表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/14

あと4日─

どんなに寂しくても、悲しくても……


7月15日  


ガラガラ


教室のドアを開け自分の席に座る。


「はあ……」


「翼さんがいないからって、今日は元気がないですね。」


…そう。


まさかの、翼は学校をお休みだ。


さっき登校中の僕のスマホに連絡がきた。


理由は、体調不良。


昨日、海に浸かって冷えてしまったのかもしれない。


翼がいないから、僕にとってはとてもどんよりとした1日になりそうだ。


残り少ない日数だけれど、まだまだたくさんの思い出を作っていきたいから、早くよくなってくれ……。


僕はそう願うばかりだった……。


***


 部活が始まって数分。


「はあ………」


今日は本当にため息が多いな……。


…部活にも翼はいない。


まあ、もちろんのことなんだけれど……。


すると、みおが呆れた顔をして僕を見ているのに気がついた。


「はあ……。水輝…。今から翼のところ行ってきなよ。」


「え……?」


その隣で花凛もうんうんと頷いてくれる。


「今日、水輝くんずっと難しいような悲しいような顔しているから……。部活は私たち2人で大丈夫!!翼くんのところに行ってあげて!!!」


「2人とも……。」


…驚いた。


僕はものすごく顔に出ていたのか……。


2人が行ってきてとそう言ってくれてるんだ。


僕も会いたいし、お言葉に甘えようかな……?


「…っありがとう…!僕行ってくるね!!」


「「うん!」」


そう言って部室を出た。


***


 『翼、16:00くらいからお見舞い行っても大丈夫かな?』


「翼さん、大丈夫でしょうか……。」


隣でツクヨも心配している。


僕も体調が悪いと聞いた時は本当に驚いた。


いつもあんなに元気な翼が体調を崩すなんて…。


連絡を入れ、必要なものを買いに向かった…。


「熱が出ている時は、水よりポカリかな……?」


そう思いスポドリをカゴへ。


あとは念の為熱の時に飲む薬も入れておく。


「ん〜あと何か食べやすそうなもの……」


1番に目がついたゼリーも買っておく。


ついでに僕も食べようかなと2つ。


ゼリーをカゴに入れた瞬間スマホに連絡がきた。


『来てもらって大丈夫だ!わざわざありがとう!!』


翼から返信がくる。


僕は買い物を終わらせて翼の家に向かった。


***


 ピンポーンと家のインターホンを押す。


だけれど、翼からの返事もなければ、声や足音すらしなかった。


…おかしいなと思いもう一度インターホンを押す。


…でも、さっきと変わらず返事がない。


……もしかして家にいるのは彼一人かな…?


家にきていいとは聞いたけど、誰がいるとはそういや聞いていない。


じゃあ、家で一人だった場合……


「ドアが開いている……ごめん。翼、勝手に入るね……!」


そう言い僕は扉を開け急いで中に入る。


「翼ー!来たよーー?」


そう家の中を進み、見渡すが姿が見えない。その時……


「……っ!…水輝さん!!あっちです!!翼さんが……」


ツクヨが廊下側にこっちと案内するように促す。


…そして焦っているようにも見えた。


そして、廊下に出た瞬間、思わぬ姿を見る。


「……っ翼……!!!」


廊下で倒れてしまっている翼を見つけすぐに駆け寄る。


「翼!!大丈夫っ!動ける?」


翼は顔を赤くして、呼吸が乱れている。


おでこを触るとものすごく熱かった。


体調が悪いとは聞いていたけれどここまで熱が高いとは思っていなかった。


「…み、すき………?」


翼は、朦朧としている意識で僕を呼ぶ。


「うん。そうだよ。翼、部屋に行こう。」


少しでも安心させるように優しく言う。


僕の心も落ち着かせるように。


そう言って僕は翼を持ち上げ、彼の部屋まで行く。


そして、そっとベッドの上に寝かせた。


「翼、熱測ってもらっていい?」


と、僕はベッドの隣にあった体温計を渡し、測っている途中にさっき買ってきた薬の準備をする。


ピピピッと体温計から音がする。


「……38.5…℃……」


最後に測った時から上がってしまっているのか、少し驚きが入った声で言った。


「…高いね…。ここに薬とスポドリ置いてあるから、飲んで寝よっか。冷蔵庫使っていい?僕、他に買ってきたものを冷蔵庫に入れてくるね。」


と、部屋を出ようとしたその時だった…。


「…いか…ない…で……」


翼は、僕の服の裾をぎゅっと掴み、目には涙を浮かべている………。


僕は驚きながらもゆっくりと笑みを浮かべ、裾を掴んできた彼の手を握り返した。


「……大丈夫。ごめん。ずっと、そばにいるから。」


そう言い、ベッドの隣に椅子を持ってきて、翼は僕が買ってきた薬を飲む。


目を瞑るとすぐに眠りについた。


「翼さん……。」


彼の手を握っているけどものすごく熱い。


何か冷やすものがあれば……


「ツクヨ、タオル濡らしてくるから、代わりに翼見ていてくれる?すぐ帰ってくるから。」


「ですけど…私は翼さんには触れられないし、翼さんが目を覚ましても私の姿は見えませんよ?」


「………手が握れなくても、隣にいてあげてほしいんだ。」


「……そこまで言うなら、分かりました。」


そう言って、翼の隣に行く。


あ、ついでに冷蔵庫にゼリーも置いてこようかな…?


そう思い、僕はタオルとゼリーを持って翼の部屋を出た。


***


 部屋に戻ってきて四時間が経ちそうなところだった。


翼はまだ寝ている。


よっぽどしんどかったんだろうな………。


20時過ぎてきたから、翼の親がそろそろ帰ってくるかな…と思い始めているけれど、なかなか帰ってこない。


部屋を見渡すと、案外と物が少なくて…でも、ミュージカルのDVDや台本、スクールバックにいつも着ているカーディガンの姿もあった。


そういや、僕は翼のこと何も知らないな……。


急にそんなこと思い始める。


どうせ後から後悔にするなら、もっと彼のことを知ってみたかった。


…おでこにのせていた、タオルを触るといつのまにか緩くなってしまっていた。


もう一回変えてこようかなと、タオルを持ち上げた瞬間…


「…ん…?」


「あ、起こしてしまったかな?もう少し寝ててもいいよ。」


「もう、大丈夫だ…。だいぶよくなってきた。」


翼はそう言い、体を起こす。


よかった…。


一時は本当にどうなるかと……。


だけど、まだ少し熱はあるのか顔は赤いままだ。


「ゼリー買ってきているんだけど…食べる?」


「…ああ、ありがとう。じゃあ、いただこう!」


「分かった、持ってくるね。」


そう言って、冷蔵庫から2つゼリーを持ってくる。


「はい、どうぞ。ごめんね、お店にブドウ味しかなくて…。」


「大丈夫だ。本当にありがとう!ん?水輝も食べるのか?じゃあお揃いだな!」


ニコッと笑いゼリーをおいしそうに食べ始める。


彼はまだ体調が万全までは戻っていないのに…その笑顔が、なぜか眩しかった。


そして僕も一口。


冷蔵庫に入れていたおかげで冷えておいしかった。


「改めて本当にありがとう。スポドリやこのゼリーも買ってきてくれて……来てくれて本当に嬉しかった。」


……僕の心にジーンとくる。


寂しかったのかな?


そんな気もする。


だけれど─


「大丈夫。どんなに悲しくても、寂しくても、僕はずっとそばにいるから─」


そう言ったら、翼は少し安心したように笑った。


***


 「じゃあ僕はそろそろ帰ろうかな。」


時間は21時ちょっと過ぎ。


外はとっくの前に真っ暗だ。


結局翼の親は帰ってこなかったな…。


いつもこうなのだろうか…


「じゃあ、玄関まで送っていこ…」


「いいよ!?君はまだ熱はあるんだから!大丈夫だよ!?」


「そ、そうか…」


僕が少し強めに言うと翼は納得する。


まあ、翼にはゆっくり休んでほしいからね。


「じゃあ、またね。」


「ああ、ありがとう!またな!!」


僕が優しく手を振ると笑顔で返してくれる。


そして僕は部屋を出た。


 「お邪魔しましたー。」


一人でそう呟き家の外に出る。


その時、…僕の前に女の人が立っていた。


…顔がものすごく似ていて、僕はすぐに翼のお母さんだと気づいた。


そして、少しびっくりした声で、


「…君は………?」


と、聞かれてしまう。


…そりゃそうだ。


自分の知らない人が家から出てくるほど怖いものはないだろう。


「…脅かせてすみません。僕は翼と同じ部活の月岡水輝です。今日は、翼のお見舞いに来ていました。」


「……水輝……って…あ!いつも翼から話聞くよ〜!ありがとうね!」


16のお母さんにしては若く見えるくらいの童顔で、背が小さく、喋り方にも若さがあった。


「…で、翼はどう?……大丈夫そう?」


お母さんはとても心配そうに聞いてくる。


「翼は今自分の部屋にいます。夕方は38.5℃ありましたが、今は、37℃台までに下がっています。」


僕は状況を説明する。


その時、お母さんは安堵するように、よかった〜と言う。


「来てくれてありがとう!本当に助かったよ、水輝くん!!」


そう言って笑った。

改めて作品を読んでくださりありがとうございます。連載という形で投稿していこうと思っています。ノベルアップ+の方に作品を通して投稿してあります。ぜひ、そちらもよければ目を通してもらえると嬉しいです。次の投稿は1週間後を予定しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ