№ 80 ケレス、光よりの使者に従い、輝く花の下へ向かう
高杉が怒鳴るとほぼ同時に姿を見せたのはアマテラスの使いだった。
だが、そのアマテラスの使いの異変にケレスは気付く。
そんなアマテラスの使いは何処にケレス達を導こうと言うのか……。
「えっ? アマテラス様の使い⁉ だけど、何か弱ってないか?」」
高杉の怒鳴り声の後、ケレス達の前に空から舞い下り現れたのはアマテラスの使いだった。
だが、そのアマテラスの使いを見たケレスは驚いた。
何故なら、アマテラスの使いは何処から飛んで来たのかはわからないが明らかに光の強さはなく、
弱々しく飛んでいたからである。
そんなアマテラスの使いは、ふよふよ飛んでケレスの右肩に羽を休める様に止まった。
「アマテラス様の使い様、どうしたんですか?」
「随分、弱ってる。きっと、ヨルムンガンドの力のせいだね」
そのアマテラスの使いにケレスが尋ねるとアルトはアマテラスの使いを優しく見つめた。
「まあ、仕方がないよな。てか、先生。どうして、アマテラス様の使いがいる事がわかったんだ?」
「俺に光の力を寄越した張本人だ。こいつのマナぐらい、わかるさ!」
そして、眉が下がったケレスが高杉に目を転がすと高杉は眉間にしわをよせていた。
「はは。さいですか……」
そんな高杉に呆れたケレスの左口角はピクリと動く。
「でも、彼は何か言いたいみたいだね」
だが、アルトの冷静な声が聞えると、アマテラスの使いは羽を一度上下に動かした。
「本当だ⁉ しかし、アルトは相変わらず霊獣とかの心がわかるんだな……」
「で? 何が言いたい?」
そんなアルトにケレスは感心したが高杉は冷たい目でアマテラスの使いを睨みつける。
「そうですね……」
すると、そう呟いたアルトはアマテラスの使いをじっと見つめ、
「ノーアトゥーン山の麓の木に行きたいと言ってます」
と、真面目な顔でケレス達を見たアルトはアマテラスの使いの意思を伝えた。
ノーアトゥーン山とはニョルズを臨む広大な山の事である。
以前は優しい風がノーアトゥーン山からニョルズへ吹き降ろされており、
雪桜の園もそこにあった。
「今ので、わかるのかよ⁉」
「はぁ。さっさと行くか……」
そんなアルトにケレスは疑いの目を向けたが溜息をついた高杉はアルトの言う事を信じた。
(先生⁉ アルトの言う事は信じるのかよ!)
なので口に出さずにケレスは心の中でつっこんでしまった。
だが、それを隠したケレスはアルトに目を転がす。
「ノーアトゥーン山の麓の木って、何処のだ?」
「先輩がノーアトゥーン山の麓で最後に祈りを捧げた木みたいだ」
「姉ちゃんが祈ったのって……、あの焼け焦げた木だよな?
でも、あれは祟り神の残骸で、木じゃないんじゃないのか?」
「だけど、彼はそこに行きたがってる」
「そこにお前を連れて行ったら、ちゃんと導くんだろうな?」
ケレスがアルトと話していると高杉は疑いの目をアマテラスの使いに向けた。
すると、アマテラスの使いはもう一度羽を上下に動かし、
そして、羽を広げたままケレスの右肩でぐったりした。
「うわわ⁉ だいじょうぶですか?」
「ケレス、行こう!」
そんなアマテラスの使いをケレスは心配したがアルトに強く言われる。
そのせいでケレスの眉は下がった。
「わ、わかった……。けど、どうやってそこまで行くんだ?」
「浦島、頼むよ」
だが、ケレスの問いを無視したアルトが言うと、
リゲルの横にケレス達を全員乗せれる程に大きくなった浦島が姿を現した。
「相変わらず、何処でも浦島登場だ!」
そう言ったケレスが浦島に乗り込むと浦島はミラの港に向け出発した。
すると、ケレス達はミラの港に到着したが、言葉を失ってしまった。
何故なら、ミラの街が再び滅びに向かっていたのが一目でわかったからである。
「これは……」
「早く行くぞ」
「はい……」
そんなミラの街並みを見たケレスの顔は険しくなったが高杉は平然としていた。
そして、下を向いて返事をしたケレスは走って目的地に向かう事にした。
それからケレスが少しだけミラの街に目をやるとミラの街にはほとんど音は無く、
人はいたが、苦しそうに倒れているか、その場に座り込んでいる者達ばかりだった。
そんなミラの街並みを通り過ぎケレス達がミラの街の端まで足を進めた時だった。
「待ちなよ」
こんな声にケレス達は呼び止められた。
「ま、まさか……、ヨルムンガンド⁉」
「そうだよ」
その声に足が止まったケレスが辺りを警戒すると、少し離れた処に黒い霧が沸き上がる。
すると、その霧の中からヨルムンガンドが出現した。
「お前……、さっき、玉手箱に入ったんじゃないのか⁉」
「破片とはいえ、かなり持ってかれたが、我は無事だ」
ケレスの怒鳴りにヨルムンガンドは赤い舌をチロチロと上下に動かす。
「無事でなかった方が良かったよ‼」
「さてさて……。おふざけは、ここまでだ‼」
そして、またケレスが怒鳴ると目を見開いて叫んだヨルムンガンドからケレス達は睨みつけられた。
(しまった……。こいつに睨まれると、動けなくなる⁉)
そのヨルムンガンドの睨みにケレスは動けなくなり、
眉を顰めたアルトも動けずにいる様だった。
(このままじゃ、足手纏いだ‼ 先生だけでも先に行ってくれ‼)
そんなケレスはそう願い、高杉を見たが、
「グワオオォォッーーーーーン‼」
と、遠吠えと共に炎を纏った一体の朱雀がケレス達の前に颯爽と現れたのだ。
そして、その朱雀の炎から包まれたケレス達は動ける様になった。
だが、ケレス達を守った朱雀にケレスは見覚えがあった。
「お前は……、ハリス⁉」
そう、ケレス達を守ったのは、あのハリスだったのだ。
そのハリスの耳に付いている水晶は紅色に輝いており、
そこから零れた輝きがケレス達の周りにある炎に溶け込み、炎の強さを増している様だった。
「ハリス! お前が俺達を助けてくれたのか?」
「グワフン……」
そんなハリスに動ける様になったケレスが声を掛けると、ハリスから横目でチラッと見られた。
そのハリスの顔は呆れを全面に出している。
「凄い。これはハリス、君の力かい? 助かったよ」
「クーーン……」
だが、アルトには尻尾を速く横に振り甘えた声で鳴いた揚げ句愛しそうな目で見つめたのだ。
「俺とは大違いだな‼」
そんなハリスにケレスの眉間にしわが寄る。
「やれやれ、朱雀の炎の衣か……」
すると、ヨルムンガンドも不服そうな声で呟いた。
「炎の衣? そう言えば、オルトもああやって俺を助けてくれた……」
「グワオン‼」
それからケレスがオルトに助けてもらった事を思い出しているとハリスに吠えられた。
その声は何かを言いた気だったのでケレスは首を傾げる。
「何なんだ?」
「ケレス! 彼女が乗れって言ってる‼」
そのケレスの前でアルトはハリスの背に乗った。
「わ、わかった! けど、先生は?」
「もう、行っちゃったよ」
「えっ⁉」
そして、ケレスがハリスに乗りながら聞くと前を向いたままのアルトの背から声が聞こえる。
そう、ケレスがハリスに乗り込んだ時には高杉の背はかなり遠くに見えていたのだ。
「せ、先生‼ 置いてくな‼」
それからケレスがそう怒鳴った瞬間、炎を纏いハリスは駆け出す。
「ひ、ひええぇぇーー⁉」
ケレスは絶叫した。
それは試験の時より断然ハリスが速く走っているからだった。
そのせいでケレスの顔は引き攣った。
「ちょ、ちょっとハリス⁉ お前、試験の時より随分速くないか? しかも、荒っぽいぞ‼」
「文句を言わない! それに、彼女は手を抜いてくれてたんだ。
もし、試験の時 彼女が本気を出してたら、君は失格だったと思うよ?」
ケレスのつっこみにアルトの冷ややかな声が風に乗って聞こえる。
「僕の友人の非礼を許してくれ。君は荒っぽくなんかない。凄く乗りやすいよ?」
それから風に乗り優しいアルトの声が聞こえるとハリスはさらにスピードを上げ滑る様に走った。
(何なんだよ⁉どうせ、俺にはデリカシーは無いさ‼)
そんなアルト達のやり取りにケレスは剥れてしまった。
すると、ケレスの右肩に乗っているアマテラスの使いが羽を上下に動かしたのである。
そのアマテラスの使いにケレスは、そっと目を移す。
「……もしかして、俺を慰めてる?」
そのケレスの問いにアマテラスの使いはもう一度羽を上下に動かしたが、羽を広げ、ぐったりした。
「そんなに悪いのに……。気を使わせてしまって、すみません……」
その反応にケレスが肩を落とすと、
「ケレス! 見えたよ‼」
と、アルトの叫び声が聞え、ケレス達の前にあの焼け焦げた大木の跡が見えてきた。
その焼け焦げた大木は以前見た姿のままの状態で存在し、
ハリスはその焼け焦げた大木の前まで突っ走った後止まった。
それからケレス達が降りると、ハリスはケレス達に背を向ける。
「ハリス?」
そんなハリスを不思議に思ったケレスは声を掛けたがハリスは背を低くし、威嚇を始めた。
そう、その威嚇の先でヨルムンガンドが赤い舌をチロリと覗かせていたのだ。
そのヨルムンガンドは目を鋭くし、数メートル離れた処から睨んでくる。
「やぁれやれ……。朱雀の番兵よ、まだ我の邪魔建てをすると言うのかね?」
「グウウゥゥ……」
だが、唸ったハリスは炎の衣を出現させ、ケレス達の前に炎の壁を作ったのだ。
「ハリス⁉ 何をする気だ‼」
「おいっ‼ さっさと、その蝶を近づけろ‼」
その炎の壁の向こうにいるハリスにケレスは近づこうとしたが高杉から怒鳴なれた。
その声にケレスは眉を顰める。
「先生⁉ けど、ハリスが……」
「ケレス! 彼女の気持ちを考えるんだ‼」
そのケレスが高杉を見ると語気を強めたアルトからも言われ、
「ああ、わかった!」
と、言ったケレスは両手にアマテラスの使いを包み、焼け焦げた大木に近づけた。
すると、アマテラスの使いはケレスの手から離れ、
ふらふら飛びながらも焼け焦げた大木の割れ目に入って行った。
そして、ケレス達がアマテラスの使いが入って行った割れ目を覗き込むと、
数枚の緑色の葉が生えた小さな枝が生えており、その葉の間に小さな白色に光る花が咲いていたのだ。
その光る花を見たケレスは思わず叫んでしまう。
という事でねケレス君!
久しぶりのアマテラス様の使いの登場だよーん♪
さらにハリスちゃんも登場だ!
そして、しつこいヨルムンガンドの襲来……。
果たしてケレス君が何を見て叫んだのか?
それがわかる次話のタイトルは、
【】ケレス、白き霧を抜けた先の世界で思わぬ人物と再会するだ!
さぁて、誰と再会するでしょうか?




