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ブラック転生~神からもらった杖の性能が最強でした~  作者: 弓藤千人
第1章 ギルド入会編

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第7話 初報酬の使い道を考えよう②

 腹ごしらえも済み、この世界の物価についても少しだが把握できた。

 さあ、そろそろ初報酬の使い道を決めねばならない。


 第一候補は、言うまでもなく『居住スペース』だ。


 いくら冒険者の給料が良いとはいえ、転生二日目にして「マイホーム」なんてたいそうな代物が手に入るはずもない。俺も一人の大人だ、いずれはプール付きの一軒家を構えたいという野望はある。だが、今は贅沢を言わない。


 せめて、賃貸でいいから、誰にも邪魔されず安心して過ごせる自分だけの『領域』が欲しいんだ。

 はた目には、この魔法界をノリノリで楽しんでいるように見えるかもしれない。だが、実情は結構しんどいよ。……ぶっちゃけ、めちゃくちゃ不安なんだよ。

 想像してみてほしい。

 夜寝て、夢の中で変なおじさんに「ごめん、もう日本人は定員オーバーだから。明日からアフリカのど真ん中で生活して」なんて言われて、目が覚めたら本当にサバンナに放り出されているような状況を。


 やばすぎやしませんか?

 正気でいられる自信、ありますか?

 俺が今置かれているのは、まさにそれなんですよ。


 だが、俺の運が尽き果てていなかったのは、この国の住人が意外と優しかったこと。そして、どういうわけか言葉の壁がなかったことだ。

 前世の3種の神器である、スマホ、財布、ワイヤレスイヤホンを待たない、全裸一歩手前の状態から放り出されて、翌朝には豪華なオーロラオムライスを腹に収めているんだ。客観的に見れば、俺はなかなかの『超ラッキーボーイ』なんじゃないだろうか。


 そうだ。泣き言はここまでにして、この『運』を活かして、生き延びるための『拠点』を探そうじゃないか。

 まずは聞き込み調査だ。この『フィット・モール』は、とにかく人が多い。これだけいれば、誰かしら良い方法を教示してくれるだろう。


 俺は雑踏の中で立ち止まり、慎重に「声をかける相手」を物色する。

 声をかけたのは、眼鏡をかけたいかにも賢く街の事情に詳しそうな人物……。

 ———ではなかった。


 視線の先、人混みの合間に見えたのは、俺の腰ほどまでしか背丈がない小さな影。

 そう。昨日、無一文だった俺に冒険者ギルド――いわば職を提供してくれた、あの恩人の少年だった。


「少年!」


 少年はビクッとして恐る恐る振り返る。


「びっくりしたぁ……。なんだ、昨日のおじさんじゃん。こんなところで何やってるの?」

「少年! 昨日はマジでありがとう」

「あはは、その様子だと無事に登録できたんだね!」

「そうなんだよ! しかもさ、聞いてくれよ……」


 俺は、昨日の「初任務」で起きた出来事を、身振り手振りを交えて事細かに話し始めた。

 興奮のあまり、まるで遠足から帰ってきたばかりの子供のようだ。

 少年は、そんな俺を「痛いおじさん」を冷めた目で見ることなく、「へぇー!」「すごいじゃん!」と、優しく相槌を打って聞いてくれた。


 ……これじゃ、どっちが少年だか分かりゃしない。


「へぇ……。じゃあ、今はその初報酬で買い物をしているところなんだね」

「そうなんだよ。それでさ、少年。……実は俺、いまだに『家無し』なんだ。どこか、いい物件とか知らないかな?」

「…………それを、僕に聞くかね?」


 確かにそうだ。

 家なんて高価な買い物、こんな子供に相談する内容じゃない。


「そうだよなぁ。でも少年ならどうにかしてくれるんじゃないかと思って」


 根拠のない期待を込めて笑いかけると、少年は「やれやれ」といった風に小さく肩をすくめた。


「しょうがないなぁ...。じゃあ、ついてきてよ」

「まじで!なんか方法あんのか!?」


 少年の話によれば、この世界の住人のほとんどは持ち家に住んでいるらしい。

 基本的に一族がその土地に根を張り、代々その土地に家を構える。

 だが、そんな中でも『賃貸』という仕組みは極稀に存在する。その目的は、家を持つ余裕のない貧困層への救済措置、または俺のような冒険者のためのものだ。


 ベネフィカの街並みは豪華絢爛で、目に入る建物の多くが貴族の館かと思うほど立派だ。

 だが、賃貸となれば話は別。

 少年曰く、そこは『安い、狭い、汚い』の三拍子が完璧に揃った劣悪物件もあり得るどころか可能性大だ。


 普通なら顔をしかめるような条件。だが、無一文から始まった俺にとっては、それこそが求めていた一筋の光明だった。

 歴史に名を残す偉大な人間にだって、誰にでもあったはずだ。泥水をすするような下積み時代が。


「少年!頼む案内してくれ!」


 少年に言われるがまま、きらびやかな商店街を離れ、湿り気のある裏路地へと進んでいく。

 行き止まりかと思うほど細い道の先に、その建物はあった。

 指で突けばそのまま崩れ落ちてきそうなほど、危うい角度で傾いた木製の看板が取り付けられている。

 そこに刻まれていた文字は――【家貸屋】。


「……そのまんまじゃねぇか!」


 思わず声に出してツッコんでしまった。



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