かおうとする。こちらの一般人ならない事だ。 ・・・長い年月がここまで差を作ってしまった。」
「・・・・・・。」
布池は、社長の印象が最初と変わっているのに気付いた。少しだが冷たさや厳しさがない。
「んん~。それは、上の情報操作だろ?国が国民をコントロールする為にさ。仕方ない部分もあるんだろうし。 でも批判ばっかじゃ嫌になるよな。あれ自分の事だったらグレるって。 今からでも少しずつ変えていかないと、この戦い終わった後どうすんのって思うよな。大変だろ。いきなり180度変えられないんだからさ。」
そう言うと、社長は以外そうな様子で聞く。
「 この戦いが、いつか終わると思うかね?」
「ん? その為に戦ってるんだろ? 研究だってしてるじゃないか。無駄になんかならないよ。」
と事もなげに言う。
「終わりが見えなくても、進んでる事は間違いないんだからさ。 自信持ってよ社長さん。」
彼だからなのか、その言葉はスッと社長の胸に入ってきた。
何も知らないはずの異世界から来たと言う民間人なのに。おかしなことだ。
「フッ。 自信がないと言った覚えはないがね。」
「おぉ・・。 それはすみません。。」
社長は時々指示を出したり、報告を聞いて職員と話している。そして布池とも言葉を交わす。アンフォーンについてとか、国や世界の現状の事もちらっと出る。出たとして別に解決する訳ではないが。
「元をなんとかするしかないんだろうけどなぁ。 どっから来てるのかも分からないんじゃお手上げだよな。」
例え分かったとしても、こちらから行く事など出来るのか。という問題もある。
倒せば消える相手だ。情報は少ない。人型は言葉を話すようだが会話は成立しないそう。今後どう出て来るのかは不明だし、現状維持をしているだけなのだ。
「 森原君の案が上手くいけば、もう少し動きがあるかもなぁ。。」
と布池が独り言ちる。
「手紙の事かね? 報告ではその為の物を試作しているようだね。」
社長は正直成功する可能性を低く見ている。
2人が噓を言っているとはもう思っていないが、それでも別次元とコンタクトを取れるかと言うと、その確率はとても低いと言わざるを得ない。
彼らのように来た話は聞いた事がない。隠しているなら分からないが。
それでも彼らはアンフォーンの事を知らない所から来たのだ。繋がったとしてどう対応すると言うのか。たまたま繋がってしまって来た被害者だ。
今度いつどこで繋がり、そこに再びいる確率はどれ程だろうか。
望みの薄さを明白にしている。。
それでも許可を出したのは、彼らを納得させる為でもあり、こちらに関わって来る行動をとると宣言しているからでもある。
別の世界だからと分けて考えているのだろうが、それでも上にも下にも見ず、異物としても捉えない彼らは、貴重に思う。
ここに馴染めばそれも変わるのかもしれないが、彼らの存在が出来れば良い影響になればと、社長の中で期待が生まれている。だからまだ成長中の子達を傍につけた。
そして僅かばかり、諦めない心とその行動を、見ていたいとも思った。
「完成には後1月はかかるかもって話です。 一発勝負だと思ってるから後は運任せなとこはあるって。」
「ん? 手紙は一通だけしか送らないのかね?」
「えぇ今のところはかな。 出来るだけ確実に目当ての人に届けたいから、向こうに着いてからの機能を付けるには、運ぶ物は小さくて軽い物に越したことはないって。」
「まぁそうだね。」
人が全くいない所では意味がないし、人がいたとして誰が拾うかも分からない。
そしてそれを拾った者が国に届けるとも限らないのだ。
「森原君に、助けてくれそうな人に心当たりがあるんだそうです。 おんぶに抱っこだけどお任せって感じだから、俺は安藤さんの雑用でもしようかと。」
「そうかね。まぁ好きにしなさい。」
この時社長はそんな重要には思っていなかった。
変わったのは見回りから彼らが戻って来て、報告を受けた時。
「森原君っ。大丈夫だったかっ?怪我は?」
「大丈夫ですよ。守ってもらってたし。」
無事に帰って来て布池はほっとする。
「戻りました。」
「ご苦労。何か変わった事や問題は?」
「いえ、近くに一般人が乗った車がありましたが、問題なく対応しました。」
「そうか。」
すると峰岸君と言う子が社長に言う。
「ねぇねぇ社長ー。 異能力者ならそう言っといてよぉー。」
「ん?何の事だね?」
「だからぁ、あの人っ、 異能力者でしょー?」
そこで森原に視線が集まる。
。。。
「え? 森原君、言ってなかったの?」
「え? 知ってると思ってたよ?」
お互い首をかしげる。
社長はこめかみに指を当てる。
「いや、知らないね。。 本当なのかい?」
「はい、そうですけど。」
当たり前に言う。
「そういう事は言ってほしかったね。」
溜息混じりに言う。
「てっきり調査済みかと思ってました。」
「知ってる前提で話してた。」
悪気はない。 行き違いだ。
「・・布池君は違うんだね?」
念のため。
「あぁ、俺はごく普通の平凡な大学生だ。」
と返すと森原が。
「それを言ったら俺も普通の大学生ですけどね。」
と言ったので。
「俺は正真正銘の一般国民だ。」
と言うと。
「安心して下さい。俺も半分は一般国民です。」
「半分はって何? しかも何を安心するんだよ?安心して下さいって言ってる
時点でおかしいからな。」
「そうですか? じゃあ、大丈夫です、俺も正真正銘の日本国民ですから。」
布池は突っ込もうと息を吸ったが、 真実だった。
「・・・、確かに。。」
一体何のやり取りだったのか。。
そこで社長が小さく咳払い。
「森原君、すまないが明日、君の検査をさせてもらえないかな?」
かな?と聞いているが有無を言わせないぞと言っている顔だ。
「えぇーーー。」
森原はなんか嫌そうだ。
「布池君もついでに受けておこうか。」
「えぇーーー?」
とばっちり、いや連帯責任?
「(必要? ついでって完全におまけだよね? 俺受けなくていいんじゃない?)」
「布池さ~ん。」
「・・いや、どうしろって言うの?・・」
これでちょっと格上げされるのか?
ちょっと天然で真面目な森原君と、平凡代表を自称する素直が取り柄の布池君。
2人のここでの生活はまだ終わらない。。




