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50話 退かぬための船

俺たちは城に戻り、ルシェナの執務室にアルマと3人で集まった。


「ハルミチさんの貢献の報酬よ。想像以上だったわ。本当にありがとう」


ルシェナが俺に黒檀のカードをくれた。

ルシェナの肖像と金の淵が入ったカード。ルシェナのテーマカラーかな。


「これは私が使っているカード。これを見せればこの街の物ほとんどを買える。家も買えるわ。まぁでも、後で私に請求が届くだけのカードなんだけどね」


ルシェナがくすりと笑う。


「あ、ありがとうございます・・」


「遠慮しないで使ってね。本当はもっと実のある物をたくさん上げたいのだけれど、ここまでの功績の報酬は思いつかない。ひとまず私の最大の賛辞と思って受け取って」


「身に余るお計らい大変感謝します。ありがたく受け取らせていただきます」

ちなみにゴールドのカードはもちろんお返しした。


「あなたたちを長くこの街に留まらせてしまったわね」

「海賊に恐れることなくなって、これからさらに反映していくであろうこの街が俺も楽しみになりました」


「せっかくアルマも友達になってくれたし、この街に二人でいっぱい遊びに来てね」

「はい、もちろん。ね!」


アルマも微笑んだ。


「ハルミチさん、一つだけ。これはただの相談なんだけど」

「はい、なんでしょう」


「あの商船の技術を警備隊にどうにか活かせないかしら。ここの警備船がザルなのは、あなたももうご存じでしょ?」

はい。口には出さないが。


「なるほど。ちょっと考えてみます」

実は海賊退治よりワクワクしていた。


「よかった。別に急がないわ。何か形になりそうになったらいつでも私の所に来てちょうだい」

「わかりました」


警備隊の正式名称『紺碧の舷兵』

いかにも中二くさい。でも嫌いじゃない。昔は強かったんだろうな・・

警備船を見に行こうか。とはいえ、そろそろアルマをベルデ村へ送り届けたい。


などと思っているとアルマが腕を組んできた。

「ふふーん。船見に行くんでしょ?まだお休みあるから大丈夫だよ」

「じゃぁ、ちょっとだけ見に行っていい?」

「うん!」

俺たちは港へでかけた。


------


若い索敵兵エルドは、船の欄干に肘をつきながら沖を眺めていた。


港に繋がれたオレの乗る巡視船《セルリアナ号》は、潮に揺られて軋んでいる。

帆は何度も繕われ、艦首の装飾は半分欠けている。


それでも、船は清潔に保たれている。

板は毎朝磨かれ、縄は丁寧に巻かれ、紺碧の舷兵の旗だけは真新しく張り替えられている。



実のところ、この船は年季の入った商船の払い下げだ。

砲は左右に二門ずつ。どれも旧式で、撃てば反動で船体が悲鳴を上げる。

この船が巡視船だということを差し置いても、心もとない装備だ。

しかも前回の海賊の襲撃で弾薬が不足している。


この船の他、隊には7隻の船。現在稼働可能な船は5隻。

かたや海賊の船は最新の船で、どういうわけか船員も正直俺たちより錬度が高い。


こちらは重く、鈍く、守るためにしか作られていない。

教練では「港を背にして耐えろ」と言われる。


突撃など考えるな。包囲されるな。沈むな。撃退ではなく、遅滞。勝利ではなく、時間稼ぎ。

戦えば勝てぬと知りながら、それでも退かぬための船。


なのに、俺が乗ったハルミチの船は速く、鋭く、敵に突撃した。

衝撃的な船だった。思い出すと今でも手先がピリピリする。


今はあの船は帆もなく、動かない。どういう仕組みで動いていたのだろうか。


「おーい!エルド!」

波止場から呼び声が聞こえた。ハルミチだ。嫁と一緒にいる。俺に手を振っていた。


「ハルミチさん!どうしたんすか?」

「ルシェナ様からお願いされてな。ちょっと君の船を見せてもらえないか?」

「!?」


いい予感しかしなかった。わくわくが止まらなかった。

女を戦いの船に乗せたくはないが、ハルミチの嫁なら仕方がない。


「はい!よろこんで!」


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