2人の決意。。
その日の夜も森原君は俺の所に来た。
そして俺はまだ、森原君に対する認識が甘かった事を知った。
「あのね、少し説明が足りなかったなって思って・・。それに、早めに言っておいた方がいいかもって思ったんです。」
「おう・・。 何?」
なんか言いずらそうにしているが、聞かないとわからない。
森原君は深く息をして、意を決して俺を見ながら言った。
「 俺、 能力者なんです。」
と。
「・・・・・・。」
・・・・・・、はい?
「・・・どういう 、 反応したらいいんだ?」
「普通で。」
「・・・・・・。」
あーそう。 普通に。
普通ね。
普通・・・。
「普通が分からないんだけどっ? 初めてだしさっ?」
「あぁうん。 そんな感じでいいと思います。」
ガクッ。
テーブルに頭を伏せた。
「・・・。あれ? 俺遊ばれてるの? 冗談?」
真面目でしっかりしてるイメージだったけど、今のでかなり修正されたと思う。
「内容的な事を言うとですね、超能力は念力タイプで・・」
「それ続けるのかっ?」
「え?」
冗談ではなかったようです・・。
気を取り直して。
話を聞くところ、2つ力があって、1つは念力と言う物を動かす力だそう。動けっ、とか止まれっ、と念じるんだが、人や生き物を浮かせるのは難しいらしい。
実際ちょこっと見せてもらったが、ビクッと肩が跳ねるくらいは驚いた。
マジシャンかポルターガイスト現象だ。
2つ目は霊力で、思念とか存在感が伝わってくるらしい。
例を挙げると、愛着のある物に思いが宿っているのが分かるとか。
うん、よく分からない。。
俺と会った時も、不気味な空気を感じて行ったんだとか。
金属棒で牽制出来ていたのも超能力を使っていたお陰。
助けられた身としては感謝しかないが、現実にもそういう人がいるんだなぁと素直に思った。
だってその方が納得できる。
因みに幽霊は見れないらしい。日本の文化的に霊感云々はまだ分かるような気がする。
それからも少し話し合ってお互い就寝した。
もちろん別々でっ。
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後日、改めてここの社長さんとの面談を迎えた。
「さて、話を聞こうか。大分落ち着いたようだしね。 知りたい事は分かってくれたかな?」
「はい、お陰様で。」
数日ぶりだがやはり社長って感じで余裕だ。
分かっていたが拓実さんから報告は上がっていたんだろう。監視として。
「そうか、気が済んで何より。 では何から話そうかね?」
「俺たちをどうするか、そっちの考えをまず聞かせてくれ。」
始めからこっちの要望は言わない。
「ふむ。 君たちの気持ちを聞いてから決定しようかと思っていたのだがね。 そうだね、・・・、私が良いと思うのは、戸籍を作り直し、一般国民として生活してもらう事だね。大学は受けなおしてもらう必要があるが、住む場所と働き口くらいは用立ててもいいと考えている。」
予想通り。 まぁ当然か。
「理由としてはそれが一番安全で、当然の処置だと考えるからだね。奇妙な一件ではあったが、特に怪しむ素振りも見えないし、これ以上保護しても何もないなら元の一般人に戻るのが筋だ。 私としては良いと思うのだが、どうかな?」
それ以外はないだろうとでも言うかのようだ。手厚くはないが、そこまで子ども扱いもしない。最低限用意いてあげるから後は好きにしろと言う判断だ。
俺たちは目を合わせてコンタクトする。
「吾妻社長さん、その提案を、俺たちは飲めません。」
空気が重くなったような気がした。それでも続ける。
「確かに俺たちは一般人です。安全を取るならその方が良い考えです。 ですが、それだと俺たちは家に帰れないのです。」
「あぁ。だが君たちの家はなかった、そうだろう? 心中は察するが、ない所には戻れないよ?」
「いいえ、ある所に戻るんです。」
社長さんは眉を顰める。
「どういう事かな?」
「俺たちは地球と言う星の日本と言う国の民です。ですが・・。」
「ここの日本は知らない。こんな世界は知らない。俺たちの知る所じゃない。 アンフォーンなんて初めて知った。昔の地図はそっくりだったから、未来にでも来たのかと思ったけど、年号が一緒だった。ここは俺たちの知らない歴史を築いているんだよ。」
「俺たちの見解は、ここは同じであって異なる世界だという事です。別次元の地球。俺たちはそこからこちらへ来てしまったんでしょう、 アンフォーンによって。」
社長さんは少し驚いていたような反応だが、少しの笑みはそのままにベースは厳しめだ。後ろの江澄 姉弟は口を一文字にしてポーカーフェイス。
「 なるほど? それなら確かに理由はつくね。面白い。 それで、君たちはどうしたいのかな? 帰る算段はあるのかね?」
本気にしてくれたのかは分からないが、聞く気は持ってくれるようだ。
「 ご協力願えれば。 彼と約束したんです。一緒に帰ろうって。」
「俺はさ、本当に何にもない一般人で、平和に暮らしてた奴だからさ、こっちの人の事とか、想像でしか推し量れない。それでも正直スゴイなって思う。俺なんか即パニックで、トラウマになって、他力本願で、それで段々絶望して、心がポッキリ折れる。だけどここの人達はそれを50年以上やってることに、純粋に凄いと思う。 だから俺たちも諦めない。 足手まといで何も役に立てないかもしれないけど。 後悔したくない。」
自分なりに気持ちを伝える。
「ーー。つまり、自己満足の為かい?」
「違うっ。」
即座に否定する。
「やるだけやって駄目だったら?何の策もなく尽きてしまった後は? 諦めないだけでは自己満足だろう?」
意地悪な事を言う。 試しているとも言うかもしれないが。。
「確かに直ぐは無理です。何カ月かかるか、何年かかるかもしれません。 それでも俺には確信があります。 どれだけかかっても、きっと必ず戻れると言う確信です。」
「ほう? 結構な自信だね。」
「過信ではないと思っています。」
お互い見つめ合う。
何処からくるのかその根拠は?と俺も思うが口には出さない。
しばしその状態で見定めたのか、社長さんが口を開く。
「しかし、こちらにメリットがないように思うのだがね。
人材は貴重だ。君たちに割くだけの理由はないよ。」
なにせこっちは平凡な一般人ですからね。 いや森原君は平凡じゃないか。
「そこは申し訳ないと思います。 ですが最初のそちらの提案で、身分を作り、住むところを用意し、当面の手当てを出して下さるなら、こちらでお手伝いした方がまだ利益になると思いますよ? それに、毎回保護してお世話になるのも面倒かけますし。」
と発言したら、空気が停止した気がする。
うん、気のせいじゃないな。
「 ふむ。 死にたいのかな?」
・・・。笑ってない。。
若干呆れているようだが。
「そんな事はないです。」
「そうです、決して独自で動きたい訳ではありませんから。一緒に同行出来た方がいいに決まっています。」
いや、森原君よ。今のはそういう意味で言ったんじゃないと思うよ?同行するしない以前の事だから?
社長さんはそこを突っ込まない事にしたらしい。
「ーー。 つまりどうしても、どうあっても帰りたい、と言う事か。」
「はい。 そちらでやるので同行しなくてよい、と仰るならお任せしますが、自分たちの事なのに丸っきりは甘え過ぎだと考えたのです。 なら同行してでも何か掴めないかと。」
決意は固いのですよ社長さん。
「 その意気は買うがね・・。 算段に確信があると言っていたね、ならその話を聞こう。」
取りあえず内容を聞いてみてくれるらしい。
聞く耳があるだけでも有り難いと思っておきます。
俺たちは話し合って決めた内容を話した。
その結果。 納得はしたとは言わないが、やってみてもいいと許可が出た。
森原君の折れない意思が勝ったと言っておこう。
森原君の確信の根拠はいかにっ。




