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ブラック転生~神からもらった杖の性能が最強でした~  作者: 弓藤千人
第1章 ギルド入会編

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第4話 波乱の初クエスト

 運良くダルクさんの受けた任務クエストに帯同させてもらえることになった俺は、ギルドのあるベネフィカを飛び出して、依頼主のもとへと向かっていた。


「ダルクさん、今回の依頼はどう言った内容で?」

「魔獣の討伐だ。まぁB級だから大したことないねぇだろうが、タナカは初クエストか?」

「えぇ...。初めてです」


 魔獣?なんだそれ。

 ダルクさんには聞きたいことが山ほどあったが、おしゃべりなダルクさんのペースに乗せられて重要な情報を聞き出すことはできなかった。


「気張れよ?B級とはいえ気抜くと死ぬぜ。タナカ、お前何ができんだ?」

「……一応、魔導士です。見習いの」

「ほう。じゃあ戦士である俺が前衛。お前が後衛だ。働きによっちゃ報酬分けてやるからな!」

「ほんまですか!」


 ダルクという人物像が段々と見えてきた。

 新人の俺を任務に誘ってくれた上に、報酬を分けてくれる可能性すら提示してくれている。

 この街には、善人しかいないのか?



 ***



「着いたぞ!ここが今回の目的地『ルンベルク』だ」


 ルンベルクは森林地帯で、人が住むには適していない地だが、森林の中に数個の村が点在している。

 今回の依頼は、その村々の長達の連名で出されており、詳細については、村長から直接説明を受ける手筈となっていた。


「この辺りで依頼主の村長と待ち合わせしてんだけどなぁ」

「あの人じゃないですか?」


 少し離れたところに小柄な老人が切株に腰掛けている。

 まあ、人っ子1人いない状況下で、依頼主はあの人以外考えられないだろう。

 ダルクさんが、その老人に近づき、話を始めた。


「あの〜。冒険者ギルドから派遣された者なんですが...」

「あぁ。あなたが!この度は、依頼を受けていただきありがとうございます」

「早速、依頼内容を詳しく伺ってもよろしいでしょうか」

「はい。では早速ですが、被害に遭った村へとご案内します」


 口頭での詳しい説明はなく、軽く挨拶を済ませたらすぐに俺たちは森林の奥地へと案内された。

 もう少し説明とかして欲しいな。急に魔獣が現れたら困るじゃないか。

 心の中で、依頼主への不満をぶちまけていると、思ったより早く被害地へと辿り着いてしまった。


「なんだこれは......」


 我々が目にした風景は悲惨なものだった。

 家は粉々に潰されて、資材置き場と言われても不思議ではないほどに村は壊滅していた。

 いつまでも驚いてはいられない。

 いざ戦闘になると、俺は単なる役立たずに過ぎない。

 俺にできることはただ一つ。聞き取り調査だ。


「この状況はいつ頃から?」

「はい...。10日前くらいですね。急に現れた魔獣によって村は壊滅してしまいました」

「怪我人は?」

「はい...。怪我人はいません」

「これだけの被害でよく怪我人が出ませんでしたね」

「いえ...。死者は多数います。怪我で済んだ人間が1人もいないのです」

「!?」


 てことは、会敵したら死亡率100%の魔獣討伐?これほんとにB級なのかよ。S級とか世界滅亡レベルじゃねーかよ。

 まあ、俺には関係のないことだ。

 もし見習いを卒業できたらC級あたりでのんびりやろうと心に誓った。


「タナカ!」

「はい!」

「今すぐこの森を出るぞ!」

「...え?」

「この規模の被害はおそらくB級案件なんかじゃねぇ。下手したらS級案件だ!」


 おいおいおいちょ待てよ。

 ランクの仕分けってそんな適当にやってるわけ?

 こんなんじゃいくつ命があっても足りないじゃないか...。



 ———ドォォン!



 急いで帰路に着こうとした我々を阻むかのように突如鳴り響く轟音。

 振り返るとそこには、人間界に存在するライオンなんかよりはるかに大きく、凶暴な魔獣の姿があった。

 おいおい、でかすぎないか。驚きすぎて少しちびっちまったぜ。


「チッ...。間に合わなかったか」

「どうしましょう。ダルクさん」

「退路を断たれた。俺が引き付けた隙に、お前らは森の出口まで走れ!」


 勇敢なダルクさんの言う通り、俺は魔獣が退路を空けるのをじっと待った。

 だが、どうもその魔獣は俺の方を狙っている気がする。勘弁してよ。弱い者いじめはよくないぞ!


「動かねぇな。この魔獣」

「そうですね。どうします?」

「こっちから仕掛けるさ!」


 ダルクさんは背負っていたアックスを構え、魔獣めがけて一直線。人間業とは思えない跳躍力で、首の高さまで飛び上がり、アックスを振りかぶった。


 戦士は攻撃の要。ましてやあのアックス、攻撃力がすこぶる高そうだから、一撃入れば致命傷に違いない。


「ハァァァァ!」



 ———カン!



 想像していた音とはかけ離れた、軽く跳ね返されたような音が鳴り響いた。

 そう。一撃で獣を真っ二つ......どころか傷一つつけることができなかったのだ。

 A級戦士の一撃でも無傷かよ。どうすんだよこの獣。


「か、硬った!タナカ、お前も構えろ!」

「はい!」


 あれ。どこだ?

 先ほどまで手に持っていた杖が見当たらない。

 俺は、こんな時に何やってんだよ。

 何も出やしない役立たずの棒だが、魔導士の俺が構えろと言われてファイティングポーズをとるわけにもいかんだろう。

 とにかく杖を探さねば、これでは依頼主の村長と同じで守られてるだけの人ではないか...。


 俺は杖をどこかに落としたと思い、周囲を見渡すがどこにも目当てのものは見当たらなかった。

 それもそのはず、俺は初めてのクエストで緊張していたせいか、杖を腰巻に差し込んだのを忘れていたのだ。


()()()、危ねぇ、忘れてた。ふぅ...」

「緊張感がねぇな!早く構えろ。いつ襲ってくるかわからねぇぞ」

「はい!すみません!」


 構えたところで意味がないことは、俺だけが知っている。

 だって俺魔導士なのに魔力ないんだもん!しょうがないじゃん。魔法、出したくても出せないんです!

 そうは言いつつも、必死に俺を守ろうとしてくれているダルクさんに悪いじゃないか。


 うん。ここはひとまず演技をしよう。

 俺は、必死に戦っている風に杖を構えた。

 するとその時......。



 ———ドッカァァァァン!!!



 地響きと共に鼓膜を突き刺すような爆音。

 巻き上がる砂埃と土煙。

 やがて、それらが収まり、視界が開けた時にはもうすでに、猛獣の影も形もなかった。


 そう。

 俺は、A級戦士であるダルクの重い一撃ですら、傷一つつかなかった強固な魔獣を一撃で消滅させるほどの魔法を放っていたのだ。


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