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樹上都市の森羅  作者: MAMIANA
第二章 消えた光
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第二章 消えた光 エピソード3

レイブンは少し考えてから言う。


「……それって、この区画だけの話なのかな」


エメリーはすぐには答えない。


視線だけを上げる。


作業場の端。

隣の通路。

さらにその先。


「確認する」


それだけ言って歩き出す。


ランドンが後に続く。


「広げるなよ、嫌な予感するから」


「広げない」


エメリーは即答する。


アシャが軽く笑う。


「でもさ、ここだけなら“偶然”で済むよね」


「偶然かどうかは、まだ分からない」


レイブンは小さく頷く。


「じゃあ……確かめよう」


作業場を出たあと、四人は少しだけ離れた枝の休憩スペースに移動した。


人の往来が減り、音も落ち着く。


エメリーは壁にもたれず、ただ立っている。


ランドンが腕を組んだまま口を開いた。


「で、さっきのやつ」


短い沈黙のあと、アシャが先に言う。


「あれ、スパークモスでいいの?」


エメリーは少しだけ間を置く。


「通常個体とは違う」


それだけ。


レイブンが小さく頷く。


「うん……私もそう思った」


すでに騒ぎは落ち着いている。だが、さっき起きた現象は“片付いた出来事”には見えなかった。


「一度整理する」


エメリーが言う。


アシャは壁にもたれながら指を動かした。


「スパークモスが暴れたのは分かるけどさ、あれ普通じゃないよね」


レイブンは小さく頷く。


「光の粒、いつもよりすぐ消えてた」


エメリーは短く言った。


「三つに分ける」


全員が彼女を見る。



① スパークモスの動き


エメリーは指で地面に簡単な図を描いた。


「通常のスパークモスは、光の粒に向かってゆっくり集まる」


ランドンが補足する。


「餌みたいなもんだな」


「今回は違う」


エメリーは線をもう一つ引く。


「粒が近づいた瞬間、速度が上がった」


レイブンが思い出すように言う。


「追いかけてきたみたいだった」


「そう」


エメリーは頷く。


「“反応が早すぎた”」



② 粒の消失


アシャが指を回す。


「で、あれね。全部消えるやつ」


エメリーは頷く。


「粒は作れる」


小さな光の粒を一つだけ作る。


それを指先の前に置く。


「通常は、周囲の流れに乗って動く」


粒はゆっくり漂う。


エメリーはそれを壁の方向に動かす。


「さっきはこれが——」


指を進める。


粒が壁に触れた瞬間。


「消えた」


ランドンが眉をひそめる。


「壊れたってことか?」


「違う」


エメリーは即答する。


「形は維持されたまま“消えている”」


アシャが目を細める。


「消えたっていうより、途中で無かったことにされた感じ?」


「近い」


エメリーは短く頷く。


レイブンが小さく息をのむ。


「じゃあ、粒そのものは壊れてないんだ」


「構造は残ってる」


エメリーは手を下ろす。


「結果だけが消えている」



③ 反応の不均一


エメリーは少し間を置いてから続ける。


「同じ操作でも結果が違う」


ランドンがすぐに聞く。


「どう違う」


エメリーはスパークモスとの場面を思い出す。


「アシャの粒は多いが消えた」


アシャが肩をすくめる。


「まあ、雑だからね」


「レイブンの粒は一瞬だけ持ちこたえた」


レイブンは自分の手を見る。


「……ほんの少し」


「そして私の粒も」


同じ結果だった。


「全て消えた」



ランドンが低く言う。


「つまり、誰がやっても結果は同じってことか」


エメリーは首を振る。


「違う」


全員が黙る。


エメリーは続ける。


「“通り方”だけが違う」



アシャが少し笑う。


「それ、どういう意味?」


エメリーは答えるまでに少し時間を置いた。


「同じ場所に入っても、違う抵抗を受ける」


レイブンが静かに言う。


「……道が違う?」


「道ではない」


エメリーははっきり否定する。


「出口が一つ」


ランドンが眉をひそめる。


「出口?」


エメリーは頷く。


「すべて、同じ結果に収束している」



一瞬、誰も言葉を出さなかった。


アシャがぽつりと呟く。


「それってさ」


いつもの軽さが少しだけ消える。


「“そうなるようにしてる”ってことじゃない?」


エメリーは答えない。


ただ、手の中に残った感覚を確かめるように、指を軽く握った。


レイブンが小さく言う。


「偶然じゃないってことだよね」


エメリーは短く言った。


「偶然ではない」



ランドンが空を見上げる。


「じゃあ、誰かがやってるって線は?」


エメリーはその言葉に、今度はすぐに答えなかった。


代わりに、さっきの壁を思い出す。


途切れた流れ。


戻ってこない循環。


「……可能性はある」


それだけ言う。

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