№ 87 ケレス、白き霧の中で漆黒の龍の静かなる戦いを目撃する
白い霧の中から姿を現したのは赤い瞳のあの人物だった。
だが、その周りには恐ろしい数のあれもいて……。
キュゥ、キュゥ……。
白い霧の中から聞き覚えのある声が聞こえ、雪を踏みしめる音が近付いて来ると、
一人の人影が見えた。
だが、その周りには無数に浮かぶ不気味な影も見えたのである。
「お前は、アルデバラン!?
そ、それに、何て数のp?なんだぁーー!!」
そして、その人影達がはっきりと見えたケレスは驚きのあまり叫び、
左口角がピクピク動いてしまった。
何故なら姿を見せたアルデバランの周りには優に千体は超えるp?が無秩序に浮遊していたのだ。
その無秩序に浮遊するp?の不気味さにケレスはたじろぐ。
すると、アルデバランは、くすっと笑って口を開いた。
「さっさと出て行くんなら、良し。さもないと……」
アルデバランが右手をすっと上げると無数のp?の中から一体のp?がその手に止まり、
ピコリン♪と音を鳴らした。
そのp?は他のp?とは少し形が違っていた。
そう、大体のp?は長方形の形をしており、色は多種類あるが、
アルデバランの手に止まったp?は美しいワインレッドで他のp?より一回りは大きかったのだ。
「よしよし、ピリ……」
そんなp?を包み込む様にして右頬に近づけたアルデバランは優しく口付けをした。
「聞いてくれ!!
俺達はお前と争いに来たんじゃないんだ!! 唯、姉ちゃんの力が必要なだけなんだ!!」
「そういうの、アタシ、大っ嫌い!! ピリ!! こいつ等を追い出すよ!!」
そんなアルデバランにケレスは嘆願したが
眉を顰め不機嫌さを全開にしたアルデバランから怒鳴り返された。
すると、アルデバランから離れたピリがそのまま上昇し、ピコリン♪と音を鳴らす。
そのピリを中心に次々とp?が集まって来た。
そのp?軍団は先程と打って変わって秩序ある動きをしており、
等間隔に並び互いと互いの間に電流を流し、青紫の壁を作る。
それから徐々にp?達の間は広がっていった。
さらにその壁も広がるとどんどんそのp?軍団の塊の大きさは大きくなり、その形を変えていった。
「はあ? な、何だこれ!?」
その巨大化して形を変えたp?軍団の塊を見たケレスは瞬きを忘れる程驚いた。
何故なら巨大化したp?軍団は見上げても頭が見えない程の人型ロボットと化していたからである。
「出て行かないあんた達が悪いんだからね!!」
そんな巨大人型ロボット化したp?軍団を見上げているケレスが瞬きを思い出すと、
アルデバランの不機嫌な声が聞こえる。
「やっちゃえピィゴラス!! ヤールングレイプル!!」
それからアルデバランの叫び声が聞こえると、
巨大人型ロボット化したp?軍団からビゴリン!と返事をする様な音が鳴り響いた。
「へ!? ピ、ピィゴラスって何だ!?
それに、ヤールングレイプル?
ってか、うえぇぇーーっ!!」
一連の流れを唯見ていたケレスは目の前の光景に目を疑った。
そう、巨大人型ロボット化したp?軍団こと、
ピィゴラスはケレスに向け右手を握り突き出していたのだ。
さらにピィゴラスの体に電光が走るとその右拳がケレス向け放たれたのである。
「でええぇ!? ロケットパンチだってぇっ!! んな事ありかよ!!」
何度目かの人生をあきらめたケレスは瞳を閉じて絶叫した。
だが、
「させん」
と、静かな炎月の声が聞こえ何かが崩れる音が聞えると、ケレスは何事もなかったのである。
「た、助かったぁ……のか?」
そんな言葉が漏れたケレスは腰を抜かしていたがそぉっと瞳を開ける。
すると、ケレスの目の前にp?達の焼け焦げた残骸の山があったのだ。
「さすが炎月さん!」
ケレスの顔は綻ぶ。
「アタシ、あんた嫌い!」
アルデバランはピィゴラスの前で不服そうな顔で炎月を睨みつけていた。
「アルデバラン。無駄な事はやめろ」
炎月もアルデバランを睨み返す。
「アタシ、あんたの言う事なんて聞かないもん!!
ピイゴラス。次はあれをやるよ!」
だが、アルデバランは叫んだ。
すると、右拳が復活していたピィゴラスはその拳を天に突上げる。
そして、ピィゴラスの全身に電光が走るとその電光は突上げた拳の一点に集まり、
その上で青紫の巨大な柄の短い鎚の形となったのだ。
「だわわっ!? な、何だあのデッカイハンマーは!?
絶対にヤバイ!! あいつ、あれで俺達を叩き潰す気だ!!」
その巨大電気鎚を見上げたケレスはまた人生をあきらめた。
「耳を塞いで伏せていろ!」
すると、炎月は刀を構える。
「えっ? あっ、は、はい!」
そして、ケレスは炎月の命令に素直に従った。
「いっけぇーー! トールハンマー!!」
それからアルデバランが叫ぶとその後瞬時に辺りは青白く光る。
耳を塞いでいてもケレスに空気を引き裂く音と衝撃が伝わった。
その衝撃達が伝わったケレスは恐怖で瞳を強く閉じてふるえていた。
暫くその衝撃達はケレスの周りの空気を震わせ、ケレスの動きを封じたのだ。
「ひぃぃ……何か青龍様が怒った時よか迫力ないか?」
それ等が収まった頃、伏せていたケレスはそっと瞳を開け、塞いでいた耳を解放した。
すると、その瞳に霧の姿は映らなかった。
だが、焼け焦げた荒野の中に一人の男が何事もなく背を向けて立っているのが映った。
「炎月さん!? スッゲェー!」
その男は勿論、炎月だった。
その炎月の背にケレスは弾んだ声を掛ける。
「アルデバラン……。
一般人にヤールングレイプルを使うだけでなく、
一軍団を消滅させるトールハンマーまでも使うとはどういう料簡だ?」
そのケレスの声に全く反応しなかった炎月はアルデバランに刀を向けた。
「煩い!! あんた達は一軍団よか、よっぽど質が悪いのよ!!
もう一回いくよ、ピィゴラス! トールハンマー!!」
その炎月に怯まずアルデバランは叫ぶ。
すると、ピィゴラスは天に向け伸ばした右手で巨大電気鎚を握った。
その後すぐに先程と同様の青紫の電光がケレスの目の前を一瞬で走り抜ける。
そして、空気を引き裂く様な破壊音がその大きさをどんどん増していった。
「いっ!? さっきのをもう一回やる気か!!」
目の前の全ての迫力にすっかり怯え切ったケレスはそう言うだけで何も出来なかった。
「月の瞳よ……今、その力解き放て。
黒木月を迎え、荒ぶるものを喰い尽くす黒木流を導く夜となれ……。
黒龍無双!!」
だが、呪文を唱えた炎月の刀に漆黒の炎が宿る。
そして、炎月がその刀を振りぬくと、
そこから放たれた漆黒の炎は目の前の視界を塞ぐ巨大な漆黒の龍の姿へと変わった。
その漆黒の龍は空高く舞い上がり美しい紅の瞳を見開く。
そこでその龍が口を開くと地面をも震わす低い鳴き声が轟いた。
その鳴き声はトールハンマーが発した空気を引き裂く音を打ち消していく。
さらにその龍は体に纏わせた漆黒の炎を地上に降り注ぎ、青紫の電光を全て焼き尽くしていき、
ピィゴラスのトールハンマーまでもを焼き尽くしたのだ。
すると、この場に静けさという終焉が訪れた。
「な、何て凄さだ……」
その終焉で呆然となったケレスの前に一歩も動いていない炎月とその上空に漆黒の龍、
それに目を丸くしたアルデバランとピリの後ろにピィゴラスがいたがその手には何もなかった。
「……これでわかっただろう、アルデバラン。
お前では、俺に勝てない」
静かにそう言った炎月が刀を莢に収めると漆黒の龍はその姿を消した。
(そっか! 炎月さんの月の瞳の力でピィゴラスのトールハンマーのマナを滅ぼしたんだ!)
そう理解したケレスの顔は綻び、大きく頷く。
「……狡いじゃない、月の瞳なんてさ……」
そして、呟く様に言ったアルデバランは唇をふるわせ悔しさを滲ませた。
「喜蝶に合わせてくれ」
炎月は徐にアルデバランに近づいた。
「嫌よ……絶対に嫌っ!!
特にあんたには絶対に合わせないんだから!!」
すると、アルデバランの赤い瞳は潤む。
「いっけぇーー!! ピィーーゴラスゥーーー!!」
そんなアルデバランが炎月に右手で指を差しながら叫ぶと、
ピィゴラスは炎月に向け突進していった。
「どえぇぇ!? あいつ、やけくそになって俺達を踏み潰す気だぁっ!!」
雪も無くなった地面をピィゴラスは音も無く駆け出し、ケレス達に近づいて来た。
そして、相変わらずケレスは騒いでいたが深く溜息をついた炎月はまた刀を構えた。
「……永劫終焉」
それから炎月のそう呟く声が聞えた。
すると、炎月の刀にまた漆黒の炎が宿り、炎月がその刀を振りぬくと、
ピィゴラスは一気に漆黒の炎に包まれたのである。
そんなピィゴラスの足は止まった。
「す、凄い!! 炎月さんは凄い!!」
そして、ケレスが胸を撫で下ろすとピィゴラスは、ガラガラと音を立てながら崩れていった。
だが、その時だった。
崩れいくピィゴラスは一瞬で真っ白な氷に包まれ、
崩れかけていたピィゴラスはそのままの形で止まったのだ。
「な、何だ!? 何で、あのまま止まってんだ?」
その有り得ない現象にケレスがまた叫ぶと、
白い氷漬けになったピィゴラスの下に二人の人の姿があった。
「……アルデバラン、下がれ」
そして、その内の一人が静かに口を開く。
「氷月様!? それに、あれは……!?」
氷月を見たケレスは叫んだ。
さらに、その隣にいる人物を見て叫ぶ。
そう、そこにはずっと会いたかった人物がいたのである。」
やあやあケレス君! 今回も絶好調に絶叫してくれたね!
結構、この話は私的にお気に入りの話なのだよ! ふふん♪
だって、一度ぐらいはこういう迫力あるアクションを描いてみたいじゃなぁ~い? てへへ☆
とまあ、冗談はさておき……。
次回で遂にあの人と君は再会するんだよん♪
さてさて、それは誰でしょう? って、簡単すぎか!
そんな次話のタイトルは、【ケレス、辿り着いた城の前で刹那と永劫の激突を目撃する】だ!
この話もアクションに力を入れてます!




