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№ 91 ケレス、神神との対話で世界の秘密を知る

 ケレスに優しい声を掛けたものが姿を現した。

 そして、そのものを前にケレスが目を丸くするとまたそれに近いものが姿を見せる。

 そんな彼等からケレスは一七年前に起こった悲劇を聴かされるのだが……。

「……それは違うのじゃ」

 優しい声が何処からか聞こえる。

 その声は女の声だった。

「今度は誰だよ!?」

 まだアマテラスへの怒りが静まらないケレスの目には涙が残っていた。

 そんなケレスはその声に向けそう怒鳴る。

 だが、ケレスの周りにはその声の持ち主は見当たらなかった。

「えっ? 気のせいだったのか?」

 首を傾げるケレス。

 そんなケレスの前の空間が風もないのにまるで水面が風で揺れる様に歪み出す。

 その歪みは段々とはっきりとするものになり、渦を巻きながらある姿へと変わった。

 そう、その姿は透き通る中に吸い込まれる様な青色がある五十センチメートル程の長さの

美しい龍だったのだ。

 その龍の太さはケレスの前腕程で首元に一点だけ赤い部分があり、宙に浮かんでいたのである。

「へっ!? ま、まさか、あなたは青龍様?」

 その龍を見て涙が止まったケレスの口から言葉が漏れる。

「そうじゃ。うちは青龍。よくぞ名を知っておったの」

 青龍は、ふよふよと浮遊しながらケレスに近づいて来た。

「今こそ話そうぞ。あの悲劇の日を……」

 そして、青龍はケレスに一段と美しい青色の瞳を向けて何かを話そうとした。

「こぉーれ!! その様な事を教えんでも……」

 そこにオサの邪魔が入った。

 オサはコルネフォロスの上から声を張り上げたのだ。

「黙れ」

 だが、その一言だけ言った青龍がオサを睨むと

オサは石の様に固まってしまい、それ以上何も言えなくなってしまった。

「ほほほ……全く、頑固鼠の爺様には困りますわ」

(うわぁ……あの日の出来事はやっぱりこの方のせいだ……)

 それから満足そうに言った青龍から見つめられたケレスの左口角はピクピク動く。

「さて、邪魔者は黙らせた。話しても良いの?」

 そして、青龍に聞かれたケレスは何の迷いもなく頷いた。

「あの日、アマテラス様から告げられた救いの神子は、お主等の姉じゃ」

 静かなサダクビア城に青龍の美しい声が響く。

 ケレスは、一瞬時が止り、頭の中が真っ白になってしまった。

 青龍が言った言葉の意味がわからなかった。

「……もう一度 言ってもらえませんか?」

 なので、時が動き出したケレスは瞬きせずにそう言った。

「もう一度じゃと? アマテラス様は喜蝶様こそ、救いの神子と告げられたのじゃ!」

 すると、青龍の語気は強まった。

「じゃあ、何で姉ちゃんが災いってなってんだよ!?」

 その青龍に声を荒げたケレスが詰め寄った時だった。

「それは人の子が己の願望の為、喜蝶様が災いであると偽りを告げたからです」

 優しい男の声を乗せた風が渦を巻き、馬の姿へと具現化したのだ。

「グラニュー様!?」

 そう、それは紛れもなくグラニューだった。

 ケレスが目を丸くするとグラニューは静かに話し始める。

「昴の長老、明石は己の生まれてくる娘こそが救いの神子だと信じていたのです。

 そして、ラタトスクの一族、出雲殿が告げた内容を曲げてまでも

己のが娘を救いの神子に仕立て様と考えたのです。

 その野望の為、本物の救いの神子である喜蝶様が邪魔になり殺そうと考え、

揚げ句の果てに出雲殿までもを殺したのです」

 グラニューが話している間、皆 口を閉ざして聴いていた。

 そして、グラニューが話し終えても誰も暫くの間、口を開かなかった。

 開ける訳がない。

 こんな浅はかな理由で世界がこんな状況に陥ってしまったのだから……。

「ちょ、ちょっと待ってくれ!! 出雲って、まさか うさ爺の事ですか?」

 だが、最初に口を開いたケレスは静寂を破りグラニューに詰め寄った。

「そうです」

「じゃあ、うさ爺が殺されたっていうのは!? 俺達の前にいたうさ爺は誰なんだ?」

 落ち着きあるグラニューに対しケレスは落ち着きなかった。

 当然である。

 頭の整理がつく訳がない。

「彼は、殺された。しかし、ノルン殿の力により蘇ったのです」

 そのケレスに優しい声のグラニューは驚愕の事実を打ち明ける。

「ノルン? それって、ビフレスト山の四大精霊神の、ノルン様ですか?」

「そうじゃ。ノルン殿はラタトスクと共に生きてきた精霊神じゃ。

 ラタトスクとアマテラス様とを繋ぐ役割があっての」

 ケレスとグラニューの話に青龍が入ってきた。

 その青龍にケレスは視線を移す。

「あの出雲とかいう人の子は明石にアマテラス様の意志を伝えると、明石により首を斬られ息絶えた。

 じゃが、その死に際、出雲は望んだ。

 喜蝶殿を守り、必ずや救いの神子へと君臨させる事を……。

 その意志にノルン殿は共感し、己の命と力を出雲に捧げたのじゃ」

 ケレスの前で青龍は一七年前の真相を話した。

「どうしてそんな事がわかるんですか!?

 だって、グラニュー様は以前はニョルズの守り神で昴にいた訳じゃないのに?

 青龍様だって、水鏡の泉にいたんだし……。

 そ、それに、ノルン様が うさ爺に命を捧げたって……じゃあ、ノルン様は、どうなったんだよ!?」

 だが、グラニュー達の告げた真実が信じられないケレスにまたいくつかの疑問が浮かんだ。

「私の力は風の力。風に乗り、この世の全ての情報は私の耳に入るのです」

 すると、グラニューはケレスの疑問を一つ払拭する。

「ノルン殿は禁忌を侵した故、死んだのじゃ」

 そして、青龍はもう一つの疑問を払拭した。

「じゃ、じゃあ、そんな下らない事で姉ちゃんは……。

 それに、うさ爺も……?」

 一七年前の真相を知ったケレスは言葉を失った。

 あまりにも身勝手すぎる明石の野望を知って愕然となったのだ。

 そんなケレスの耳にこんな会話が流れ混んで来る。

「じゃから、教えんでも良いと言うたんじゃ!!」

「じゃが、人の子の醜さを知らぬままでは、悪かろう?」

「ですが……」

 その会話では怒っているオサはベコの上で飛び跳ね、青龍は嬉しそうに笑い、

グラニューは困っている様だった。

 そして、いつまでも大して変わらないそんな会話を彼等は続けた。

 ふるふるふる……。

 体がふるえ出す。

「ふうぅ、ふうぅ……」

 呼吸が荒くなる。

 腹の底から怒りがケレスに沸き上がってくる。

「みんな馬鹿だ!! お前等、神様なんかじゃあねえ!!」

 ケレスはそんな彼等に向け、声を張り上げて怒鳴った。

 溢れ出した怒りをぶちまけたのだ。

「なむ!?」

 そのケレスを同時にそう言った青龍とオサは睨みつける。

 グラニューは無言で長いまつ毛の間から悲しい瞳を向けた。

「昔の事は、人が悪い。今回だって、殿下を止められなかった俺達が悪い……。

 でも、今何もしないんじゃ、みんな一緒だ!!

 姉ちゃんが誰だろうと、どうして姉ちゃんを助け様と思わないんだ!!

 グラニュー様、あなた様は何て仰いましたか?

 姉ちゃんと共に生きるって仰ったじゃないですか!!

 オサもそうだ! 中途半端に姉ちゃんを助けて何がしたいんだ?

 青龍様だってそうだ!! あなた様の暴走を止めたのは誰ですか!!

 みんな姉ちゃんに助けてもらっておいて、どうして姉ちゃんを助け様と思わないんだ!!」

 サダクビア城の一角にケレスの思いを乗せた声が響き渡った。

 ケレスは真直ぐ彼等を見ながら思いを伝えたのだ。

 すると、

「グモオォーーーーーーーー!!」

と、ベコはケレスの思いに共鳴するかの様に叫んだ。

 ……ヒューーーン。

 それから静まり返ったサダクビア城の一角に響く高い音。

 その音は段々ケレスに近づいて来る。

 ボコッ!

 そして、何故かケレスの頭に走った衝撃。

 そう、何処からか飛んで来た硬い物がケレスの頭に直撃したのだ。

 直撃した何かはそのまま落ちる。

「い、痛い!?」

 叫んだケレスが辺りを見渡すとケレスの足元に氷の礫が落ちていた。

「きひひ、命中だ!」

 すると、こんな悪戯な悪ガキの声が聞えた。

「ゴ、ゴンズ様!?」

 その声の主を見て叫んだケレスの目は丸くなった。

 そう、そこにはゴンズがいたのである。

「よ! 久しぶりだな。まあ、人の子、あんまり爺さん達を虐めなさんな。

 何だかんだ言っても爺さん達は喜蝶をここで守ってたんだぜ?」

 ゴンズは得意気な顔で軽く鼻を上げた。

「どういう意味ですか?」

「人の子、良く聞け!

 夜は闇の女王が、明るい時は俺と青龍の姐さんの力で毛嵐を発生させ決壊を張り、

喜蝶の姿を隠してたんだ。

 さらに馬の兄さんの力で喜蝶の噂さえも何処にも聞こえねえ様にしてたんだ!」

 首を傾げたケレスにゴンズは得意気な顔のまま隠されていたサダクビア城の秘密を話した。

「毛嵐だって!? じゃあ、あの白い霧はゴンズ様達の力って事か!」

 納得したケレスは頷く。

「だが、馬鹿な月の瞳の奴等がそれを消しやがった!

 だから、スルトなんかに喜蝶の所在を気付かれちまったんだ!!」

 そして、怒鳴ったゴンズは全身を膨らませた。

「……スルトって、誰だ?」

 だが、ケレスはまた首を傾げてしまった。

 そう、ケレスはスルドが誰だか知らない。

 そんなケレスにスルドの正体をゴンズが明かすのだがそれはまさかの正体だった。

 いやぁ~ケレス君は今回も声を張り上げたね♪

 凄いね! この世界の神々に物申すなんてさ!

 君も立派になったもんだ♪

 そんな君は次回で『スルド』の正体がわかるよん!

 さて、『スルド』とは誰の事でしょう?

 それがわかる次話のタイトルは、

【ケレス、風馬の背に乗り舞い上がり、空を駆け姉の下へ走る】だ!

 うんうん……また長々しいタイトルだ事!

 てか、ケレス君は次話で空を飛ぶのかね?

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