そもそも
何でお前ら戦う事になったんだ?
「ノリかな?」
『ノリだな』
魔王は、覇王に顎で使われるのが嫌とかじゃなかったか?
「顎で使われるのが嫌?
とっくの昔に諦めてるよ。
会ったのは久しぶりだけど、覇王からのお願いは普通に週1くらいの頻度で来てたからね」
覇王は、魔王が逆らって現地の者と繋がったのが不愉快だったんじゃ?
『面倒な世界の管理さえやってくれれば、俺から言うことは一つだけだ』
「何かな?」
『手を出したなら、責任取れよ?
支援はしてやるが、お前自身が動かなければ意味が無いからな』
「僕を何だと思ってるんだ…。
当然だよ、でもまだ手は出してないからね?」
手を出すまでは秒読みって所か?
『いや「手は出してない」ここに注目すべきだ。
イリスとやらを身辺警護と称して連れ歩き、人目の離れた時に「世話」をさせているのやも知れん。
挙げ句の果てには夜襲に対する対策と称し、寝室へ…。
汚らわしい!』
なるほど…。
魔王、鬼畜だな!
「君達本当に仲が良いね!」
それほどでも…
『あるな』
やはり、俺が覇王の人格の一つというのは確からしい。
覇王のノリが手に取るように分かる。
(ただしシリアスを除く)
じゃあ、魔王に入れ知恵した黒幕っぽい奴ってのもノリで考えた設定って事か?
「それは本当だよ?」
『まあ、魔王の得た情報はリアルタイムで俺に流れてくるから暗躍とかは意味無いんだけどな』
…魔王のプライベートは?
『魔王がその気になれば切れるから大丈夫だ』
黒幕、完全に覇王の手の平で踊らされてたって事か。
合掌。
で、その黒幕はどうなったんだ?
『どうなったとは?』
情報が覇王に筒抜けだったって事は、捕らえるなり、痛めつけるなりしたんだろ?
『魔王に処理は一任した』
「黒幕くんは、この大広間の天井からぶら下がってるよ。
僕と覇王を潰し合わせて、互いに弱った所を叩くつもりだったらしいんだけど…。
僕が本気で戦っても、覇王相手じゃ消耗させる事も出来ないって事を教える為に特等席を用意したんだ。
僕って本当に優しいね!」
うん、そうだな(棒)
天井を見上げてみたが、ぶっちゃけ人間の視力で細部を見るのは不可能だ。
魔王曰く、天井は地上何百mか分からないそうだ。
覇王が全部作った上に、ダンジョン化した影響で魔王城は広がり続けているらしい。
下手したら地上数kmかも知れない、と。
そうだ、覇王は論外として
『何故だ』
覇王は論外として…もし魔王が瀕死になっていたら、その黒幕に遅れを取る可能性は有ったのか?
「覇王から貰った魔核、これは要するに魔族にとっての心臓みたいな物なんだけど、これが砕かれていたら負けるだろうね」
『そうなっても直ぐに次の身体創ってやるから、結局黒幕とやらの思惑通りにはならんがな』
そうだ、黒幕の狙いって何なんだ?
『さあ?』
「さあ?」
おい。
『其処ら辺に掃いて捨てるほどいる、有象無象の考えなどに興味は無い』
「聞き出すのが面倒だったから、縛って吊るした他は何もしてないよ?」
そんなんで良いのか?支配者なんだろ?
『俺は全部神と人格に丸投げしてるから、問題ない。
まあ、俺と魔王が邪魔だったって所だろう』
「多分そうだろうね」
邪魔?
『俺と魔王の力は、人が相手取るには大き過ぎる』
「人がいくら鍛練を繰り返し、寿命を削って無理矢理身体を強化しても、神々からの加護を与えられたとしても、僕に勝つことすら不可能だよ」
『理由は二つだな。
一つ、人がいくら身体を鍛えようと、種としての限界につき当たる。
二つ、不意討ちで魔王を倒した所で、すぐに代わりの肉体で復活する』
無限再生するラスボスとか、運営ゲームバランス考えろよ。
しかも人間は強化上限有りって…。
『俺は生命体を創った際、制限を付けた覚えは無い。
つまり、限界を決めたのは奴等の方だ』
ノミの天井って事か?
そうだ、覇王が創った存在で思い出したんだが…。
神と人格ってどちらが上なんだ?
『個体により強さは異なる』
「覇王、それじゃ足りないんじゃないかな?」
確かに、もう少し欲しい。
『…魔王、後は託した』
覇王はそう言い残すと、既にボロボロになった魔王城の、それも比較的損傷が少ない壁を吹き飛ばして去って行った。
説明、面倒になったんだろうな…。
「壁直すの、ダンジョンマスターの僕なんだけど…」
分かっててやった、という事だけは分かる。
「ふう…。
神と人格にも個体差があるって説明したね?」
覇王がな。
「例えるなら、君が最初に会った女神」
女神の事も知ってるのか?
「まあね。
あの女神と、僕が戦えばどうなると思う?」
お前が勝つんじゃないのか?
女神弱そうだったし。
「だよね!?」
何だ急に…見れば大体そう思うだろ?
女神からは、お前から感じた威圧感みたいなの無かったし…。
「僕も、覇王に彼女を紹介された際そう思った。
だから、高圧的に話しかけたんだ。
ナメられたら駄目だと思ってね。」
それで?
「覇王が『上下関係決めるなら、殴り合いだろ?』と言って、戦う事になって…。
ボロ負けした」
は?
覇王は面倒な事は力技で解決したがるので、力で解決出来なければ逃げます。
『逃げたのではない、戦略的撤退だ!』
つまり、逃げました(  ̄▽ ̄)




