68話 再生への一歩
俺は周辺の救護に駆け回っていた。
息がある限り、再構成できた。死んでいると再構成の力は通用しなかった。
目の前にひとり、彼はかろうじて呼吸ができている。まだ助かる!
骨盤粉砕。肋骨陥没。内出血。
体がくの字に折れた騎士の胸に手を置く。
「ヴァルネラサネントゥール」
骨格を正位へ、戦う前の健康な体に戻す。あとはこの力の神頼みだ。
――おそらく安定した。次だ。その時、後ろから声をかけられた。
「…失礼ですが…あなたは、母の護衛ですか?」
金髪の女性。学者っぽい制服。凛とした佇まい。
俺の着ている護衛服で、どこの護衛か判断できたのか?目元が似ている気がする。
「私はピーター・ファンデンホーヘンと申します。確かにある方の護衛を務めております。あなたのお母様のお名前をお伺いしても?」
念のため確認する。
女性は背筋を伸ばし、一礼した。
「はい。私はグリーゼ・レマール。母、ルシェナ・レマールの長女です」
やはりそうだった。ルシェナを理系女子にしたような感じだ。
「初めまして。お会いできて光栄です。確かに私はルシェナ様の護衛を務めさせていただいております。ですが今は救護を優先しましょう」
「はい。後ほどお話をお伺いしてもよろしいですか?」
「もちろんです」
俺たちは引き続き救護に駆け回った。
やがて日は暮れはじめ、応急処置は一段落した。
「結構被害者が出てしまいましたね」
「それでもピーターさんに瀕死の人間をたくさん助けていただきました。魔法ではない、不思議な力のようですが?」
「魔法です」
俺はキメ顔でそういった。
「でも魔法特有の光や揺らぎも見えませんが・・」
「かっ限りなく物理法則に近い魔法の研究をしてるんです、まだ研究半ばですが」
「物理法則・・・」
やばい、また変な嘘ついてしまった。この人学者っぽいから迂闊な嘘つけないな。
「そ、それよりもルシェナ様のところに行く前に少しよろしいですか?」
魔神を倒した場所へと向かい、彼からもらった大きな牙を土に植えた。
-天と地を結び、世を潤してきたる御神よ
-とこしえに命の息吹を授け給え、
-根は大地を抱き、枝は天を仰ぎ、葉は光を受け、
-実を結び、この地に尽きせぬ恵みをもたらし給え
ベルデ村で唱えたオリジナルの祝詞を奏上した。
この牙が大樹になるのかどうかわからんが
魔神は「遥かなる先、豊かになる」と言っていたので、時の流れに任せよう。
「この周りには何も植えないように祀っていただけますか?」
「はい。承りました。ところで何に祈りを捧げられたのですか?」
「自分の神です。面白くていい子なんですよ」
「フフフッ。神を面白くていい子っていう人、初めて聞きました」
最初きつそうな印象があったが、笑うとすごく素敵な人だ。
「ではルシェナ様の所に戻りましょう」
俺はグリーゼと一緒にルシェナのいる宿屋へ向かった。




