魔王城との比較:主
「静まれ」
その一言で静寂が大広間を支配する。
「熱帯夜に耳元を飛び回ってる蚊」
並みに五月蝿いオッサンも渋々黙っている。
臣下を完全に従えている訳ではなさそうだが、ある程度のカリスマは有るのか。
「勇者殿は、突然の事で混乱しておられるのだ。些細な事を、一々咎めるな」
混乱させた奴等の頭だよな、アンタ。
何「俺は懐の広い男」アピールしてんの?
「ここは人間が支配する土地の中央に位置する、最大の王国レオス。そして私は国王のディルクだ」
そっすか。
そんな説明はどうでも良いが、お前らのしたのは拉致だよな?
俺は、一欠片も同意してないぞ?
女神の拉致は覇王が着いて来てくれてるから良いとしても、冒険行かせるならそれなりの装備と仲間を要求するぞ?
「勇者殿に来ていただいた理由は、他でもない…魔王の討伐を依頼したいからだ」
無理。
無理無理無理無理無理…あれ?ムリて漢字どんなんだっけ?
まあ良いや、そんな事より攻略法は有るのか?
無限湧きするラスボスとか、悪夢だろ。
魔王を完全に倒すには、覇王倒す必要があるんだぞ?
片方でもムリ。
「魔王は軍を率いて、我々人間の領土に攻め込んでいる」
そうなのか?
『魔王がそんな面倒な事をすると思うか?』
思わない、つまり嘘だな。
呼び出した早々、嘘を吹き込むとか信用ならん奴だ。
『まあ、魔王が支配しているのは魔族であって魔物ではない。魔物は好き勝手に、散発的に攻め込んでいるらしいが』
オイ。
『脅威を用意して、危機感を煽らなくては何時までも立ち止まるのが人間なのだ。ならば、立ち止まった人間の尻を蹴飛ばしてやる奴が必要だと思わないか?』
覇王に蹴飛ばされたら、進む前に肉片になるんじゃないか?
『だから、俺が出ないで魔物に任せているんだろう?』
放置してるだけだろ…。
「勇者殿…?」
覇王との会話に気を取られて、王の話をスルーしていたらしい。
「宜しいかな?」
頷く。
「故に我々人類は一丸となり、魔王の脅威から民を解放せんと立ち上がった」
『そうそう、昔から魔物は居たからな?魔族が無意識に放出している魔力が固まり、塊になったのが魔物だ。
魔物は偶然から生まれた種族だから、総じてレベルが低い。
基本的には人間でも難無く退けられるレベルでな。
魔王に因縁付けずに、魔物だけ相手していれば余裕で勝てただろうに…馬鹿な奴等だ』
「しかし、魔王の力は強過ぎた。我々人類の精鋭を集め、討伐軍を何度も送ったが…毎回、魔王城の近くで連絡が途絶えるのだ」
ここに魔王フルボッコにした奴が居るって言ったらどうなるかな?
『倒れるんじゃないか?』
「なので、我々は数に頼るのを止め、強力な力を秘めた[勇者]殿を異世界から召喚する事にした。それが貴方、勇者殿という訳です」
だから、完全に拉致だよな?
召喚て何?
俺、召喚獣扱い?
せめて形だけでも「招く」て言えよ。
最後だけ「です」とか言っても、誤魔化されんよ?
「勇者殿、此方の水晶に触れて頂けますかな?」
衛兵の一人が、人間の頭程もある水晶を差し出す。
あ、姫さんに叱られてたオッサンだ。
いつの間にか、王の隣に姫さんが移動していた。
覇王、これ触って大丈夫?
『触れなければ話が進まんぞ?』
…。
分かったよ。
恐る恐る水晶に触れる。
すると、水晶から強い光が溢れ出た。
…強い光にはもう慣れました。
今日はここまでです( ̄▽ ̄;)




