44話 ゴーレム
港に着くと、壊された船の片づけを街ぐるみでやっていた。
そこにひときわ目立つ、石の人形が水をたっぷり含んだ船の瓦礫をせっせと運んでいるのを見つけた。
「ヒイッ!」
背後から聞き覚えのある悲鳴。
クソ眼鏡……レネイだったか。。
「そんなに怖がらなくてもいいだろ。まだ何もしてないし」
「いっいずれあなたにナニかされるんですか?」
「俺を怒らせなけば多分何もしない」
「そ、そうですか…多分?」
「あれはお前の魔法か?」
「はい、私のゴーレムです」
「すごいな……」
レネイがこうして話している間も、
ゴーレムは止まることなく瓦礫を運び続けている。
「どういう仕組みなんだ?」
「ま、魔方陣を動かしたいものに掘り込んで、そこに呪文を吹き込む方式です」
つまりは、ほぼ自動だ。
「ところでお手伝いされてるの?」
アルマがレネイに尋ねる。
「はい。ここのギルドの緊急クエストです。報酬がよかったので」
報酬がいいというところで、ルシェナの顔が浮かんだ。
俺の中のルシェナ株が勝手に上がった。
「あ、あの……もう行っていいですか?」
「まあ待て。お前、まだこの街にいるのか?」
「え? は、はい……」
「俺は今セレニア城にお世話になっている。この仕事終わったら俺の部屋に来い」
「え!?」
「え!?」
レネイもアルマもびっくりしている。
「詳しくこの魔法について聞かせろ。その代わり、お前の知りたいことも教えてやる」
「わ、わかりました!」
怯えた目が一瞬きらっと輝いた。彼女はゴーレムと瓦礫撤収作業に戻っていった。
「もう!部屋に誘ったからびっくりしたよ!ああいう子が好みなんだと思っちゃったよ」
「何いってるのそんなわけないでしょ。俺はたっぷりが好きなんだ」
「たっぷり?」
俺しか知らない俺基準の単位だ。ちなみにぽっちゃりとは全く違う。
俺たちも瓦礫の撤去を手伝い、日が暮れるころには海は大体片づいた。
たまにこういう襲撃があるようなので、良くも悪くもみんな慣れたものだった。
「はいどうぞ!ごくろうさん!」
近くの食堂で、魚介たっぷりの温かいスープを振る舞われる。
体にしみる。
城に戻り、来客があることを伝えた。
今日はルシェナは役場で会合があるらしく留守らしい。
夕食を終えた頃、ほどなくしてレネイがやってきた。
「改めまして。レネイ・ソシエといいます」
「ようこそ、レネイさん。どうぞ座って」
「ど、どうも」
アルマがお茶を出した。アルマも俺の事を知りたいらしく、俺の部屋にいる。
「まずはレネイ。お前が聞きたいことを話そう」
「え、はい。まずあの大樹を復活させた力について教えてください」
……さて、どう説明したものか。
『イメージしたらポンとできちゃうんじゃよ』って言うと嘘くさいし、
一歩間違えたら神認定されて、めんどくさい事に巻き込まれそうだ。
もう巻き込まれてるが。
「あれは師匠から分けてもらった能力だ、この大地を操る魔法」
「大地を操る……私の魔法と少し似ていますね」
「対象に陣を掘って呪文を唱えるって言ってたな」
「はい。魔法陣に“どういう形でどう動かすか”を書き込みます。基本は土ですが、木や石にも応用できます」
「なるほど、俺は対象に触れて、頭の中で何をどうするのかをイメージして呪文を唱える」
……あれ、結局“イメージしてポン”って言ってないか?まいいか。
「対象に触れるだけ?陣はいらないのですか?」
「いらない。完成のイメージをどれだけ明確に持てるかが重要だ」
「試してみてもいいですか?呪文を教えてください」
確かに似たような魔法だ。こいつワンチャン出来ちゃう可能性がある。
教えても困らないやつを。
「そうだな、手から水を出してみよう・・・アクア」
コップを持って水を出した。
よくよく考えたら持ったほうの手からコップの中へ水を出せる事にこの前気づいた。
「やってみます」
「はいどうぞ」
アルマが空のコップをレネイに渡した。
「そのコップに湧き出る水をイメージするんだ。そして『アクア』だ」
もちろん『アクア』と唱えることに意味はない。
「アクア!」
――何も起こらない。アルマもやってみるが何も起こらない。
「まぁそうですよね。これでできちゃうと魔法の概念が崩れてしまう」
「そうだな。この力は師匠とのつながりが重要だ。俺一人で全てできてるわけじゃない」
それっぽい能力とするためにまたカナハを巻き込んじゃったゴメン。
「レネイの魔法も見たい」
「そうですね…この部屋ではあぶないので外へ」
俺たちは城の外の庭に出た。
土に木の棒で魔法陣を描いた。その掘った溝にピンク色の謎の液体を注ぎ込む。
瓶に入っていた時はピンク色とわかるが透明度が高いので、
土に注ぐと、ピンクとは分からない程度のピンク色。
「それは何の液体なんだ?」
「魔法を伝導させる塗料です。ピンク色の鉱石を細かく砕いて、樹脂と油で練っています」
「鉱石か…」
「赤系の鉱石が一番伝導率がいいみたいですが…あまり高価なものは使えませんので」
なるほど…ルビーとかめっちゃパワー出そうだけど、高そうだし粉末にするのも大変だな。
「クオーク!」
魔法陣がピンク色に光りだし、ゴモゴモと土が盛り上がり、よく見るゴーレムのような形になった。
「カリガ!」
ゴーレムが歩き出した。
「魔法陣に”土のゴーレムが歩く”とかいて、呪文で息を吹き込みました」
「これはいつまで動くんだ?」
「止める呪文か、壊れるまでです。グルーオン!」
ゴーレムが止まった。
「これって俺が指令とかできるのか?」
「最初の起動以外は可能です」
「動力の源泉は?」
「この大地から賜ります」
「……アプローチが違うだけで、確かに似てるな」
「ですよね。私もそう思います」
俺の力は瞬間的で、彼女の力は継続的。
「お前の力は戦いに乱用されそうだが」
「はい、なので魔導神学院の名前で守ってもらってます・・とはいえ、この前はクマごときにボコボコにされたので、実際は戦力としてはあまり役に立たないんです」
「でも今日の石のゴーレムのように力はある」
「素材の硬さと比例して力を得られるところまでは分かってます」
「レネイ。その力を貸してくれないか」
「え?」




