57話 防衛装備展示会
「ルシェナ様、お待たせしました。色々てこずりまして遅くなりました」
「いいえ、普通こんなに新装備が早くできるものでもないわよ」
「この船がとんでもない速度で海を走っているのは見てましたが・・」
今日はルシェナのほかに警備隊長も呼んだ。彼らが運用する当事者だ。
俺とルシェナとルシェナの護衛と、警備隊長4人で船に乗り込む。今日のルシェナは厳しい顔だ。
「ではどうぞ、足元に気を付けて」
「ん?これは?」
「これは装填用ゴーレムです。彼らが砲弾を装填してくれます。彼らがいることにより、人員が減らせます」
ちょっと小さな黒檀ゴーレムを3体常駐させた。何もないときは体操座りして待機する。
かわいいでしょ?
「では出発します。速さはもうみなさんご存じのようなので、今日はゆっくり航行します」
俺はスロットルを上げて『プロトタイプ・しまかぜ』を発進させた。
沖に出た。
「では、索敵開始します。アイソン!」
この船に停まっていたカラスのような鳥の魔法陣が光る。カーボン製だ。
「あれは索敵ゴーレムです。2羽で索敵、伝達します。彼らが未確認物体を見つけると、この笛が鳴ります」
レネイの魔法陣のリンク機能で、命令主の確認が取れないものに反応する。
反応すると、モーターでファンを回し、その風を笛に通して音が鳴る。
「あれがゴーレムだと?飛べるのか」
「いえ、飛べません。人よりも遠くのものを見つけ出し、常にマストに常駐してますので、人員削減要員です」
しばらくしてここに待機している索敵鳥が鳴いた。
「ピィイーーーー!!」
「おや。彼が向いている方向に未確認物体がいるようです。少し速度を上げますねー」
「これは・・・確かに戦いの概念が変わってしまうわね」
水平線の向こうに黒い船が見えてきた。
「ぬぬっ!あれは海賊船のようですね!スカッドの船のようですよー!」
「なんだと!?」
「どうして!?あなたが倒したはずよ!」
「はい。あれは俺が用意したダミーターゲットです。良く出来てるでしょ?」
「ハルミチさん!ちょっと意地悪よ!」
「はい。すいません」
ルシェナに怒られた。俺の渾身の大根演技にマジレスされてしまった。
「で、ではいよいよ奴を攻撃します。パラトゥス!」
黒檀ゴーレムが立ち上がり、三連装砲に砲弾を詰めた。
「この主砲のレバーをおろせば砲弾が発射されます。発射した人間が狙っている目標に半誘導で飛んでいきます」
「どういうこと?」
「実際にやってみましょう」
俺は海賊戦へ向いている砲身をあえてずらした。
「この砲身は今、海賊船に向いてませんね。この状態で発射させます」
主砲のレバーを引く。
ガキンッ!ドドドムッ!
弾頭から羽が十字に4枚出てきて、海賊船のほうに曲がっていく。
発射の反動で船が結構揺れるな。一応反動対策しているが、
小型船だと三連装は反動がでかくて無理あるか・・
火力はこれ以上妥協したくないので、実機はもう一回り船体を大きくする必要があるかも。
「おおおおっ!弾道が曲がったぞ!」
「すごい!」
「弾頭にもゴーレムが掘ってあります。彼らが確実に標的に向けて移動していきます」
バキャァッ!
砲弾は3発とも、はるか遠くの海賊船を貫通した。
「あの船はドンガラなので貫通しただけなんですが、中に火薬があれば誘爆できます。とどめを刺しましょう」
黒檀ゴーレムは次弾装填完了している。今度は射角を上げて発射した。
ギギギギ・・ガキンッ!ドドドムッ!
弾は高く上がり、ほぼ真上から標的めがけて落ちていく。
ババッバッバキバキバキッ!ゴゴゴゴ・・・・
「おおお!」
「理想の射程は今あの船くらいの1.5km前後。最大射程は4kmほどでしょうか。大体の射角と目標が水平90度以内であれば、ほぼ命中します。」
徹甲弾は甲板から船底まで貫き、海賊船は沈み始めた。
目標まで約1.5km程、射角が高くなると、あれがギリギリの射程か。
「要は正確に狙う必要はありません。無茶な射角にしない限りは弾を無駄にしません。この船は3人いればオペレーション可能です。例えばこの船がこの港に10隻あればどうです?」
「大抵の船は凌げるわね。いいわ。買うわ。この船20隻分と砲弾、メンテナンス代、その他必要なオプションがあったら値段を出してちょうだい。ローヴェル、すぐに運用計画を!」
「ハッ!!」
さすが話が早い。名領主!
「ありがとうございます!」
「ハルミチさん。あなたに少しお話があるわ。このまま一緒に城に来ていただける?」
「は、はい・・・」
セレニア城のルシェナの執務室に来た。
「今回もとても素晴らしい技術を提供してくれたわね。感謝しています」
「身に余る光栄です。テストものばかりなので改善は必要ですが」
「あなたたちの技術は間違いなく最先端よ。隊長以下、私の周りにはかん口令を敷かせてもらうわ」
「助かります。レネイは自分の魔法で戦いが起きる可能性を危惧してます」
「…とはいえ、いずれ人目に付く技術よ。できれば私はあなた達の技術を独占したい」
「かまいませんよ」
「助かるわ。ずっとあなたのような人を待っていたわ。この出会いに感謝します」
直球だな。美人に独占されるなら大歓迎だ。俺ちょろい。
「そもそもあなたは今までどこにいたの?そんな力を持っていたのならば、どこかで噂が立とうものだけれど」
「俺はいままでの記憶がないんです。名前や言葉や生きる術などは覚えていたのですが、目が覚めてあたりを彷徨っていたところ、近くに住んでいた師匠に拾われて今に至ります」
次はこの説明、もっと短くまとめたい。
「そう・・大変な思いをしてたのね」
「いえ、そうでもないですよ。今楽しいですし」
リンリン♪
「もうこんな時間なのね。あなたもお食事していかない?」
「いえ、今日は師匠が釣ってきた腹黒鯛を食べるので遠慮します」
「フフフッ。紅腹鯛でしょ?では船の話、進めて頂戴ね」
「はい、失礼します」
俺は城を出た。早速見積作成だ。
艦名:プロトタイプしまかぜ
種別:ゴーレム駆動高速武装帆船
全長:約 28 m
全幅:約 6.5 m
全高:約 20 m
船体構造:チタン竜骨/黒檀デッキ/内層ファイバー/外層鉄鋼(二層構造・木製外観)
制御:レネイ魔法陣(舵、スロットル)
動力:ゴーレム式鋼鉄3連スクリュー
出力:通常 2,000〜3,000hp / 最大 5,000〜8,000hp(推定)
最大速力:28〜35ノット(約52〜65km/h)(推定)
巡航速力:18〜22ノット(推定)
武装
三連装砲 ×1
射角(仰角):最大60度
射角(水平):160度
弾種:追尾式ゴーレム徹甲弾
発射方式:バリスタイト火薬
有効射程:1.5 km
最大射程:3.0 km
常駐ゴーレム、監視ゴーレム×2、装填用黒檀ゴーレム×3
乗員:3〜6名




