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そんな馬鹿な話が……!

魔王の攻撃の前に覇王は倒れ伏した。

俺は何で一般人並みの力しかないんだ…。

何で動けなかったんだ…!

俺は何処から湧いてくるのか分からない程の涙を流していた。

時折、嗚咽を漏らしながらも動かなくなった覇王を必死に抱きしめる。


覇王はとっくに死んでいる。

俺の頭の冷静な部分はそう結論付けていたが、俺はどうしても信じられなかった……信じたくなかった。


この腕をほどいた瞬間、魔王が駄目押しの一撃を入れ、本当に覇王が死んでしまうような気がして、離れる事など出来なかった。

無力な俺が、覇王を守れる筈が無いのは分かってる。

それでも、俺は冷たくなった覇王の身体を守っているつもりだ。

何時までも。



『…うるさい』


大広間に、小さい、それでも確かな意思を感じさせる声が響いた。


『死にかけの女の身体を抱き締め続けるとは…。

ダークよ、俺はその程度で動揺せんが相手を撰べよ?

普通の女は、死にかけの所を大して仲の深い訳でもない男に抱き締められるなど、安心感の前に恐怖しか感じないだろうからな』


先程まで冷たかった身体に熱が戻る。

俺の、意地でも離すまいと必死に抱いていた腕を何でも無いように外して、覇王は立ち上がった。


『この身体は想像以上に弱いな…』


は?

今、コイツ、何て言った?


『この身体は弱いと言ったんだ。

魔王相手に一時間どころか20分も持たんとはな』


え…。


『む?まさかとは思うが、本気で俺が死んだとでも思っていたのか?

俺はてっきり、死にかけの女を抱き締める趣味でもあるのかと……』


心外だ!

俺はパラレ木さんの様な、猟奇的な性癖など無い!


あの肉体単体で見れば違法の、しかし幽霊対象の法は無いため最終的には合法の小学生相手に我を忘れる点は理解できなくもないが…。


『冗談だ』


そう言いながら目を逸らすのを、俺から離れるのを止めてもらえませんかね?


「ダーク君の姿には、僕も同情せざるを得なかったよ」


魔王…お前は分かってくれるか!


「ただ、僕にはオチが見えていたから録画はさせてもらったけどね?」


ファンタジーの世界だろ!?

録画とか何であるんだよ!


『安心しろ、機械ではない。

光と音を記録する魔方式を組み、その術式を魔核に刻み込む。

こうして創られるのが、魔王が持っている物だ。

俺以外には創れぬし、魔核自体も古代龍クラスの物でなければ術式に耐えきれず自壊する』


おお……思ってた以上にレアな物らしい。

ん?それって繰り返し使えるのか?録画時間は?


「使い捨てだよ?録画時間は一時間が限界だね」


『それ以上の物も創れるが…。

一時間伸ばす為には、そこの魔王殺して魔核取り出すくらいはしないとな?』


使い捨ては変わらないのか…。

てかさ?お前ら殺し合い……てか、一方的に殺そうとしてたじゃん?

何でそんな落ち着いてんの?


『ああ、そう言えばそうだったな』


「ダーク君……君ってやつは!」


ん?俺何かマズい事言った?


『いや、良く言った』


「流してくれよ!」


『断る』


ピンポンパンポーン♪

只今、大変お見苦しい光景が広がっております。

暫くお待ち…


「見苦しい光景ってなんだい!

そう思うなら覇王を止めっ」


バキッ!

怒涛のラッシュが魔王を襲う!

右ストレートが顔面に入った次の瞬間には左フックがボディーを捉える。

そして金的……っ!

それは見てる側も辛いから止めてくれ!


『サンドバッグが喋るな』


そろそろ許してやっても…


『ダークよ、もう一度サンドバッグになりたいのか?』


その言葉と共に放たれたローキックが魔王の右足を斬り落とした……え?

覇王が一撃入れると同時に、魔王の身体が欠損していく。


サンドバッグというか、血袋じゃ…。


『選べ!

①黙る

②サンドバッグになる』


それなんて絶対選択s


『どちらが良い?』


只今、大変お見苦しい光景が広がっております。

暫くお待ち下さい。


「薄情者!」


俺には何も聞こえない。

やめて!

このままじゃ魔王という化け物の頂点が、ただの物理で死んじゃう!

お願い、死なないで魔王!

あんたがここで倒れたら、アイリスさんはどうなるの?

ここを耐えても覇王には勝てないけどね!


次回「魔王死す」


デュエルスタンバイ!


「それマジのやつ!」


『それも良いな、代わりの者を考えておくか…』


「誰か助けてくれぇぇぇぇえ!!」

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