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手前ら…!

覇王の無慈悲な攻撃が魔王を襲う!

『これくらいで勘弁してやるか』

ガッ!


最後に一蹴り入れて、覇王は矛を収めた。


ドサッ


何か重い荷物を落としたかのような音がした。

見ると、変わり果てた…目をした「魔王だったモノ」が床に転がっていた。


完全に目が死んでる…。


覇王は、魔王を思う存分痛めつける為「不死の呪い」を魔王にかけ、殴る蹴るを延々と繰り返した。

一撃毎に魔王の身体は肉が無くなり、骨が剥き出しになっていった。


殴る部分が無くなってくると、覇王は手の平から回復魔法らしき緑の光を魔王に浴びせた。

すると、魔王は元の姿に戻った。


殴る、回復、蹴る、回復…(ry

この一連の流れが何度繰り返されたか事か…。


二桁入ってすぐの頃までは、魔王も元気にリアクションをしていたが…。

二十回を超えた辺りで


「も…も、げんか、い……」


と呟くと、一切反応をしなくなった。

そろそろ許すかと思ったが、覇王はそれからも一方的な攻撃を繰り返した。



うん、流石の俺もドン引きだわ。


しかも、最後に回復させてたから外傷は無い。


「何があったんだ!」


と問われそうな程、肉体と精神の損傷に差がある。


『ふん、情けない奴め』


いや、これは酷いって。


『そこまでお前が言うなら、要らんとは思うが精神面の回復魔法もかけるか?』


ん?よくある設定だと、回復魔法で精神面の回復は出来ないんじゃ?


『基本的には、な。

神以上の者であれば、精神面の傷も治せる…と、思う』


神でも治せるか分からないのか…。


『俺は治せるから問題無い。

流石の俺も、治せない傷を知り合いに与える事はせんよ。

基本的にはな』


死者の蘇生とかも出来たり?


『肉体があり、死因が除かれていればな』


やっぱ蘇生は覇王でも思い通りには出来ないのか?


『元の肉体で、対象が再び生命活動を始める事を蘇生と言うのだろう?

別に元の肉体でなくても構わないのであれば、やりようはある

俺が肉体を創り、死というショックにより歪んだ精神を元の形に直す。

そして対象の魂を再び入れれば甦ったと言えるだろう』


ゾンビ化とかしない?


『するか、阿呆。

ゾンビを作るには条件がある。

対象が生に執着している状態で死ぬこと、対象が生前保有していた魔力の倍以上を注ぐこと、そして蘇生の術式を失敗することだ。

そして俺は術式など使う必要がない』


なるほど、なら大丈夫そうだな。


『もし俺が失敗したら、世界ごと消えるから証言出来る奴は居ない。

安心しろ、苦しむ間もなく消し飛ぶから』


安心できるか!




「ねえ、僕の事忘れてない?」


あ、そういえば居たな。


「君、冷たいね…」


見捨てた負い目はあるが…あれを止めるのは無理だろ?


『ダークよ、気にするな。

こやつは始めから逃げていた』


え?


『俺が痛めつけていたのは、抜け殻みたいな物だ。

だから「要らんとは思うが」と言ったんだ』


「覇王《自分より強い美少女》に延々と痛めつけられるなんて、僕は確実に変な趣味に目覚めそうだから逃げたんだよ」


逃げた?

というか、やっぱり魔王も見た目に影響されるのか。


でも、確実にフルボッコにされてたし…。

反応もあったよな?


『俺が以前魔王に教えた緊急脱出の(すべ)で逃げたんだ。

簡単だぞ?

身体を捨てて逃げるだけだ』


え?身体を捨てる…?


『魔王もお前も、俺の人格に肉体を与えた存在と言っただろう?』


そういえばそんな事も言っていたような…それがどうしたんだ?


『つまり、お前らは精神的な存在としての姿が本来の姿だということだ。

分かりやすく言えば、お前らにとっての身体なんてのは乗り物みたいな物だ。

無くても、お前らは死なんぞ?

俺も肉体を持つ必要は無い』


……。


『もう少し説明した方がいいか?

俺の中にある数多の人格は、全て俺から独立して活動する事が可能だ。

だが、何もせずに俺から独立した場合、精神的生命体として動くしかない』


なんでだ?


『俺の人格の一つであるというだけで、個の生命体として生きていくだけの格はある。

が、肉体を持つ為の「核」が無い。

だから肉体が必要だと言う「人格」には俺が直接肉体を与えている。

魔王は暫く関わらない予定だったから、言われずとも核をやったがな。


この肉体を与え、俺から独立した人格の事を「端末」と俺は呼んでいる。

独立した人格の中でも肉体を持つ事を拒んだ者は、単に「人格」

と呼んでいる。

つまり「端末」の方が「人格」よりも狭義という事になるな。


まとめると、肉体など無くとも俺の人格として生まれた以上精神的存在として完成している。

だから本来は核が無いんだ』


魔王が肉体から抜けてたってんなら、肉体が反応してたのは?


『言っただろ?身体は乗り物みたいな物だと。

中身が逃げる際、身体には囮として何かしらの反応をするよう、仕掛けを施してある』


つまりは何か?魔王の死んだ魚みたいな目も、冷たくなっていた覇王の身体も、身体に組み込まれたプログラムが発動しただけということか?


『魔王はそうだが、俺はちゃんと肉体が死んでも肉体の中にいたぞ?

擬似的な体験とはいえ、俺が死ぬとはな…。

貴重な体験だった。


何故身体から出なかったか?

そうしないと、肉体が駄目になるからな。

知らないのか?

身体は死ぬと壊れ始めるんだ。

肉体一つといっても、俺らが入れる肉体を創るのは意外と面倒なんだぞ?』


……魔王、それから覇王。


「何かな?」

『何だ?』


手前ら……俺の純情をもてあそびやがって!

俺の魔王に対する同情と、覇王の為に流した涙を返せ!


「僕に他者の感情を操るスキルなんて無いよ?」

『涙だけと言わず、鼻水と涎も返してやろうか?』


ブチッ


宜しいならば神々の黄昏(ラグナロク)だ!


手前らが神だろうが、神を超える存在だろうが知らん!

ぶっ殺してやる!


『…あまり強い言葉を遣うなよ、弱く見えるぞ』キリッ


黙れラスボス!


「本当にいいの?」


何がだ!


「僕は覇王相手じゃ歯が立たないけど、この世界で最強クラスというのは事実なんだよ?

武力で君臨出来るように強い肉体を覇王がくれたし、戦闘経験だってあるんだよ?

勇者も3桁くらい返り討ちにしてるし」


…。


『本気で戦っていいのか?

大丈夫だ、安心していい。

俺と覇王の戦闘力を落とす。

肉体も、反射速度もお前と同レベルまで落とす』


あれ?何か急に腹痛が…


『楽しみだな、魔王。

戦闘力を落としても、普通の相手じゃ生物としての格が違い過ぎてまともに動かないからな…』


「僕も本当は、僕を前にしただけで動けなくなるような弱いものイジメばかりで嫌になっていたんだ」


えっ…何でそんなノリノリ…?


あっ、目眩も…


『それは大変だな!

「事象改変【完治】」

これで良し!』


ストレスで痛かった胃だけでなく、前の世界で度重なる夜更かしにより慢性化していた頭痛まで治っている。

…文句の付けようが無い健康体になってしまった。


ちくしょう…仕方がない、やってやらあ!




この後、死なない程度に滅茶苦茶ボコられた。


結局、職業サンドバッグかよ…。

『あースッキリした!』


「僕一人を相手にすれば、まだ手加減してあげられたのに…」


……。


(話すどころか、まともな思考も出来ないレベルで弱ってますm(__)m

そっとしておいて下さい)


『次はいつ戦うんだ?』


(…そっとしておいて下さいm(__)m)

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