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№ 93 ケレス、風馬の背に乗り陽が戻った真相の語りに耳を傾ける

 ケレスはグラニューの背でまた新たな真相を知った。

 そして、ラニーニャがケレスへ抱いていた思いも……。

 そんなケレスは再度皆でラニーニャを助けると誓う。

 すると、またもやグラニューからあの者との話を聞かされ……。

「小童よ、悩まんでも良かろう?

 あの娘の祈りの力とは、救いの力。あの娘が救いたいと願えば発動する力じゃ。

 この一年程、あの娘はツンコオリと、機械者キカイモンに感謝しておった。

 あの娘が深く感謝し大切に思っておった二人が大切にしておったサダクビア城、

いや、剣の国ごと守りたかったのは当然な事じゃて」

 風に乗り、こんなオサの優しく諭す言葉が悩むケレスの耳に届いた。

 そのケレスはグラニューの背に乗り空を駆けていた。

 どのぐらいの高さだろうか?

 ほぼ一瞬でここまで舞い上がったのではっきりと見ていないが山よりはるか高い所にいる。

 いや、その上の雲よりも高い所をグラニューは駆けている。

 決して下を覗いてはいけない。

 手足の裏がかゆくなる。

 それに、きっと吸い込まれてしまう。

 それがわかっているケレスは真直ぐ前だけを見ていた。

 そのケレスの耳に先程のオサの声は、はっきりと届いた。

 そのオサ以外の音は聞こえない。

 さらに風の抵抗も感じず、普通に呼吸も出来ている。

 相変わらず不思議な事ばかりだった。

「そっか……」

 だが、ケレスの視線が下がっていく。

 思いつめてしまう。

 そう、ラニーニャはやはり以前のラニーニャではない。

 その考えが頭から離れないのだ。

 ……ピョンッピョンッ! ピョーンッ! ピョンッ!!

 ケレスの頭の上で飛び跳ねているオサの刺激が伝わる。

 きっと、髪は滅茶苦茶になっている。

「こおーーれ!! その大切なものの中に小童達もおる事を忘れるでないわ!!

 小童がその様な顔ばかりしておると、またあの娘が泣くぞ?」

 そこで怒鳴るオサ

 その声が耳に響き少々痛い。

 だが、そんなオサからケレスはまた大切な事を教えられたのだ。

「はは……そうだった!」

 そのオサのおかげでケレスはラニーニャはやはりケレスの知っているラニーニャだと思えた。

 そう、ケレスの知っている姉のラニーニャは泣き虫で臆病だ。

 だがその分、人の気持ちがわかる優しい心の持ち主である。

 そんなラニーニャだからこそ、自身が大切にしているものの為ならどんな事でもする。

 だから、ケレス達や氷月ビンユエ達の為には祈れたのだ。

 だから、ケレス達だけが無事で入れる世界でいる状態になってしまった。

 やはり、ラニーニャは何も変わってない。

 それがわかったケレスは笑ってそう言えたのである。

 視線も下がる事なくまた真直ぐ前だけを見据えた。

「ふむ! わかれば良いのじゃ!!」

 どうやらオサはその事に満足した用だった。

 その声がそれを物語っている。

 そして、たぬてぃはケレスの右肩でそのオサを上目で見つめており、

グラニューの鬣は靡き、そんな彼達に囲まれているケレスは気合いを入れる様に頬を数回叩いた。

「なあ、オサ殿。俺、思うんだ。

 ヨルムンガンドが姉ちゃんの力を恐れて、こんな風に世界をもっていったんじゃないかって」

 そのケレスは思った事を口にする。

「ふぬ? その心は?」

「だから、ヨルムンガンドは姉ちゃんさえいなければこの世界で威張って生きれると勘違いしてんだ。

 そして、明石さんに変な事を吹き込んで、姉ちゃんを排除しようって考えたんじゃないか?」

「ほーう。小童にしては、良く考えたの!」

 ケレスの考えにオサは納得した。

「だろ? じゃなきゃ、おかしすぎるよ!!

 だから、絶対にあんな奴の思い通りなんかにさせたくない!!」

 ケレスは決意を口にした。

「ほほう!? 小童だけに良い格好させぬわ!」

 オサは何度も飛び跳ねて気合いを入れる。

「私も、お忘れなく!」

 そして、グラニューも頼りになる言葉を発し、

たぬてぃはケレスの右肩で気合いを示す様に大きく鼻息を出した。

「みんな、姉ちゃんを助けるぞ!!」

 そう言ったケレスは彼等とさらに強くそう願い、イザヴェルへと向かった。

 それからグラニューはさらに速度を上げて空を駆けた。

 周りに見える空の世界が停まって見える。

 それに伴い近づくイザヴェルにケレスの鼓動はどんどん速くなっていく。

(姉ちゃん、どうか無事でいてくれ!! そして、一緒にヨルムンガンドを倒そう!!)

 強く、そして早く鼓動する胸に手を当てたケレスはそう願った。

「なあ、オサ殿、今までの話を合わせてもわからない所があるんだけど……」

 だが、来るべく戦いを前に気になった事があったケレスは口を開いた。

「何がじゃ?」

「姉ちゃんがアカマルトウからどうやって剣の国に行ったのか。

 それと、一七年前 大恐慌が終わった本当の事……。

 いや、そもそも何で大恐慌は起こったんだ?」

 ケレスは今気になっている事を全て口にする。

「ふむ……あの娘が何故、剣の国に捉えられていたのかはわからぬのじゃ」

 オサの口からはその答えは出なかった。

「グラニュー様でもわからないんですか?」

 ならばケレスはグラニューに尋ねる。

「すみません。喜蝶様がアカマルトウへ連れられた事までは風に乗って情報は耳に入ったのですが……」

 それでもその答えはわからなかった。

「恐らく、あの子猿の仕業じゃろう」

 そこにオサの補足が入る。

「子猿って、ヘイムダルの事か?」

 ケレスの頭にヘイムダルの憎たらしい顔が過ぎった。

 そう、腹立たしい限りのヘイムダルが眼鏡を上下し、ニタリと笑う顔。

 どんどんケレスの眉間にしわが寄っていく。

「そうじゃ。あの子猿は音のマナを操る。

 風馬の耳に入らぬ様にする事ぐらい赤子の手を捻るより簡単な事じゃろうて」

 オサの語気は強まった。

「ええ。ですが、先代の私がヘルヘイムで捉えられていた喜蝶様を助け出しました」

 グラニューが話を戻す。

「それって、一四年前にヘルヘイムが滅んだ時の事ですか?」

「そうです。あの時、ヨルムンガンドは喜蝶様を狙っていました。

 それを感知し、先代の私はヨルムンガンドより先に喜蝶様を救ったのです」

 ふわりと風が起こり、それに乗りグラニューの優しい声が聞こえた。

「ふうん。じゃあ、その時からヨルムンガンドは姉ちゃんを狙ってたのか……」

 ケレスの謎は少し解けた。

「いや、それより前であろう野……」

 オサは何故か思いつめる。

「じゃあ、いつからだよ?」

「それはわからぬが……」

 首を傾げるケレスにオサは言葉をつまらせた。

 どうやらこれ以上何も聞けそうにない。

「それなら、大恐慌が起こった理由は知ってんだな?」

 なのでケレスは話を変えた。

「ま、まあの……」

 今度はオサは気まずそうになる。

「ここまできたら、教えてくれよ!!」

 語気が強まるケレス。

 オサがいるであろう場所を睨み、追い詰める。

「ふうむ……」

 オサは観念した。

 一息つく。

「……アマテラス様は人が裏切った事にお怒りになったのじゃ」

 そんなオサは一七年前の大恐慌の始まりの理由を話した。

「それって、姉ちゃんの事でか?」

「そうじゃ」

 ケレスの疑問は一つ払拭された。

「じゃあ、どうやってアマテラス様の怒りは静まったんだ?」

「それは、私がお答えしましょう」

 ケレスに残った最後の疑問を払拭すべくグラニューが声を上げた。

 そのグラニューはまた知られざる一三年前の真相を話し始める。

「一三年前のある日、出雲殿は喜蝶様を光の神殿に連れて行ったのです。

 そこで喜蝶様がアマテラス様をお迎えになり、世界に光は戻ったのです」

 グラニューは優しい声で一三年前の大恐慌の終焉の真実を話した。

 だが、

「じゃが、そこでも昴の者はあの娘を殺そうとしたのじゃ……」

と、オサの静かな声がそれに続いたのである。

「嘘だろ……何やってんだよ!! どれだけ間違った事をすれば気がすむんだ!!」

 ケレスに抑えきれない怒りが沸いてくる。

 悔しくて自身のズボンを握り締めた。

「そうですね……。

 先代の記憶によると光の神殿に喜蝶様が到着するや否や、

ある物の号令で昴の者達は喜蝶様を殺そうとしたのです。

 そして、喜蝶様は水鏡の泉に身を投げ、死に直面しました。

 ですがそこにヨルムンガンドの悍ましい声がこう轟いたのです。

 喜蝶様を手に入れた……と」

 悲しい声のグラニューは話を続けた。

「じゃが、そこで宝珠の国の先代女王、マーサに助けられたのじゃ」

 それにオサが続けた。

「えっ、マーサ様が!?」

 新たにしった真相に驚愕したケレスは声を上げる。

「そうです。

 マーサ殿は、喜蝶様が出雲殿とあの地で暮らし始めた時からずっと気に掛けておられたのです。

 喜蝶様が誰であろうと、自身の国の一国民として守ると硬い意志を持っておられた。

 ですので先代の私の背に乗り密かに喜蝶様の様子を伺っていたマーサ殿は

間一髪の処で喜蝶様を救う事が出来たのです。

 そして、喜蝶様がアマテラス様の怒りを鎮め世界に光は戻ったのです」

 それでもグラニューは優しい声のまま話を続けた。

「そうだったのか……」

 そのグラニューのおかげでマーサとの優しい思い出が蘇ったケレスの心は温かくなる。

「じゃからマーサが死んだ時、あの娘は自分を責め続けたんじゃ……」

 そんなケレスの耳にオサの寂しく呟く様な声が聞こえた。

「どういう事だ!?」

「あの娘は自分が人を不幸にすると思い込んでおっての。

 マーサに自分が近づいたせいでマーサが死んだと未だに勘違いしておるのじゃ」

 はっとしたケレスはオサからラニーニャの苦悩を教えられる。

「まさか……姉ちゃんがアカデミーを辞めた理由って!?」

 ある事が頭を過ぎったケレスの唇はふるえた。

 そう、マーサの死から数日してラニーニャは突如アカデミーを退学していた。

 それからラニーニャは数日間塞ぎ込んでおり、蕾とやどり木の家に顔を見せなくなったのだ。

 当時のケレス達ではその理由はわからなかったが、

今のグラニュー達の話を聞いてケレスはその理由がやっとわかった。

 すると、ケレスの胸はぎゅぅと締め付けられ、目頭が熱くなり俯いてしまった。

 だが、この後ケレスはさらに目頭を熱くさせる話を聞く事となる。

 ケレス君。またラニーニャちゃんの秘密を知っちゃったね……。

 悲しくて俯いちゃう気持ちはわかるけど、しっかりと顔を上げるんだ!

 俯いたままじゃ未来は見えないのだから……。

 そんなケレス君がまた顔を上げれる次話のタイトルは、

【ケレス、空を駆けた風馬と茜色の空の下へ辿り着く】だ!

 遂にラニーニャちゃんの下へ辿り着くのか……。

 って、その前にケレス君がぁ!?

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