46話 海賊釣り
――その夜。
ガタッ!
「もう船、直ったの!?」
「ええ。ルシェナ様も乗ってみます? すっごく速くて気持ちいいんですよ♪」
ルシェナの執務室で、アルマが楽しそうに話している。
「まずは明日の夜明け。奴らが釣れなければ、夕暮れに再出港します」
「明日? ちょっと待って。どうやって船を動かすの?」
「一人で動かせるように、魔法で改造しました」
アルマは当然待機。レネイも戦闘には連れていけない。
一人でできることが増えたせいか、最近は物怖じしなくなってきた。
……前世の俺からは考えられない変化だ。
「あきれるを通り越す人ね。でもダメよ。こちらの警備船も同行させるわ」
「いえ、船速が違います。足手まといになりますし、警備船付きでは奴らは釣れません」
ルシェナは少し考え込み――
「……分かったわ。ならせめて、こちらの人員を乗せてちょうだい。見届け人は必要よ。それに、海を知る者がいた方が危険を早く察知できる」
「それは助かります。お願いします」
こうして、
索敵員、水夫、そして戦士が数名が船に乗り込むことになった。
……重くなるんだよなぁ。
そして、夜明け前の薄明。いよいよ出港だ。
ゴーレムスイッチは常時起動済み。いつでも動ける。
「この船何もねぇじゃねぇか!これでどうやって戦うんだ!」
戦士は戦う気満々だ。
「目標は船長のみ。急襲、捕獲、即離脱です」
「しかし大砲もねぇんじゃ心細いぜ」
「俺が船長の船に乗り込みます。水夫さんはこの船の操舵に慣れてください。今回は索敵が最重要です」
「おうよ!」
「では出港!アルガ!」
商船――コルベットコンゴウは、ヒューズナセルの港を離れた。
奴らの航路は読めない。
時間も場所もバラバラで、煙に巻くのがうまい。
それでいて、あの時は――
ボーリングのピンみたいに綺麗な戦列を組んでいた。
……妙にシステマチックな海賊だ。
しばらくは通常の商船航路をなぞる。
マスト操作なんて当然分からないが、そこは船員がやってくれる。
この船は風に依存しないので本来不要だが、見た目の問題もある。
結局、いろいろと助けられている。
食料も万全だ。
「どうぞ、自由に食べてください。飲み物もあります」
「おいおい、旅行かよ!」
「釣れなかったら旅行ですね。気楽にいきましょう」
二時間ほど漂う。ベタ凪の海。
水平線から、ゆっくりと日が昇る。
入り江や小島も当たってみたが――
「今回はボウズですね。一度戻りましょうか」
……やはり、甘くはない。
この人たち、普段は防戦ばかりなんだろうな。
索敵もぬるい。
――そう思った、その時。
ドンムッ!ドドドムッ!バシャァアア!
「海賊発見!!全員戦闘態勢!!」
……でしょうね。遅いわ。
前方に5隻、後方に5隻。
横一列で挟み込まれている。
完全な挟撃。どこに潜んでいたんだ?
ドドドムッ!ドドドドドムッ!
ブシャァアアア!バシャアアアン!
凄まじい砲撃。
距離はまだ300〜400メートルだが、急速に詰めてくる。
「次、当ててくるぞ!」
「全員、つかまれ!海に投げ出されるぞ!カリガ!」
水夫から舵を奪い、取舵いっぱい――全速!
ファアアアアアッ!!ズババババ!
「うぉああああ!なんだこれ!」
船員たちがしがみつく。
加速で船首が浮き上がる。
まずは弾幕から離脱――右側を潰す!
一瞬で着弾エリアを抜ける。
「グルーオン!」
水上ドリフト。
昨日、遊び半分で練習した停止法がここで活きる。
横一列に並ぶ敵艦隊の側面に回り込んだ。
今ごろ慌てて装填しているだろうが――遅い!
「船首、開口!ウィイイイン!(地声)」
コンゴウの船首に、螺旋状の開口部が展開する。
「エネルギー充填200%!!波動砲――発射ぁああ!!」
ドヴォォォォォオオオオオオッ!!
高圧水流が一直線に放たれる。船名間違えたな。
バッババババッ!バキバキバキッ!ドドドオン!!
5隻、まとめて貫通。
火薬に引火する間もなく、
海賊船はほぼ真っ二つに砕け、沈んでいった。
奴らの規則正しい単横陣が仇となった。
さてさて、残るはあと5隻、
船員たちには「船長のみ捕獲」と言っていたが、本当は、
「海賊殲滅じゃぁあああ!!フハハハ!!」
船員たちは、ただ唖然と俺を見ていた。




