№ 88 ケレス、辿り着いた城の前で刹那と永劫の激突を目撃する
一瞬で凍りづけになったピィゴラスのしたにいた一人を見たケレスは嬉しさのあまり叫んだ。
だが、その人物はケレスとの再会に喜ぶどころか逃げてしまう。
その人物が逃げた事にケレスは動揺していたがその前で激しい氷と炎が激突する……。
「ね……姉ちゃん!!」
ケレスは嬉しさのあまりそう叫び、涙を流した。
何故なら、氷月の隣にいたのは紛れもなくケレスが知っているラニーニャだったからである。
だが、そのラニーニャの髪の色は雪の様に真っ白になっており、
よく見ると、まつ毛や眉毛までもが真っ白になっていたのだ。
さらに、その髪の長さは耳付近までのショートヘアーになっており、鬢だけは肩まで伸びていた。
それに付け加えケレスの見た事のない化粧をしており、薄青色のロングドレスを着ている為か
雰囲気も随分変わって見えた。
「ね、姉ちゃん!? やっぱり生きてた!!」
ケレスはラニーニャに近づこうとしたが怯えた顔をされる。
「姉ちゃん! 俺だ!! 話を聞いてくれ!!」
「煩い!! 喜蝶に気安く話し掛けないで!!」
そのラニーニャの顔を見たケレスの足は止まった。
すると、アルデバランの怒鳴り声が響き、ケレスはアルデバランを睨みつける。
「何でだ!? 邪魔しないでくれ!! 時間がないんだ!!
世界を救えんのは姉ちゃんだけなんだ!!」
「邪魔してんのはあんたの方!! おいで、ピリ!」
ケレスとアルデバランが怒鳴り合っていると、その横でピリは返事をする様に回転した。
「アルデバラン。二度も言わすな」
だが、そこに氷月の冷たい声が響く。
「ボ、ボス……」
勢いが無くなったアルデバランは気まずそうな顔で氷月を見つめた。
すると、溜息を漏らした氷月は瞳を閉じた。
「……後は、俺が片付ける」
「わかった……」
その氷月の命に小さく頷いたアルデバランはラニーニャの所へ向かった。
「ごめん、喜蝶。行こう……」
そして、アルデバランがラニーニャに優しく声を掛けると、
ラニーニャはアルデバランの後ろに隠れてしまい、ケレスはラニーニャの顔が見えなくなった。
それからアルデバランとラニーニャは二人で何処かに行こうとしたが、
「喜蝶!! 俺だ!! 話を聞いてくれ!!」
と、炎月は叫んだ。
だが、
「……何も、聴きたくない」
と、アルデバランの後ろから ふるえたラニーニャの声が聞こえたのである。
「これだからアタシ、あんた大っ嫌いなの!!」
それからアルデバランが怒鳴るとラニーニャは一人、逃げる様に白い霧の中へ消えていった。
「姉ちゃん!?」
「ここから先は行かせん」
そのラニーニャを慌ててケレスは追いかけ様としたが鋭い眼光の氷月に怯み、
その足は前に進まなかった。
「行かせてください!! じゃないと世界が滅ぶんですよ!!」
その氷月の眼光に一度は怯んだケレスだったが氷月のその目を見つめ訴える。
「俺達の世界は、滅ばん」
だが、氷月は自身の刀を滑らす様に抜いた。
肌を突き刺す様な寒さの中、その時に生じた高い音が響くとさらに感じる寒さが増す。
「ここから先に行くのならば、お前を……殺す!」
そして、冷酷な声で言い放った氷月から刀の刃先を向けられたケレスの背筋は凍りづいた。
「兄上!?」
動揺した炎月の叫び声が聞こえる。
「ケレス!! 行け!!」
「誰も行かさぬ」
それから炎月はケレスに命令したが氷月がその刀を振りぬくと
ケレスの前は一瞬で白銀の世界と化したのだ。
「これって、セルファの時と同じ!?」
ケレスはあの時を思い出した。
「ケレス!! 下がれ!!」
すると、炎月の怒鳴り声が聞こえる。
「えっ!? どっちだよ!!」
「あの白銀の氷は兄上の刹那生滅だ!
あれに触れると死ぬぞ!!」
思わずつっこんだケレスの傍にいる炎月の焦りの色は濃くなっていた。
「う、嘘だろ!?」
その炎月の顔みたケレスは退く。
すると、ケレスの前の足元は、ピキピキッと音を立て凍り付いたのだ。
さらに白銀に凍りづいた所は、ギチギチと音を立て真っ白になった後、
粉々になり風に飛ばされて消えた。
「ぃいっ!? 一瞬で地面が凍ったかと思ったら消えた!?」
その不可思議な現象でケレスの左口角はピクピク動き出した。
「あれは兄上の月の瞳、刹那の力の一つだ。
あれに巻き込まれるとマナを一瞬で凍らされ死ぬぞ」
焦りの色がくっきりと出ている炎月は眉を顰め身構える。
「その通りだ。死にたくなければ、去れ」
そして、据わった目の氷月はまた刀の刃先をケレスに向けた。
「させん」
すると、炎月も刀を構える。
それから両者は暫く無言で睨みあったが
炎月を余裕な顔をで見つめた氷月は笑みを浮かべた。
「ほう……。お前が俺に刀を向けるとはな。覚悟はあるのか炎?」
「俺は昔の俺じゃない。兄上」
さらに余裕差が増した氷月に対し炎月の眼光は鋭くなる。
「……やってみろよ。だが、本気で来い」
すると、笑みが消えた氷月は刀の刃先を炎月に向けた。
「ケレス……一度だ。俺の月の瞳、永劫が刹那に通用するのは……」
「ど、どういう意味ですか!?」
「俺の黒龍無双と兄上の氷雪大世界がぶつかった瞬間、喜蝶の所へ走れ!!」
炎月は氷月の迫力に押されていた。
そんな炎月を眉が下がったケレスが見ていると炎月の瞳は据わる。
「いかせてもらいます兄上!! 黒龍無双!!」
「……氷雪大世界!!」
そして、炎月と氷月は同時にそう言って刀を振り抜いた。
すると空には漆黒の龍が空気を震わせる鳴き声を轟かせながら現れ、
地上ではとどまる所を知らない白銀の氷壁が硝子がぶつかる様な音を立てながら逼って来た。
それから漆黒の龍は瞳を見開き、体に漆黒の炎を纏わせ地上へ急降下していく。
だが、地上では迫り来る白銀の氷壁がさらにその高さを空へ伸ばし己の世界を拡げ様としていた。
その氷壁に漆黒の炎を纏った漆黒の龍がぶつかると互いを飲み込む様にその姿は入交、
この世界の全てを震わす爆発が起きた。
「ひ、ひええぇっ!! い、今だっ!!」
その爆発の中、叫んだケレスは真直ぐ走りラニーニャ達の下へ向かった。
すると、この地を包んでいた毛嵐はその爆発で吹き飛ばされて消え、
ケレスの目の前にはっきりとサダクビア城が見える様になったのだ。
そのサダクビア城は数階建てで城壁は白く、十年以上誰も住んでいない割には綺麗に聳え立ち、
堀もあったがそこに透き通る水が凍らずに流れ、魚が泳いでいた。
さらにその堀を渡る橋があり、その先に巨大な門があったが開いていたのである。
「ね、姉ちゃん、この城に行ったんだよな?」
そう信じたケレスはサダクビア城へ向かい、門を潜った。
すると、そこには白銀の雪が積もる美しい庭園が広がっており、
この世のものと思えない世界があった。
「うわっ!? さっきまでこんなに雪、積もってたか?」
その庭園を足を雪にとられつつもケレスは、ザクザク足音を立てながらサダクビア城へ向け歩いたが、
「キイイーーーーーー!!」
と、聞き覚えのある泣き声が響き、急にケレスの周りに影が出来たのだ。
「うわっ!? こ、これって、雪ん子の雪玉!!」
そう叫んだケレスがその影を避けると落ちて来た巨大雪玉はドンッ!と音を立て壊れた。
「キイイイ!!」
そのケレスの前に一体の雪ん子が飛び出して来る。
その鳴き声からしても雪ん子は怒っていた。
「雪ん子!? 危ないじゃないか!!」
「キイィッ!! キイィ!!」
その雪ん子に目尻が釣り上がったケレスが怒鳴るとケレスは顔に雪玉をぶつけられた。
「でえぇ!? 何すんだよ!!」
ケレスは顔に付いた雪を拭いながら怒鳴る。
「キイイイッ!!」
すると、雪ん子の叫び声で、他の雪ん子が集まってきた。
「キイィーーーッ!!」
そして、その雪ん子達が一斉に鳴くと空にいくつもの巨大雪玉が出現する。
「ま、まさか……あれを俺に落とすつもりじゃ……?」
その巨大雪玉達を見たケレスの左口角がピクリと動いた瞬間、
巨大雪玉はケレス目がけ一斉に落ちて来たのだ。
「ひええぇっ!! 俺が何したって言うんだぁ!!」
またもやケレスは人生をあきらめた。
だが、
「ギイイッ!!」
と、叫び鳴いた氷柱鬼が氷の棍棒を振り抜くと巨大雪玉は粉雪と化したのである。
「キイィ?」
その氷柱鬼の行為に不思議そうに雪ん子達は泣いた。
すると、氷柱鬼はゆっくりと首を横に振る。
「た、助かったぁ……」
そして、腰を抜かしたが一難去ったケレスは胸を撫で下ろした。
「キイイィッ!」
そんなケレスの前に浩宇が現れた。
「ハ、浩宇!? 久しぶりだな!」
ケレスは浩宇との再会に笑顔になった。
「キイイィーーッ!」
浩宇も嬉しそうだった。
だが、浩宇から雪玉を顔にぶつけられる。
「や、やっぱり、そうするんだ……」
なのでケレスは肩を落とした。
「ギイイイ……」
そんなケレスに氷柱鬼が何かを訴えてくる。
「何か、俺に言いたいんだろ?」
ケレスはその氷柱鬼を見つめた。
すると、氷柱鬼は何処かに案内を始たのである。
「キイィ……」
「……なあ、浩宇。俺を姉ちゃんの所に連れて行ってくれ」
そして、悲しそうに鳴いた浩宇にケレスは優しく笑い掛ける。
「キイィ……?」
そんなケレスは浩宇から何か言いたそうな目で見つめられた。
「気にしてない。お前達は姉ちゃんを守ろうとしてくれたんだろ?」
ケレスはその浩宇の心の内を言葉に下。
「キイイィーーー!」
「ま、またか……」
だが、ケレスは浩宇から雪玉をまた顔にぶつけられてしまった。
その浩宇はやはり嬉しそうである。
そして、ケレスは深い溜息をつく。
そんなケレスだったが浩宇と氷柱鬼に付いて行く事にした。
ケレスが氷柱鬼に付いて行くとさらに美しい雪の庭が現れた。
その庭の色は白の雪の白色と灯籠等の灰色という単純な色の世界で何か物足りなかったが、
ケレスはその世界に心を引き込まれてしまい、言葉を失った。
すると、
「ギイイィッ!」
と、氷柱鬼にケレスは呼ばれる。
「……ああ、悪い」
そして、元の世界に帰って来たケレスが返事をするとそこにあの二人の姿があった。
いやはや、ケレス君……。
危なかったねぇ。
まあ、偶にはこんなスリリングな話が続いても良いでしょ?
こういうアクションも偶には描きたかったのだよ、私だって! えっへん♪
とまあ、おふざけはこの辺で……。
次からはちょっと切なくなっちゃうんだ……。
そんな次話のタイトルは、
【ケレス、隠されていた美しき城で姉の確固たる決意を知る】だ!
さて、ラニーニャちゃんの決意とは?




