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ブラック転生~神からもらった杖の性能が最強でした~  作者: 弓藤千人
第2章 バクラ洞窟編

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第12話 旅の基本

 ギルドで散々に言われたリーゼは、少し落ち込んでいるように見えた。

 ここは俺が何か気の利いた言葉をかけるべきだろう。大人として。……だが、こういう時、なんて声をかけたらいいんだ?

 結局、気の利いた台詞なんて一つも思い浮かばないまま、俺たちは無言でベネフィカの正門を潜った。


「……あいつら、気にしないで。いつものことだから」


 気まずそうに俺を気遣うリーゼ。

 おいおい、気遣うどころか気遣われてしまったじゃないか。情けない……。


「気にしてねぇよ。それより、早く村に向かわないと日が暮れるぞ」

「日が暮れる!? ……当たり前でしょ!」

「はぁ?」


 俺の言葉に、彼女は信じられないものを見るような目で立ち止まった。

 聞けば、ここから依頼主のいるハイツ村までは、歩いて丸一日かかるらしい。


「あんた、まさかそれすら知らずに依頼を請けたの!? あり得ない!!!」

「いや別に、場所なんてどこだっていいだろ」

「どおりで荷物が少なすぎると思った。今日は野営よ。あんた、それじゃ寒くて死ぬわよ」


 おいおい、マジかよ。

 こんなことになるなら、昨日の食事代をキャンプ用品に回しておくべきだったぜ……。



 ◇◇◇◇◇



 どれくらい歩いただろうか。

 運動不足の俺には、この長距離移動はかなりこたえる。足の裏がじんじんと熱い。


「そろそろ、お昼じゃない?」

「そうね!ここらで昼食にしましょ」


 リーゼは明るく提案するが、周囲を見渡してもそこには荒野が広がっているだけだ。

 人里なんて影も形もない。

 当然、タッチ一つで料理が運ばれてくる出前サービスなんてあるはずもなく……。


「昼食って言ったってどこで食うんだ?」

「う~ん。あそこの森で「調達」しよう」


 調達?

 俺は彼女が指さした鬱蒼とした森を見上げ、嫌な予感に眉をひそめた。


「基本的に長期クエストの食糧は現地調達よ。荷物になるからね」

「ほう、合理的だな」


 俺は素直に感心した。荒っぽいだけのワガママ娘かと思っていたが、どうやら彼女は俺なんかよりもずっと冒険者として賢く、経験値もありそうだ。


「ここから先は砂漠に入るわ。だから、ここで夜の食料も確保しておかないと。いい? ちゃんと働きなさいよ!」

「わかってるって」


 俺たちは鬱蒼とした木々の茂る森へと足を踏み入れた。

 リーゼの走力は凄まじかった。先頭を切る彼女は、まるで風のように枝葉を縫って駆け抜けていく。対して俺は、木の根に足を取られそうになりながら、必死に背中を追うのが精一杯だった。


「あんた、もっと早く走れないの? 森に入ったばかりでへばってどうするのよ」

「……はぁ、はぁ。俺は昔から足が遅いんだよ」

「ったく。……あんた、冒険者としての役職は何?」

「魔導士...。つっても気まぐれな魔法しか使えないけど...」


 俺は隠さず、すべてを話した。

 魔力がほとんどなく、まともに魔法が使えないこと。

 そして一度だけ、猛獣を消し飛ばすほどの「何か」を放ったこと。


 言い終えると、リーゼは呆然と立ち尽くした。


「……つまりあんた、何もできないってこと!?」

「いや、そんなことはない。必ず力になるさ......」


 強がってみたものの、説得力に欠けるのは自分でもわかっていた。

 結局、食糧調達はリーゼの独壇場だった。

 彼女が森に踏み入って数分も経たないうちに、仕留められた獣が足元に放り出される。

 その動きには迷いがなく、卓越した剣技を感じさせた。


「……騎士、か」

「そうよ。文句ある?」


 鞘に納められた剣を眺めながら、俺は苦笑する。

 どうやらリーゼは、想像以上に頼れる『騎士』様らしい。

 もしかして、俺の出番なし?


「食べ物はこれだけあれば十分ね。水は……まあ、持っていけないわ。移動しながらそこの川でたらふく飲んで行くわよ」

「え? 持っていけないってどういうことだ? 水筒とかないの?」

「水筒? なによそれ」

「……水を入れて持ち運ぶものだよ。鉄とかステンレスとかのさ...」


 なんだよ。この世界には水筒すら普及していないのか。


「ステンレス?ってのは知らないけど、そんな高価なもの買えるわけないでしょ」

「そんなに高いのか?」

「えぇ。そもそも鉄なんてこの国では貴重な資源なのよ。そんなことも知らないなんて……」


 呆れたように溜息をつくリーゼ。

 鉄が貴重な世界か。……なら、代用品を探せばいいだけの話だ。

 俺は周囲の森を見回し、あるものに目をつけた。


「リーゼ。なんか、刃物貸してくれないか?」

「は? 刃物を貸せって……」

「いいから。ちょっと工作がしたいんだ」


 リーゼから借りた短剣で、近くに生えていた竹を一本切り倒した。


「……何よ、ただの棒じゃない。それがどうなるっていうの?」

「こうやって節を残して切れば、立派な容器になるだろ。あとは適当な木っ端を削って栓を作れば完成さ」


 俺は短剣を器用に使い、容器を整えていく。

 竹筒の切り口が滑らかになり、最後に削り出した木栓を嵌め込むと、カチリと心地よい音がして密閉された。


「ほら、これならそのかばんにも入れられるだろ。水漏れもそんなにしないはずだ」

「あんた、意外と器用なのね。戦闘じゃなんにも役に立たないけど......」

「お前は、一言多いな」


 リーゼは素直じゃないな、と思いつつ、俺は小さく笑った。

 これで砂漠への第一歩を踏み出せる。


 ここで火を起こして、肉を焼いたりしているほどの余裕はない。

 俺たちは、生食が可能な食料を歩きながら食べ、先へと進んだ。



 ◇◇◇◇◇



「はぁ……。今日はかなり進んだんじゃないか?」

「そうね。もう暗くなってきたわ。ここらで今日は休みましょ」


 周囲の木々はまばらになり、砂漠の入り口を感じさせる乾燥した土地が広がっていた。


「そこらへんに乾燥した木が落ちているでしょ。たくさん集めて火を起こしておいて」

「はいはい……」


 俺はため息を吐きながら、落ちている枝を拾い集める。

 前職で、キャンプ好きの上司に「焚き火は空気が重要だ」と耳にタコができるほど聞かされたのを思い出す。

 枝を適当に放り投げるのではなく、空気が通りやすいように組み上げ、小さな火種を作った。


 カチリ、と。

 俺が火打ち石を叩くと、枯れ草に火が移り、やがてパチパチと頼もしい音が鳴り始めた。


「……意外ね」


 テントを張り終えたリーゼが、焚き火のそばに腰を下ろした。


「なにがだよ」

「てっきり魔法で簡単に火をつけるのかと思ってたわよ……」

「それができたら苦労しませんよ」


 俺が自嘲気味に返すと、リーゼはふっと溜息をついた。


「実は私も魔導士を目指していたのよ……」

「どうして騎士に?」

「才能がなかったのよ。……って言っても、あんたよりはあるわよ」

「ほんとかな?」

「疑っているの? じゃあ、見せてあげるわ!」


 彼女は自慢げに楽しげな表情を浮かべると、ふわりと立ち上がり、手のひらを突き出した。


 ――なんか、少しずつだけど。この子の扱い方がわかってきた気がする。

 さて、どんな魔法を見せてくれるのかな?




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