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48話 ルシェナの後悔

『ちょっとハルミチさん!あなたにそこまでの重荷を背負わせるつもりはないの。ここを奴らが襲わないようになればいいのよ』


『俺の計画は船長のみの確保です。手っ取り早いでしょ?』


――まずい。非常にまずい。


せっかく私と友達になってくれるというアルマの大切な人を、死地に送ろうとしている。


海賊退治の奇想天外な発想があればと、軽い気持ちでお願いしてみたら、

一人でスカッドを捕獲してくると言い出した。


一番期待していない発想だった。


まずいのはそれだけではない。仮に彼が逃げ帰ってきた場合、

またすぐにスカッドが本気で街を襲ってくる恐れがある。


スカッドはここ近年、急激に力をつけた海賊だ。

最新の船を使い、まるで国家艦隊のような動きを見せる。

そして――なぜか海上ではなく、この街を直接狙ってくる。


他の海賊とは明らかに違う。

背後に、支援者がいる。


この街をよく思っていない勢力。

――本国。


さすがに一部だとは思うけれど。


本国の会合に出るたび、私は疎外感を覚える。

首都を除けば、最も税を納めているというのに。


「ルシェナ様、彼らが出港しました」


……本当に行ってしまった。

冗談ですよハハハくらい言ってくれれば、私は怒らずになかったことにできたのに。


しかも大砲一門すら積んでないという。


「警護隊3隻出撃準備を。彼らに追いつかなくていいわ。彼らの航路を追って状況を確認して。無茶はしないで」

「ハッ」


そうこうしているうちに朝食の時間になった。私は食堂に向かった。


「アルマ様、お入りになります」


「おはようございます。ルシェナ様」

「おはよう」


「お疲れのようですね。ちゃんと眠れていますか?」

「いいえ、全然。あなたの護衛が心配で。……あなたは心配じゃないの?」


「心配ですよ。でも彼は私の息子の呪いを解いて、悪霊を倒して、荒ぶる龍神を倒して、魔神を倒して・・」

「ちょ、ちょっと待って!龍神を倒した?」

「話の通じない龍神だったらしくて彼を襲ってきたそうです。とにかくそんな人なんで海賊くらいちゃっちゃと倒しちゃうと思いますよ」


規格外の勇者ね。

そこまでの人物なのになぜ今まで誰も知らなかったの…


「人間は狡猾よ。この狡猾さでここまで進化してきたのだから」

「私、直観には自信あるんです。ハルミチさんは大丈夫ですよ!ご飯食べましょう!」


――カーン、カーン、カーン。

日が真上に昇りきった頃、警備隊帰還の鐘がなる。


警備隊が戻ってきたらしい。急いでアルマと港に向かう。

そこには信じられない光景があった。


「キャプテンスカッドをつかまえたぞぉぉおお!」

「なんだって!?」「まじか!?」


同時に彼の商船も戻ってきた。が、航行不能になっていた。

船体は砲弾を食らった後であろうへこみがいくつもあり、マストもなくなっている。


警備船からは大量の海賊が降ろされている。……船長のみの捕獲ではなかったのか?


そして、彼の船から、片腕を失ったスカッドが降りてきた。

奴は、まっすぐ私の前へ歩み寄る。


「オレを捕まえてもまた似たような奴が出て来る。捨てた契約はでかかったな」

「そうね。覚悟の上よ」


スカッドは海賊一味と警備隊に連れられて町の民に罵倒されながら警備詰所へ消えていった。

アルマがハルミチに駆け寄った。


「ハルミチさん!おかえり!」

「ただいま!こっちは何事もなかった?」


「うん!ハルミチさん怪我はない?」

「ああ。大丈夫」


彼が私のところへ来た。


「ハルミチさん、今回も本当にありがとうございました」

「いえ……最後はちょっと危なかったですが、何とかなりました。船員さんたちにも助けられました」


「……まさかとは思うけど。全滅させたの?」

「はい。実は初めからそのつもりでした」


のちに同乗した船員から常軌を逸した彼の戦いを聞いた。


水の大砲1発で5隻ぶち抜いただの、海を割って船を海底に突き落しただの、

スカッドとサシで戦って腕を切り落としただの

……理解が追いつかない話ばかりだった。


「……」


「あれ?全滅はまずかったですか?」

「ハルミチさん。城へ戻りましょう。報酬をお渡しします」


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