第3話 (見習い)魔導士
「では、役職は何になさいますか?」
「役職ですか......何がありましたっけ?」
「そうですねぇ。では、こちらをご覧ください」
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【役職一覧表】
前衛:騎士 戦士 拳闘士
中衛:技巧士 奇術師 暗殺者
後衛:魔導士 神官 召喚士
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へ〜。冒険者ギルドだし、魔導士と騎士くらいしか思い浮かばなかったけど、結構多様な役職があるもんなんだな。
いろんな役職に目移りするが、やはり、魔導士だろ。
もらった杖も魔法の杖っぽいし。
「じゃあ、魔導士で!」
「承知いたしました。では、こちらの書類に必要事項をご記入ください」
「はい...」
渡された書類に一通り目を通してみたが、わからないことだらけだ。
とりあえず、空欄を埋めてみよう。
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【魔導士基本情報登録書】
名前 【タナカ マサシ】
年齢 【27】
前職 【なし】
魔力量 【 】
魔法系統 【 】
属性適正 【 】
魔法級 【 】
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わかる範囲で記入をしてみた。
名前と年齢以外に情報のない、簡易的な自己紹介カードができてしまった。
年齢のサバを読んでいることは内緒にしておいてくれよな!
「すみません...。魔力量とか知らないんですけど...」
「基本ステータスに関しましては、この後測定しますので空欄で構いません!少々お待ちくださいね」
「はぁ......」
ララさんがカウンターの奥から取り出したのは、掌に乗るほどの大きさの、透明な水晶が埋め込まれた奇妙な真鍮の円盤だった。
「これは魔力測定器です。これに手をかざせば、魔力量が数値化され、この空欄部分に転写されます」
ついに来た、ファンタジーの定番「ステータス測定」。
俺は生唾を飲み込み、緊張で湿った掌をその冷たい水晶にかざした。
――キィィィィン……。
微かな共鳴音と共に、水晶の中に淀んだ光が灯る。
次の瞬間、ララさんの手元にある書類の空欄に、薄紫色の文字が浮かび上がっていった。
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【魔導士基本情報登録書】
名前 【タナカ マサシ】
年齢 【27】
前職 【なし】
魔力量 【5】(一般成人男性平均:100)
魔法系統 【不明】
属性適正 【適正なし】
魔法級 【不明】
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記録された数値を見て、ララさんの顔が凍りついた。
「……5? え、ええと……測定器の故障でしょうか!?」
ララさんは何度もディスクを振ったり叩いたりしたが、数値は非情にも「5」から動かない。
一般人の20分の1。魔導士を名乗るには、あまりにも絶望的な数字だ。
俺にはなぜ魔力がないのか。それは俺が異世界人だからだ。
ここに来る前、神のじじいが言っていたな。俺には魔法が使えないと......。
「これでは、魔導士は無理ですよね......」
「いえ、無理ってことではないんです!少々修正をしてもよろしいでしょうか?」
「ええ。もちろん。大丈夫です」
快諾すると、ララさんが俺の登録書を修正し始めた。
どこをどう修正すれば一端の魔導士らしくなるのかはさておき、なんにせよ登録はしてもらえそうでよかった。
「はい!ではこちらで登録させていただきます」
「ん!?え?」
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【魔導士】→【見習い魔導士】
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「見習い?」
「はい!役職は基本的にランク付けされてまして、大きく分けて上からS級、A級、B級、C級となっております」
「なるほど」
「タナカさんは、魔力量が著しく少ないのと魔法に関する情報が少ないので、暫定的に見習い魔導士ということになります」
まぁ、そりゃそうだよな。実力に見合わない依頼を受けて命を落とすなんてあってはならないもんな。事実、俺はもう魔力がないので、魔法は使えませんって言われちゃってるし、このまま一生見習い魔導士の可能性が高いな。もらった杖もクソの役にも立たなそうだし。
「見習いってことで、何か制約があるんですか?」
「はい。では、見習い魔導士について詳しく説明いたします」
またしても何も知らない俺に親切に説明してくれるララさん。
説明している時も、無意識に尻尾をフリフリしてしまっているところが実に素敵だ。
そんなことは置いといて、制約について整理しておこう。
見習い魔導士として注意すべきポイントは3つだ。
①1人で依頼を受けることはできない。
②報酬割合決定権がない。
③見習いを抱えたパーティはパーティランクの1つ下のランクまでの依頼しか受けることができない。
この3つのポイントが魔導士としての人生を左右する。
この中でも1番やばいのは③だ。
依頼の受け方は、個人請負とパーティ請負(2名以上)の2つがある。ここで①が適応されるため、俺は個人請負をすることができない。
それなら、パーティ請負で稼ぐしかないのだが、ここで③が悪さをする。
パーティにもランクがあるらしく、仮にS級騎士が俺とパーティを組んでくれたとする。
すると、パーティランクはA級になってしまうのだ。
本来、S級の依頼受けることのできた騎士がA級以下の依頼しか受けられなくなる。
それでいて報酬の取り分も少なくなってしまう。
なんのメリットもない。誰が俺をパーティに入れたがるんだ。あぁ。誰もいないだろう。
つまり、見習い魔導士(無職)ということだ。これは参った。降参だよ。
「では、説明は以上になります」
「ありがとうございます。こんなに良くしていただいて申し上げにくいのですが......」
「お気になさらず。なんなりとお申し付けください」
「このままじゃ俺、一生仕事受けられないと思うんですけど......誰かパーティ組んでくれそうな方います?」
「そうですねぇ。あっ!ダルクさ〜ん」
ララさんがたまたま通りすがったダルクという男に話しかけた。
見た目は四十くらいで、髭面、オールバックの渋い系だ。
かなり立派なアックスを背負っているので、ベテラン戦士といったところだろう。
「なんだよ!ララちゃん。今から俺、クエストに出るとこなんだけど」
「ダルクさん。今日は個人仕事ですか?」
「あぁ。うちの連中この前の仕事でかなり儲けただろ?なかなか仕事に出てこねーんだわ」
「今日の依頼はどう言った内容ですか?」
「おそらく、B級の魔獣討伐だ。」
あー。なるほど。
なんとなく察しがついてきた。
「ちょうどよかったです!ダルクさんA級戦士ですもんね!よかった!よかった!」
「ちょっと待てララちゃん。何がよかったんだよ!?」
「紹介いたします。本日、デンジャラズ所属になりました。タナカさんです」
さすがララさん!ナイスパス!
ダルクさんはA級戦士、依頼はB級。俺を連れてってくれても問題なし!
と言いたいところだが、そんなにうまくいかないんだろうな。どうせ、こんなやつ連れてってどうすんだよとか言われんだろうな。
「おう!俺はダルク。よろしくな」
「ダルクさん。よろしくお願いします」
「一緒に行くか?タナカ」
「え......。いいんですか!?」
予想外の展開。これから日々、雑用をこなして日銭を稼ぐ毎日だと思っていたのに、こんなに早く初任務がやってくるとは!!
「お願いします!ダルクさん!」
「おうよ。じゃさっそく行くか!」
「では、タナカさんこちらを」
ララさんはそういうと、俺にローブを渡してくれた。
ローブ?そうか俺は魔導士だからな!
「それ着た方が魔導士らしさ出ますよ!初クエスト頑張ってきてください!」
「ありがとうございます!行ってきます!」
ひらひらと舞うローブのおかげで気分は上々。
こうして急遽、俺は先輩戦士のダルクさんと初任務に向かうのだった。




