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ブラック転生~神からもらった杖の性能が最強でした~  作者: 弓藤千人
第2章 バクラ洞窟編

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第11話 『裏掲示板』での出会い

 翌朝。

 俺は少年の言っていた『裏掲示板』を確かめるべく、再びギルドの門を潜った。


「おはようございます、タナカさん」

「おはようございます、ララさん!」


 受付カウンターでは、今日もララさんが爽やかな笑顔で迎えてくれた。

 この街の依頼事情に一番詳しいのは、間違いなく彼女だろう。俺は周囲に他の団員がいないタイミングを見計らい、声を潜めて切り出した。


「あの、ちょっとお聞きしたいんですが……。僕のような『見習い』でも受けられる依頼がまとまっている……その、裏掲示板、というのを探していまして」

「裏掲示板、ですか……」


 その言葉を聞いた瞬間、ララさんの笑顔がすっと消え、困惑と申し訳なさが混ざったような複雑な表情に変えた。やはり、あまり表立って推奨されるものではないらしい。

 だが、それでも受付嬢として俺をギルドの地下にある一室へと案内してくれた。


「こちらが『再掲示室』……。通称『裏掲示板』です」

「……すっげえ」


 それは掲示板などという生易しいものではなかった。

 四方の壁一面を、行き場を失った依頼書がびっしりと埋め尽くしている。


「こちらに掲載されている依頼を請けるにあたって、いくつか説明させていただいてもよろしいでしょうか」

「……お願いします」


 ララさんは真剣な眼差しで俺に向き直ると、声を落として言った。


「まず、こちらの依頼はギルドとして請けている依頼ではありません。通常、掲示板に並ぶ依頼は依頼主とギルドが契約を結び、こちらが安全を保証する形で冒険者が請け負います。ですが、ここに並んでいるのはすべてギルドとの契約の有効期限が切れた依頼です。もしこれを請け負う場合、タナカさんと依頼主の『直接契約』となります」


 彼女は一呼吸置いて、念を押すように続けた。


「つまり、何かトラブルが発生しても、ギルドは一切の責任を負えません。……その点だけは、重々ご承知おきください」


 なるほど。見た目は正規の依頼と大差ないが、間にギルドという『仲介業者』が入るか入らないか、その違いか。

 賃貸物件で言えば、不動産屋を通した契約か、大家さんとの直接の個人間契約か。

 まあそもそも人気のない依頼だ。

 コスパが悪いとか、地味で面倒だとか、そんな理由で敬遠されているだけで、トラブルなんて気にしなくてもいいだろう。


「わかりました! ありがとうございます」

「くれぐれもお気をつけて。では……」


 ララさんが立ち去り、無機質な部屋に俺は一人取り残された。

 壁一面を埋め尽くす依頼の山を、貪るように見回す。やはり、ここに並ぶ依頼の質は言うまでもないだろう。見習いの俺が見ても、それはただの「雑用」に過ぎない。

『裏庭の草むしり』に『ごみ屋敷の大掃除』……。これ、全部自分でできるだろうが。

 溜息を吐きながら、そんな底辺依頼の掃き溜めを眺めていた、その時だった。

 無数の紙切れの中で、その一枚が、妙な異彩を放っていた。


 ――――――――――


【依頼名】

 バクラ洞窟・最深部より希少鉱石『ヴァルストラム』を回収せよ


【依頼内容】

 洞窟最深部に結晶化した状態で存在する希少鉱石『ヴァルストラム』を、無傷の状態で回収すること。

 本鉱石は極めて不安定な性質を有しており、微弱な魔力反応であっても接触すると内部から崩壊・消滅する特性を持つ。


【報酬】

 40,000リース


【依頼主】

 ハイツ村 ライエル


 ――――――――――


 これじゃん……! 報酬40,000リースって、おいおい高すぎだろ!

 裏掲示板の「売れ残り」が、まさかこんなお宝を隠し持っているなんて。

 迷う必要はない。次の仕事はこれに決定だ。


「……よしっ」


 覚悟を決め、その紙切れを壁から剥がそうと手を伸ばした――その瞬間だった。


 カサリ、と。

 俺の手の上に、さらにもう一つの白い手が重なった。

 この地下室には、俺しかいないはずなのに。


「うわっ!」


 飛び上がるほど驚いて横を見ると、そこには紫がかった髪の女が立っていた。

 ……え? いつからいたんだ、この子?


「なによ。この依頼は私が受けるのよ!」

「いや、俺の方が早かったでしょ」


 気が動転していたせいか、とっさに口をついて出た反論。

 彼女はむっとした表情で俺を睨みつける。


「いーや! 私の方が早かったわ!」

「いやいや、俺の手の上にあなたの手が乗ってましたよ? 事実今、この依頼文を持ってるのは俺だ」

「返しなさい! この泥棒!」


 なんだこいつは。

 貴重な良依頼を横取りしようとした挙句、泥棒呼ばわりかよ。

 よく見ればかなりの美人だが、そんなことは関係ない。俺には生活がかかっているのだ。


「だめだ。これはおれのだ」

「ずるいわ!私の方が先に見つけていたのに!返しなさい!」


 この後も不毛な言い争いが続いた。

 埒が明かない。大人である俺がこの場を収めるべきなのは分かっているが、この依頼を彼女に渡すほど、俺は聖人君子ではない。

 俺は一度深呼吸をし、ヒートアップする彼女に向けて提案を持ちかけた。


「……じゃあ、一緒に行くか? 取り分6:4で手を打とう」


 俺の提案に、彼女は間髪入れず食い気味に返してきた。


「もちろん、6が私よね?」

「んなわけあるか! お前は4だよ!」

「だめ! 私が6じゃないと!」


 誰かこのわがまま娘をなんとかしてくれ。……お母さ~ん!、どこですか~?


 結局、取り分は五分五分という互いに不服な形で話はまとまり、俺はこの生意気な女とパーティを組んでクエストに出かけることになった。

 ……出会い方がこれだ。

 この先、一体どんな苦労が待っているのやら。先が思いやられる。



 ◇◇◇◇◇



 俺と彼女は各々支度を整え、ギルドの玄関で待ち合わせることになっていた。

 もっとも、俺には大した準備などないのだが。

 一通り身支度を済ませて玄関へ向かうと、すでに彼女の姿があった。

 しかし、その周囲には不穏な空気が流れていた。


「なんだ。リーゼ。お出かけか?そのまま帰らぬ人になってくれるといいんだけどな!」

「……関係ないでしょ? どっか行きなさいよ!」

「ハハッ。迷惑なんだよ。お前みたいな疫病神がここにいると、このギルドまで呪われて壊滅しちまうぜ」

「ハハハハハ!」


 嘲笑がギルドのロビーに響き渡る。

 リーゼの肩は微かに震えていた。

 彼女は今にも溢れそうな涙を必死にこらえながら、その眼で俺を捉えた。


「……行くわよ!」

「......お、おう」


 彼女の名前はリーゼ。

 何らかの理由で、このギルド内では疫病神扱いされているらしい。

 ……正直なところ、火種を抱えた相手とのクエストなんて御免だ。俺の目的は四万リースの報酬のみ。だが、先行きに暗雲が立ち込めていることだけは間違いなさそうだ。


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