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ブラック転生~神からもらった杖の性能が最強でした~  作者: 弓藤千人
第1章 ギルド入会編

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第6話 初報酬の使い道を考えよう①

 翌朝。目覚めの気分は最悪だった。

 ズキズキと脈打つ頭痛に、喉を焼くような渇き。


「そうだ。俺は昨晩...」


 初報酬祝いで、ダルクさんと俺は、ギルドの一角に構えているバーで、酒を酌み交わしたのだ。


 ダルクさんはすこぶる酒が強かった。

 というかダルクさんだけでは無く、この世界の住人は、みんな強いのだろう。

 なぜなら、酒の度数がバグってんのよ。

 出てくる酒は、低くても30度は超えてくる。

 前世では、酒に潰されたことなんて一度もなかったし、ましてや記憶を飛ばすなんて失態、経験したこともなかった。

 だが、今の俺の頭の中は、真っ白に漂白されたかのように昨夜の記憶がさっぱり抜け落ちている。


「……おい、大丈夫か。死にそうなツラしてるぞ」


 拠点のバー、そのカウンターの向こう側から、低い声が飛んできた。

 ズキズキと痛む頭を片手で押さえながら、俺はバーの店員に尋ねた。


「あの、昨晩僕と一緒に呑んでいた人知りません?」

「ダルクのことか。あんたが寝ちまってからそそくさと帰っていったぞ」

「そうですか。では、私もお代を...」


 金の入った麻袋を取り出そうとした俺を、店員が無造作な手つきで制した。


「あんたの分もあいつが払っていった。……もう要らねえよ」


 麻袋を握ったまま、俺は動きを止めた。

「ここは俺の奢りだ」なんて恩着せがましいセリフを一つも言わず、後腐れなく支払いを済ませて去っていく。

 そんな素振りをおくびにも出さないあたりが、最高にクールな『大人の男』って感じだ。

 感謝してもしきれんよ。ほんとに。



 ◇◇◇◇◇



「じゃあ僕も帰ります」とギルドを出たのはいいものの、俺には帰る場所がないじゃないか。

 完全に忘れていた。

 まずは、衣食住を安定させないとだな......。


 とはいえ、少しばかりのお金は持っている。

 昨日のクエスト報酬(マスターの粋な計らい)で、10,000リースを手にしたんだが、そもそもこの世界の物価がどれくらいなのかがわからない。

 今日はそれを調べて、初報酬をどこに注ぎ込むのがいいのかを検討しよう。


 俺がまず訪れたのは、【フィット・モール】という場所で、この街の中心部に位置する商店街だ。

 街の内外の特産品や交流品も多く、物流の中心と言える。

 まず俺の目についたお店は、【ルミエッグ】というお店で、名前の通り卵を使った料理屋さんのようだ。


 そうだ。まだ朝食を済ませていないし、二日酔いだから優しいものを口に入れたいところだ。

 俺はここで、朝食を済ませるとともに物価がどんなものか確かめことにした。

 今自分が1番食べたいものを正直にいうと、某牛丼チェーンでよく食べていた朝ごはんセットだが、そんなものないんだろうな......。味噌汁飲みて〜。


 メニュー表見てみると、料理名の後に料理の説明までちゃんと記載されていて異世界人にも優しい作りになっていた。

 俺はその中から特に惹かれた一つの料理を頼むことにした。ほんとは何個も頼んで味見したいところだが、金がたくさんあるわけでもなければ、次の仕事をもらえる保証もない。節約あるのみだ。


 ――――――――――


 オーロラ・オムライス   120リース

 七色に光る翼を持つ「虹鶏」の卵を丁寧に火入れ、焼き上がった表面はオーロラのようにゆらめく至極の一品


 ――――――――――



 ◇◇◇◇◇



「大変お待たせしました!オーロラ・オムライスでございます」


 ウェイトレスのお姉さんの耳が犬のような垂れ耳で、お尻から尻尾が生えてる。

 受付嬢のララさんもだが、この世界は、不思議な種族が多いのだな。

 まだこの世界に来てから2日目だが、もう尻尾というものにメロメロだ。


 そんなことはさておき、注文したオーロラ・オムライスが運ばれてきた。


「すっご...」


 運ばれてきた皿を見た瞬間、思わず目を細めた。


 純白の磁器の上に乗っているのは、黄金色を通り越して、七色の光を放つ不思議な塊。

 虹鶏の卵を使っているというそれは、表面がまるで生きたオーロラのように、ゆらゆらと波打って輝いている。

 これは前世で作れたらバズり確定大儲け案件だ。

 俺は意を決して、銀製のナイフをその中心に滑り込ませる。



 ——— シュワッ。



 心地よい音と共に、閉じ込められていた香りが一気に解放された。切り口から溢れ出したのは、とろっとした半熟の黄身……だけではない。

 淡く光る「虹色の粒」が、まるでシャンパンの泡のように空中に舞い上がり、周囲に芳醇なバターと、どこか果実のような甘い香りを振りまいた。


「いい香り...。」


 一口、スプーンですくって口に運ぶ。


「…………っ!?」


 噛む必要なんてなかった。舌に触れた瞬間、卵が熱を持って「溶けた」のだ。

 濃厚なコクが脳を直接揺さぶるような衝撃。

 しかし、後味は驚くほど軽い。

 そして虹の粒が口の中で弾けるたびに、全身の血の巡りが良くなるような、活力がじわじわと指先まで染み渡っていく感覚がある。


 食事をここまで「体感」できたのは初めてだ。

 卵料理という概念を超えた、まさに「至高」の一皿。

 この味は忘れられないな。もしまた仕事をもらえたら今度は別のものも食べてみたい。これをモチベーションにして頑張るんだ。



 ◇◇◇◇◇



 支払いを済ませて店を出た後、俺はこの世界の物価について考えてみた。


 オーロラオムレツの価格は、一皿120リース。

 もし日本でこのクオリティの料理を食べようとすれば、安くても1000円は下らないはずだ。

 つまり、この世界の物価はだいたい日本の約1/10と仮定していいだろう。


 ……ということは、昨日の日当(1万リース)は、実質10万円ほどの価値があることになるぞ?


 もしかして、冒険者ってかなりの高給取りなんじゃないか。

 ちょっとした贅沢どころか、庭付き……いや、プール付きの戸建ても夢じゃない。

 神を脅して掴み取った『魔導士』という肩書きは、案外、最高の就職先だったのかもしれない。


 自分がまだ「見習い」ということも忘れ、淡い幻想を抱きながら、俺は懐に残った9,880リースの使い道を考え始めた。

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