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№ 92 ケレス、風馬の背に乗り舞い上がり、空を駆け姉の下へ走る

 ゴンズからスルドの正体を明かされたケレスはグラニューの背に乗り、姉の下へ向かう。

 そんなグラニューの背に乗ったケレスはラニーニャを救出すべく空を駆けていた。

 だが、ケレスは、ふと気になる事が出てきたのだ。

 そして、それ等を尋ねたケレスはオサ達から次々と世界が知らなかった真実を知らされていく……。

「はん! お前さ、自分の国の守り神の名ぐらい知らねえのかよ!!」

 スルドという名に首を傾げているケレスの前でゴンズは姿勢を低くし毛を逆立てて睨んできた。

 そう、ゴンズが言うスルドとはフィードの事だったのである。

「じゃあ、フィード様がスルト様なのか!?」

「そうです。彼は私と同じで人の子から名をもらったのです」

 驚いているケレスを優しい瞳でグラニューは見つめる。

 その瞳の上にある黒いまつ毛がさらっと風に靡いた。

「じゃあ、何でフィード様は救いの神子である姉ちゃんを連れて行ったんだ!?」

 守り神であるフィードが救いの神子であるラニーニャを傷付ける事等有り得ない。

 その矛盾をケレスはグラニューにぶつけた。

「喜蝶を殺す為だろうよ?」

 だが、ゴンズは毛を逆立てたまま恐ろしい事を口にしたのだ。

「どうしてだよ!! だって、精霊神なら姉ちゃんが救いの神子って知ってんじゃないのか!?」

 納得出来るはずがないケレスは大声で怒鳴る。

「あの娘を餌にし、あの娘諸共 災い蛇を消滅させる気じゃろうな……」

 すると、コルネフォロスの上にいるオサが静かにその理由を答えた。

 ケレスは今までの話を頭で整理したがやはり納得出来ない事があった。

「訳わかんないよ……。

 姉ちゃんは救いの神子で、それは精霊神様達ならみんなわかってるはずで……。

 なのに、フィード様は姉ちゃんをヨルムンガンドごと殺そうと考えるなんて……おかしいよ!!」

 ケレスはそれを口にした。

 どう考えても納得が出来る訳がない。

「それはの、スルトはヒロとかいう人の子の願いを叶え様と考えてるのじゃ」

 だが、ふよふよと浮遊し続けている青龍がその理由を話した。

「殿下の願いだって?」

「うちにもその気持ちは少しじゃがわかる。惚れた者の願いは叶えたいものじゃから。

 じゃが、うちは間違った事はさせぬがの!」

 首を傾げるケレスに青龍は補足した。

「じゃあ、殿下が姉ちゃんを囮にって考えてるのか!?」

 そして、ケレスはヒロとのやり取りを思い出す。

(そう言えば、殿下は昴の奴等の言う通りって言ってた……。

 殿下は、明石さんの言葉だけを信じた……そして、フィード様は殿下の願いを!?)

 すると、この答えに辿り着いた。

「殿下を停めなきゃ!! 姉ちゃんを助けるんだ!!

 ヨルムンガンドなんかに姉ちゃんを渡すもんか!!」

 ケレスは声をあげる。

「どうやって? 人の子風情のお前に何が出来る?

 ちなみにな、ここは剣の国の悪い奴等に囲まれてるぜ?

 特に人相の悪いおっさんがお前を捉えるって、はりきってんぞ?」

 だが、ゴンズから馬鹿にされた。

「そ、それは……」

 答えに困ったケレスは下を向いてしまう。

 ……ググッ!

 ケレスは握った両拳に力を込める。

「お願いします!! 姉ちゃんを助ける力を俺に貸してください!!」

 そのケレスはさらに頭を深く下げて精霊神達に頼み込んだ。

 ……ふわり。

 ケレスの髪が優しく靡いた。

「私が力を貸しましょう」

 そのケレスの近くでグラニューの声が聞える。

「グラニュー様!? 協力してくれるんですか?」

 勢いよく顔を上げたケレスは目の前にいたグラニューを見つめた。

「私の背に乗りなさい。スルド殿を追いかけましょう!」

 グラニューは長いまつ毛の間から優しい瞳でケレスを見つめる。

「あ、ありがとうございます!」

「きひひ。いいのかい? 爺さん、あの人の子を放っておいても?

 本当は、とぉっても心配してるくせによぉ?」

 ケレスがグラニューの背にまたがるとゴンズは悪戯な顔でオサを、チラッと見た。

「ぐぬぬ……」

 そのオサはどうすべきか迷っていた。

 体を小刻みにふるわせている。

「ここは、うち等に任せよ」

 そのオサの背を青龍は押す。

「グモオオォーーーーーーー!!」

 ベコも叫びオサの背を押した。

「わかったわい!!」

 すると、怒鳴ったオサは、ピョンッとケレスの頭に乗る。

 ピョンピョンッ! ピョーンッ!

 ケレスの頭の上から伝わる懐かしい刺激。

「これで満足か、小童!!」

 勿論それはオサがケレスの頭の上で飛び跳ねている刺激だった。

 そのオサは怒鳴る。

 「だああぁ!! オサ殿、それそれぇ!

 頼む!! 一緒に姉ちゃんを助けてくれ!!」

 涙目のケレスは笑った。

 ガシッ!

 そのケレスの頭に伝わるあまり覚えのない感覚。

「のわあーーーぁっ!?」

 それは、たぬてぃがオサを押さえ込んだせいだった。

 オサの叫び声がサダクビア城に響く。

「行きますよ」

 それからグラニューの掛け声で優しい風に包まれたケレスは

数粒の涙を落として空へと舞い上がった。

ー●

 そんなケレス達を乗せたグラニューは風を切る様に進んでいた。

 周りの風景が凄い速さで流れていく。

 だが、その中では不思議な事に風を全く感じる事はなかった。

 その世界で鬣を靡かせグラニューは空を流れる様に駆けていた。

「ところで、何処に行くんですか?」

「イザヴェルじゃ!」

 ケレスの問いにオサがケレスの頭の上で、ピョンピョン飛び跳ねながら目的地を答えた。

 オサが流れる空の上でこんな事をしても地上と全く変わらない。

「何とかそこまでには追い付きたいけど……」

 そして、眉を顰めたケレスは呟いた。

オサ殿……そもそも、どうして姉ちゃんは救いの神子なんだ?

 姉ちゃんは何から何を救うって言うんだ?」

 そのケレスは、ふと思った事を静かに口にする。

「それはわからぬ。じゃが、災い蛇を倒すにはあの娘の力は必ず必要なんじゃ。

 あの娘が、あの御方の生まれ変わりである限りな……」

 すると、オサは物思いに耽る様に話した。

「あの御方って、誰の事だ?」

「……人の子の言葉で言う、初代救いの神子じゃ」

 ケレスの問いに答えたオサは深い溜息をつく。

 ……ブルルッ。

 ケレスはまた知ってしまった真実に身震いした。

 そう、今まで普通に接してきた姉であるラニーニャは本当は雲の上の手の届かない人物だったのだ。

 そんな事実を知ってしまったらこうもなってしまうのは仕方がない事だった。

「姉ちゃん……そんな凄い人だったんだ。

 普段そんな風には見えないのに……」

 そんな姉であるラニーニャとの思い出をケレスは振り返る。

「じゃろうな……あの娘は、ダーナの祈りの力を嫌っておったからの。

 人前では使わぬ様、極力隠しておったわい」

 すると、オサから新たなラニーニャの心を教えられた。

「まあ、あんな酷い目に合ってたんだから仕方がないよ」

「じゃの……」

 眉を顰め俯いたケレスに悲しそうに呟いたオサの声が聞こえた。

「でも、オサ達は姉ちゃんを支えてくれてたよ……」

 だが、ケレスもそう呟く。

「それは小童達、人の子達もそうであろう? あの娘が誰と知らずとも傍で守っておった……」

「……だと思う」

 そんなケレスはオサから言われ朗らかな顔で言う事が出来た。

「ところでオサ殿。青龍様は何を任せろって言ったんだ?」

 すると、ケレスは、ふとその事を思い出した。

 なのでつい聞いてしまった。

「ふぬ? 青龍とは、あのプッツン龍の事かの?」

 オサは嫌味な言い方で答える。

 ピクピク……!

 ケレスの左口角が動き出す。

 聞いてはならぬ言葉を聞いたせいだ。

オサ殿……それ、聞かれたらまた、あの日みたいになるぞ?」

「そうじゃな」

 そのケレスの前でオサは全然悪怯れる」様子はなかった。

 ゴソゴソゴソ……ストンッ!

 ケレスの頭の上で動き出したオサ

 移動を始めたかと思うとその場で座り方を変えただけだった。

「サダクビア城にはあの娘の力が豊富にあるのじゃ」

 そして、座り直したオサはそう話を続ける。

「姉ちゃんの力? どういう意味だ?」

「簡単に言えば、救いの力じゃ」

「それって、俺達を守ってくれてた力と同じか?」

 ケレスの脳裏にヨルムンガンドとの色々な対決が思い出された。

「それもその一つじゃな。

 じゃが、あそこにあるのはそれだけでなくあの娘のダーナの祈りの力全てじゃ。

 そう、災い蛇の力が全く通じぬ程のの。

 じゃから、サダクビア城は何事もなくおれたという訳じゃ」

 そのケレスの頭にオサが頷く振動が伝わる。

「その力はサダクビア城、いや、剣の国にはあった。でも……」

 だが、ケレスはまた考え込んでしまった。

 今、世界でこうやって無事でいられているのはケレス達と氷月ビンユエ達 剣の国の全て。

 つまり、ラニーニャはケレス達と剣の国の為には無事である事を祈ったが、

ケレス達と剣の国以外の為には祈らなかったという事になる。

 だからケレス達と剣の国以外は、ああなった……。

 恐らく、ラニーニャはその事を知っていたにも関わらず祈らず、祈ろうとも思わない。

 それは、ケレスが知っている姉のラニーニャなら有り得ない事だった。

 そう、ケレスが知っている誰にでも優しい姉のラニーニャ……。

 そんなラニーニャが苦しんでいる人がいても平気な顔をしている。

 もう今のラニーニャはケレスの知っている姉のラニーニャではないのでは?

 そんな考えがケレスの頭を過ぎったのだ。

 だが、ケレスはこの後、オサから忘れていた大切な事を教えられる。

 ケレス君! スルドが誰だかわかって良かったね!

 さて、そんなスルド達を停める事が出来るか……。

 これからの話の重要なポイントとなる!

 それが出来たかどうかがわかる話に繋がる次話のタイトルは、

【ケレス、風馬の背に乗り陽が戻った真相の語りに耳を傾ける】だ!

 まだまだ君は空を駆けるんだよ~。

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