54話 新造船
「ウミダァー!」
最初の家は当面留守にするため、荷馬車に荷物をすべて積み込み、
俺たちは翌日ヒューズナセルへ戻ってきた。
「大きな家だね!」
「領主の別荘をもらったんです」
荷物を降ろしていると、レネイが部屋から出てきた。
「ハルミチ氏、おかえりなさい」
「ぬっ!ハルミチの愛人2号?」
「違いますよ!1号は誰ですか!この子は魔法使いのレネイ。ここで研究してもらってます」
「初めまして。レネイと申します。ハルミチ氏のお師匠さんですね?」
「うん、カナハだよ。こんにちは」
「彼女はゴーレム使いです。彼女の力を借りたくて、この家に住んでもらうことになりました」
「なるほど。よろしく!」
「よろしくお願いします」
「レネイ、例のプランはすぐ行けそうか?」
「はい。既存の術なので簡単です」
「オッケー。今日はもう暗いし、明日港に行こう」
――――――
翌日。
壊れたまま停泊しているコルベットコンゴウを、
カナハ、レネイ、俺の3人で見に来た。
「ボコボコですね」
「最後、だいぶ砲撃食らったからな。この船でいろいろ試そう」
頭の中では、もうこの世界に遠慮せず、前世のクルーザーみたいな
かっこいいフォルムに作り直そうと考えていたが――
「ハルミチ、この船なんで帆がないの?」
「海賊と戦ってるとき邪魔だったんで取っちゃいました」
「ふーん。でも帆がある方が、なんかかっこいいね」
・・・確かにそうだな。なんかかっこいい!
これは俺にとっても重要だ。効率よりロマン。どうせ推進力はどうとでもなる。
だが、俺にはセイルの知識は皆無だ。なんであんなものであんなスピードが出せるのか。
ひとまず、あそこの漁船のセイルを見た目だけマネしておこうか。
エンジン(スクリューだけ)は鋼鉄3連スクリュー。ダイヤは弾性がないからパスだ。
現在オンかオフかハーフの3段コントロールしかできないので、スクリューの数でパワー調整をする。
同軸でつなぐが、オンオフでトルクは変わるのでこれで多段階調整が可能なはず。
竜骨はチタン。デッキは黒檀。
ボディは前回の反省を生かして、内層ファイバー、外層は鉄鋼の二層。見た目は木製。
なんちゃってセイルは厚手の綿布、『紺碧の舷兵』マーク。
マストはカーボンに木目塗装。
この船は偵察用のテスト船。
元々小さな商船だが、上部分をカットして低くする。もうほぼ作り直しだな。
船体のイメージはできた。大砲は後だ。
「よし!ゴリッと船体変えるから二人とも一回降りててくれ。」
船体に手を当てて、イメージ!
「しまかぜ!」
ゴゴゴゴゴゴ・・・ミキミキミキ!
ゴワン!
「おおおお!かっこいい!」
「巡視艇【プロトタイプしまかぜ】です」
「ちっちゃくなりましたね」
「といっても幅と長さは変えてない。低くなっただけだ。んじゃレネイ。例の作業を頼む」
「はい」
舵のセンターに魔法陣を刻んでもらう。
今回舵のセンターに刻む魔法陣は、文字通り舵のコントロール。
船尾のラダーに繋いでもらう。
『魔法陣と指令する魔方陣を別に作り、重なると魔法が発動する』
という特性があることを聞いたので、舵を左右各3段ほど切り替えるようにする。
いちいちカリガカリガ言わなくてすむようになるらしい。
ゆくゆくは無段階調整できるようになれば最高だが、今はこれで十分だ。
カリガの重ね掛けは、レネイの話によると『オーバードライブ』のようなものらしいので
今回は使わない方針だ。
これを活用して今回は3連スクリューのON.OFFを切り替えるために
スピード調整スロットルを設置。これに速度切り替え魔法陣を刻んでもらう。
『アルガ』がハーフなので、停止、リバースも組んでもらうので全8段階。
「もう出来たの?」
「あ!ルシェナ様!いえいえ、これはテスト機です」
たまたまなのか、ルシェナが来た。
「商船が漁船になってるようだけど」
「フフフ・・ルシェナ様。この漁船が海の戦いの概念をひっくり返します」
「はぁぁ・・。あなたの行動はいつも斜め上過ぎて理解が追い付かないわ」
「あ、そうだ。こちらが魔法神学院研究員のレネイです。今回彼女の能力が大事なんです」
「お、お初にお目にかかります!」
「ルシェナよ。よろしくね」
「で、こちらが俺の師匠カナハです」
「よろしく!」
「ハルミチさんにはお世話になってるわ」
「ひとまずできました」
レネイの作業が終わったようだ。
「よし!テスト航行しようか!ルシェナ様も乗ってみますか?」
「ルシェナ様!危険です!」
付き添いの護衛が彼女を制止する。
「私、実は船苦手なの・・」
港の領主なのに?まぁ、豆腐が嫌いな豆腐屋もいるしな・・
「そうですか。んじゃぁ行ってきます!」
「・・・・ちょっと待って!やっぱり乗るわ!」
「ルシェナ様!」
ルシェナが慌てて桟橋を渡ってスタスタと船に乗り込んだ、護衛が後に続いた。
「や、やさしく動かしてね・・・」
「まぁテストだから無茶はしません」
ルシェナがすごく不安な顔をしてる。
「それではいきますよ。クオーク」
レネイが呪文を唱えた。ブンッと魔方陣がピンク色に光った。
今回いろいろなところが光ってめっちゃエモい!
「それではゆっくり前に進みますね」
レバーを前に一段倒す。一番手前の小さいスクリューをアルガで回す。
ココココ・・・
改修型コンゴウ『しまかぜ』がゆっくり発進した。舵も効く。よし、成功転生!
「セイルは動かさないのね」
「これはフェイクです。セイルの知識全くないのでハハハ」
なるべく風の影響を受けない様に、進行方向と平行にセイルを固定していて、
偵察用なのにでかでかと警備隊のマークが書かれている。横風注意!
沖に出た。波穏やか。
「じゃぁ、やさしく加速しますね。皆さん、近くの船体につかまってください」
ィィイイーン・・・・ザザザァッ
2番スクリューを動かす。前よりは滑らかに加速しだした。
ダイヤのスクリューはガツンと加速したが、鉄鋼にしたのでそんなにパワーは出ないようだ。
それでも十分早い。
「おお!早い早い!」
カナハが大はしゃぎしている。
「んんんんっ!」
ルシェナが俺にガッシリしがみついてきた。アルマよりも顔が近い!いいにおい!
「ルシェナ様!」
「ルシェナ様、護衛さんにつかまってください。操縦できないので」
護衛がルシェナを俺から引っぺがそうとするがタコのようにくっついて離れない。
ちなみに肉体改造のおかげで、波で揺れる船でも俺の体はビクともしなくなっている。
確かにしがみつき甲斐はある。が、さすがにこれじゃテストにならない。
「まぁこんな感じです。そろそろ戻りましょう。まだ半分の出力も出せてないので」
「え!まだ早くなるの!?」
「速さだけじゃないですよ。武装も変わります。これで海賊の一隻くらいは沈められる予定です」
「この漁船にそんな武装積むの?」
「完成したらまたお見せしますよ。ちゃんと乗ってみてくださいね」
「う、うん」
レネイにある仕掛けの研究を頼んでいる。
これが完成すれば、この港の戦力は大幅に上がるだろう。
「あれは何?でっかい!」
カナハが指さした方向に3隻の船と、
すごく大きいにょろにょろとタコみたいな足が何本か海面から出ている。
「あれはタコ漁よ。でもあれはちょっと大きすぎのような気がするわね」
ここでもタコ食べるのか。確かに市場にでっかいタコの足があったな。
でもあれはもうゲームのモンスターレベルの大きさのような気がする。
バキャッ!
「あ・・船が壊されたよ」
「あれはまずいわね・・・」
漁船が一隻壊された。たしかにまずいな。
「ちょっと援護しに行きますね」
「お願い。助けてあげて」
と言いながら俺にしがみついているルシェナ。
運転しにくい。いいにおい。




