005話 クラスメイトと担任
「迷宮踏破科1年2組担当になった礼場暁伽だ。まぁ、あまり担任らしいことはできんだろうが、困ったことがあれば相談に乗ってやる。気軽に頼れ。いいな?」
昨日の威圧感が凄まじかった先生が、俺たち2組のクラス担任になったようだ。
炯々とした眼光に周囲の生徒たちはみんなビビってしまっている。
先生、大丈夫ですよ。俺は優しい先生だって分かってますから。うんうん。
だから、俺にそんな鋭い視線を向けないでください。昨日一人で勝手に焦り、アイテム全ロスしたのはめっちゃ反省してるので、怖い目で見つめないでください。
「ふん、まぁいい。お前ら、自己紹介とかしたいか? 今後少しは交流していくことになるが、1クラスあたり50名はいるからな。人数が多くて面倒だ。よし、席が近くの5人で班を作れ。今日のところはその5人で自己紹介しとけ。ほら、始めろ」
キョウカ先生が顎をクイっと上げて指示すると、生徒たちはバタバタと動き始めた。
「えー、あたし達ど真ん中の列だから、班別れちゃうね。くぅ、せっかく隣なのにぃ~、残念!」
お、どうやら俺の左隣の席の女の子が、俺に向けて話しかけてくれたっぽい。
「確かにな。真ん中の一列だけお誕生日席みたいになるっぽいな」
「ふふっ、お誕生日席って。なんか可愛い言い方だねー。あっ、でも、確かに他の呼び方とか、あたし知らないかも!」
話しやすい元気な子だなぁ。
ちなみに、俺の席は前から三列目の廊下側から五列目、教室のほぼ中心である。
こういうのって、物語の主人公なら窓際の一番後ろの席とかその付近ってのがセオリーだろうに。ど真ん中とかどうなっているんだか。
あ、俺モブキャラだったわ。じゃあ仕方ないな。
「おい、柴倉。馬場とイチャついてないで、サッサと机を移動させろ」
「ご、ごめんなさい教官!」
先生から注意を受けてしまった。俺も軽く頭を下げて謝りながら、机を前側の班にくっつけた。隣の席の柴倉さんは後ろ側の班だ。
「よし。そうだな、お誕生日席のやつから時計回りに自己紹介を始めろ」
わざわざ俺を見てニヤつきながら言わんでも。結構お茶目なとこもあるんですね、キョウカ先生。
「じゃあ、まずは俺から。馬場野生だ。漢字は野生って書くんだが、できたらワイルドじゃなくて野生って呼んでくれたら嬉しいかな。うーん、名前以外に自己紹介って何言ったら良いんだろうな? クラスで唯一の男です、とか?」
「クスッ、実際そうですね」
「クラスどころか、冒険科唯一じゃないです?」
「だろうねー。普通は男の子って男性科行くのがほとんどだろうし」
「情報学部とか生産学部にはちょっとだけ男子が居るって聞くけど、攻略学部には居るって聞かないよねー」
よしよし、反応は結構良いな。
男性科か。父がダンジョンで亡くなったと知らなければ、モブ時代の俺は男性科に入っていたことだろう。
あれ? でも、ダンジョンって命の危機とかあったっけ?
うーん、ゲーム時代ではなかった気がする。この世界では攻略失敗したら死んじゃうようなヘルモードなのだろうか。
ちょっと怖いな。ちゃんと気をつけよう。
「では、私の番ですね。青梅紺花と申します。名前は紺色の花と書きまして、髪色と同じなんです。授かったジョブは〈槍使い〉ですね。どうぞ、仲良くしてくださいね」
おお、そうか、自己紹介はジョブを伝えるのがデフォなのか。くっ、せっかくユニークジョブなのに、もっとアピールすれば良かった。
青梅さんは育ちの良さそうな人で、細かい所作からは気品が漂っている。
俺だって元華族のはずなんだが、彼女に比べたら上品さとか皆無だなぁ。ザ・モブって感じで恥ずかしくなってきた。
「次は私ですね。下切鈴蘭です。えっと、ジョブは〈斧使い〉になりました。よろしくお願いします」
下切さんは少し髪がボサついたメガネ美少女である。うーん、正直、この世界って女の子の容姿はみんな整っているんだよな。
多分、この世界基準だと彼女は容姿が優れない部類に入ってしまうのだろう。前世の世界だったらクラスの9割の男子に想いを寄せられていそうな見た目なのに、自信が無さそうな覇気のない様子である。こんなに可愛いのにね。
彼女からは「どうせ私はモブです」感が漂っており、同じモブキャラな俺と相性が良いかもしれないな。
スズランの性格に反して主張の激しい身体の一部分を見て言ったわけじゃないぞ、決して。
「次アタシだねー。金志明凛だよ。男の子の前だからかな、ちょぉっと緊張してマス。何だっけ、あぁ、ジョブジョブ。〈剣士〉になったんだけど、あんま向いてない気するんだよね。とりまよろしくね!」
金志さんは、金髪でサイドアップのギャルっぽい見た目だが、わりと親しみやすそうな感じだな。
まだ少し肌寒い時期なので、着てきたであろうカーディガンを腰に巻いている。着崩し方からもオシャレな印象を受ける子だ。
陽キャなオーラが俺には眩しいかもしれない。こんな子でも男子相手では緊張してしまうくらい、男子と関わる機会が圧倒的に少ない世界なんだろうね。
「最後はあたし、三品芽来だよ。ジョブは金志さんと同じく〈剣士〉になったんだ~。そして、ノブ君! あたし、ノブ君のファンになったので、握手してください!」
「って、こらっ。男の子は触れられるの嫌なんだからメッ。あとさ、タメなんだからアタシのことアカリって呼んでよ」
「ウンウン、了解だよ~アカリン!」
「おぉー、ノリいいね。なら、アタシはメクルンって呼ぶわ。よろ~」
三品さんと金志さん、いや、メクルとアカリはかなり相性良さそうだ。仲良きことは良きことかな。
メクルはお調子者タイプなのだろう。腕を組みながら、ウンウンと頷く姿が堂に入っている。
ていうか、なんか既視感あるな、こいつ。昨日の試験のとき、「ウンウン」と後方腕組みしてたやつかもしれない。
例に漏れず彼女も美少女と言うに相応しいのだが、頭に残念を付けたくなってしまう雰囲気の子だ。
「お前ら、自己紹介は済んだか? 今日は授業の説明と施設の紹介をする。二度は説明してやらんから聞き逃すんじゃないぞー」
タイミングを見計らってキョウカ先生が授業の説明をし始めた。
「……で、大体は1限目だけの授業が多い。たまに2限目もあるがな。その後はお前らの自由時間だ」
どうやら冒険科の授業は基本、1限目までらしい。これはダンジョン攻略がメインだからっぽいな。
授業ではほとんど卒業単位が取れず、ダンジョンの攻略度によって単位が与えられるという特殊な環境のようだ。
授業後には、色々準備してダンジョンに潜る、という流れ。多分そのまま休んだり寮に戻ってサボったりしても何も言われないのだろうが、それだと進級できない感じだ。
暗に「ほぼ毎日ダンジョンに潜って攻略を進めろ」と言われているようなものだな。
「中間試験は無いが、期末試験は一応ある。まぁ、冒険科は実力さえあればどんなバカでも卒業はできる。テストはさして重要じゃないが、A組に入りたいやつは勉強もできた方が良いぞ」
チラリとこちらを見るキョウカ先生。他の生徒の反応は、自分には関係ないと思っていそうだ。
最底辺の2組からA組を目指すやつは俺くらいしかいないのだろう。
「あたしだって………」
なんか一人いたっぽい。後ろの方の席にいた気の強そうな茶髪の女の子が反応を示していた。うん、頑張れ。
「こんなとこか。んじゃ、全員着いてこい。主要な施設を案内してやる」
キョウカ先生の引率で、学園内を案内してもらえるようだ。
ゲームの舞台を聖地巡礼するようなイベントみたいだし、かなり楽しみだな。
さぁ、現実世界になったゲーム世界を、この目で見て堪能しようじゃないか!
♢
――― 学園生専用掲示板:【全体】総合スレ ―――
【男子】冒険科に男子入学!!【朗報】
1:名無しの報道官@2年(スレ主)
祝! 迷宮冒険科に男子生徒が入学しました!!
2:名無しの冒険者@2年
入学おめでとう!
そして来てくれてありがとう!
3:名無しの冒険者@3年
まじかよ今年の1年裏山杉
5:名無しの冒険者@1年
同学年のワタシ勝ち組決定!
7:名無しの鍛冶師@2年
>>5
残念ながら同じクラスでもない限りそんな接点ないと思う
その点、生産系の私は勝ち組……ふふふ
8:名無しの料理人@3年
>>7
競争率激しいだろうから簡単には関われないでしょ
10:名無しの冒険者@2年
留年したらおなクラになれないかな
11:名無しの冒険者@1年
あの、この学園かなり男子居るって聞いてたんですけど、
冒険科に男子が入るのってそんな珍しいことなんですか?
13:名無しの報道官@3年
>>11
データで見ると分かりやすいゾ
まず、攻略学部に男子が入学したのは11年ぶり
そして、冒険科に男子が入学したのは29年ぶり
攻略学部全体で見ても10年くらいに一人ペース
14:名無しの探索者@3年
>>13
はぇ~サンガツ
15:名無しの冒険者@1年
>>13
そうなんですね、ありがとうございます!
私たちは幸運な世代なんですね!
17:名無しの薬学者@1年
くっ、今から冒険科になれませんか!?
19:名無しの救命士@3年
彼は何組なんだろ?
男性はダンジョンで非力って聞くし
やっぱり3組とか2組?
20:名無しの探索者@1年
冒険科に転科……同じクラスに……
ワンチャン?
22:名無しの報道官@2年(スレ主)
男子は女子に比べ圧倒的に「力」の初期値が低いらしいです
そんな不利な中頑張ってたら応援したくなっちゃいますよね
クラスは2組ですが、彼の迷惑になる行為はお控えください
24:名無しの飼育員@2年
ふむ、2組か
最底辺なのか
25:名無しの案内人@3年
弱いジョブになっちゃったのかな
お姉さん心配です
26:名無しの冒険者@1年
A組になるより2組の方が当たりなんだね~
なんでだろうね~(泣)
28:名無しの警護官@3年
男の子、か弱い
あたしが守護らねば!
29:名無しの商売人@1年
さっきその男子見たよ。
なんかあちこち見ながら目を輝かせてて可愛かった。
あ、でも顔はかっこよかった。
結婚したい
30:名無しの芸術家@2年
>>29
どこ?
絶対見る
32:名無しの技術者@3年
最初の授業なら、今、設備案内とかで色々見てるんでしょ
大勢で見に行ったら男の子怖がっちゃうよ
34:名無しの報道官@3年
ちな冒険科1年2組の担任、あの暁伽様だからね
野次馬行って怒られたらどうなるか分からないよ
死にたい人だけ逝ってどうぞ
36:名無しの冒険者@2年
>>34
ひぇっ
こっわ
38:名無しの冒険者@1年
>>34
あ、入学したての私でも噂聞いたことある。
なんか入学時最底辺だったのに気合で冒険科を首席卒業した化け物って……
42:名無しの救命士@3年
お、落ち着いたら遠目で見よう
そそそ、そうしよう
45:名無しの経営者@1年
まぁ、多少無理してもご尊顔だけでも拝んでおきたいよね~
48:名無しの冒険者@1年
えっ、担任の先生めっちゃ凄い人だったんだ
ただ怖いだけだと思ってた
49:名無しの冒険者@2年
>>48
貴様、さてはクラスメイトだな?
50:名無しの発明家@3年
>>48
おっと君、施設案内の途中でデバイス見てそうだけど
大 丈 夫 な の か な ?
52:名無しの文学者@2年
>>50
あっ(察し)
53:名無しの彫金師@3年
このあと、 >>48 を見た者は誰もいなかった……
55:名無しの罠職人@1年
でも担任が先導してるなら意外とバレなさそう。
58:名無しの服飾師@2年
>>55
暁伽先生は背後の気配にかなり敏感
後ろに目があるなんて言われてるよ
60:名無しの冒険者@1年
>>48
男子とクラスメイトになれたことで運も尽きたんだね。
貴女の席は私が替わるから私を2組に入れろください。
63:名無しの信奉者@1年
このような者がいる野蛮なZ組に男性が所属なさってるなんて。
連れ出して助けて差し上げたいですわ。
64:名無しの技術者@3年
>>63
気持ちは分かるけどやめようねー
66:名無しの奉公人@2年
そもそも男子にあんまりダンジョン潜って欲しくないよね
死にはしないけど、ダンジョンは危ないって聞くし
67:名無しの報道官@3年
>>66
冒険者・探索者の引退理由第1位が「心神耗弱」だゾ
69:名無しの冒険者@3年
>>66
攻略失敗すると結構精神すり減るんよね
最悪の場合は死に至るレベル
男子はメンタル弱いらしいし、あの感覚に耐えられるのか心配
70:名無しの救命士@3年
い、一回も攻略失敗しなかったら大丈夫だよね?
お願い、救助対象者にならないで~(でも会いたい)
71:名無しの技術者@3年
>>63
ヒント:2組
正直、冒険科には向いてないでしょ
応援はしたいけどねー
74:名無しの文学者@2年
どうにか彼を冒険科じゃなくて安全な学科に移せないものか
あ、文学科はいつでも男性を歓迎しております
一緒に薄い本を作りましょう
ぐへへ
76:名無しの罠職人@1年
>>74
お巡りさんこいつです。
80:名無しの服飾師@1年
いくら危なくても男性の自由を縛れないですよね。
冒険者を目指すというのは、洗濯の自由ですから。
81:名無しの冒険者@2年
>>80
洗濯してて草
83:名無しの紋章官@1年
あ、今それっぽい集団見ました。
トレードターン抜けてSSS方向行ったかもです。
84:名無しの芸術家@2年
ナイス
87:名無しの彫金師@3年
>>83
書き込んだら >>84 みたいなやばい奴が押し寄せちゃう……
89:名無しの紋章官@1年
>>87
あ、ごめんなさい!
つい書き込んじゃいました!
92:名無しの冒険者@3年
くっ、行きたいけど、逝きたくない
93:名無しの解析者@2年
>>92
行きたいの? 生きたいの?
正直におなりなさいな
95:名無しの冒険者@2年
みんないくんじゃないぞ
絶対いくんじゃないぞ
98:名無しの探索者@3年
>>95
フリかな?
なら、イってヨシ!
100:名無しの報道官@2年(スレ主)
>>98
ダメですからね
節度を守って、この掲示板内で温かく見守りましょうね




