43話 勇者ハルミチ
「おはようハルミチさん!」
次の朝、アルマが俺を起こしに来た。さすがに元貴族と護衛設定ならば
一緒の部屋になることはなかったので、個別の部屋で寝ることができた。
「おはよう。。」
「朝食いきましょ!」
アルマは村娘の格好で朝食に行く。昨日アルマとルシェナは友達宣言していたので
おそらくもう見栄を張る必要はないらしい。おれもNPC服を着た。
「アルマ様、ハルミチ様、お入りになります」
食堂に入ると、すでにルシェナが座っていた。
「おはようございます」
「おはよう!昨日の後処理で朝からバタバタしててね。さあ、座って。いただきましょう、料理を!」
「かしこまりました」
料理の準備が進む中、アルマが遠慮がちに口を開く。
「お忙しいのに私たちがルシェナ様のお時間を占有するわけには・・・」
「違うのよ。私が三人で食べたいって頼んだの。普段は朝から人が出入りして騒がしいんだけど……今日は、ハルミチさんに少しお話を聞いてほしくて」
せわしく料理が運ばれてきた。3人で食事というこのセッティングは特別らしい。
昨日のルシェナのねっとりモードはレアシーンだったんだ。
「幸い昨日はハルミチさんがキャプテンスカッドを追い出してくれたおかげで、一味は退散したけれど、港のほうはかなりの被害が出たわ」
港組は金品物資をさらうチームとか言ってたな。
「この街の治世に全力を注いできたのだけれど、今バランスを欠いているの。夫が剣を重視した治世をしていたのには、それなりの理由があったのだと痛感しているわ」
これは内密の話を俺たちにしているのか。
「あなたよね。ベルデ村の御神木を復活させて、魔神を倒した”勇者ハルミチ”さん」
「い、いえ……あれは師匠と――」
勇者ハルミチ!!圧倒的偽物感!
「ふふっ。この街でももう有名よ?――あなたに協力してほしいの」
「観念なさい!勇者ハルミチ!」
アルマが寝返った!ドジっ子の敵役みたいなセリフやめて。
「お役に立てるかはわかりませんが、どういった事を協力すればよろしいのですか?」
「ありがとう、お話だけでも聞いてもらえると嬉しいわ」
これは…口説き落されそう。
「私の周りにはたくさんの人が集まるけども、軍事に明るい人間はなるべく遠ざけてきたの。戦いを知る人間に少しでもそういう話を出そうものなら、倒すしかないだの、軍艦増やせだの、子供でも思いつくような発想しか出ないわ」
「あんな面白い”芋ほり魔法”を考え付くあなたなら、何かいい方法思いついてくれるかなって」
聖典の七大列強の必殺魔法が、ここでは「芋ほり魔法」という名前に変わってしまった。
通常海賊は、海に出ている商船とかを略奪するものじゃないのか?
ん?商船か……
「船を一隻借りられますか?商船がいいです。この状況なので壊れている船でも構いません」
「わかったわ。すぐ手配します。引き続きあなたたちはこの城に泊ってもらっていいかしら?この城にいる間は、メイドも食事も服も自由にできるようにしておきます。ベルデ村にあなた達の無事と、お力を借りる旨を伝令で伝えておきます」
そして立ち上がり、
「じゃあね!よろしく!」
最後まで話を聞かずに、ルシェナはあわただしく部屋を出ていった。
今はルシェナのお願いを俺が承諾したという事実が欲しかったというところだろうか。
断る理由が、今のところ見当たらない…び、美人なのはさておき。
「ひとまず港に行って、俺たちも何か手伝おう」
「うん!」
俺たちは港に向かった。




