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6 - オルブライト公爵家

 

 

 オルブライト公爵家はとても大きかった。

 自領の家はもっと大きいらしく流石貴族様は違う。

 

 公爵様はまだ公務で王城にいるらしく、連絡はしてあるので戻るまで客間でお茶をしながら待つことになった。

 

 席に着く前に椅子を引かれ、座れば目の前に紅茶やお茶菓子が出され、至れり尽くせりな普段ならあり得ない状況に感動しつつお菓子を摘む。高いのだろう、とても美味しい。

 

「公爵家に来たっていうのに随分と余裕そうだねー。普通はもう少し緊張とか遠慮とかあるんじゃない?」

 

 パーシスの言葉はいつも何処か棘を感じるのは何故なんだろうか?

 まあ確かに普通はそういった反応なのかもしれないが、シャルとの約束のこともあり、せっかくの貴重な体験なのだから少し楽しむのも悪くはないだろう。

 もちろん、公爵様には私に出来る範囲でしっかり対応させて貰うつもりだ。

 

 そんなことを思いながら紅茶を飲む。

 

「ふぅー。喋れない相手だと無視されてるのかそうじゃないのかが分からないねー」

「ちょっと! パーシスあなたさっきからね!」

「はいはい、失礼しました。なんだか少し外が騒がしい気がしますので様子を見てきます」

 

 そう言ってパーシスは部屋を出て行った。

 無視されてるとかは昔からよく言われることだった。実際相手や話の内容、私の気分によっては無視することも確かにあるので、そう言ったことを言われるのは何とも思わない。

 

「この間からパーシスがごめんなさいね。普段からよく分からない人ではあるけれど、悪い人ではないのよ。信じられないかもしれないけれど……あっ、これ置いておくわね」

 

 でもそのことを知らないシャルは私のことを気遣ってくれる。今も紙と羽ペンにインクを用意してくれた。

 シャルにこれを使わなくても会話が出来ることを伝えようとした時、外から何かが飛んできた。

 

 窓もカーテンも開いており、ガラスが飛ぶことは無かったが、侵入者も何の障害もなく入れてしまったようだ。

 

 部屋の中で大きな羽を羽ばたかせながら頭上をぐるぐる回る茶色っぽい鳥。鷹だろうか? 何だかとても興奮しているようだ。

 

 急なことに驚いて、シャルや部屋の隅に控えていた使用人たちも、悲鳴を上げながら頭を抱えしゃがみ込んでいる。

 そこへ今度は大きな真白の狼のようなものが、下から跳んできたのかバルコニーに降り立った。

 動物好きの私には堪らない展開だが、とりあえず興奮している鳥を鎮めなければ。

 

 指笛を一度吹く。反応してこちらを見た鳥と目を合わせながら一定のテンポで指笛を吹き続けると、雰囲気が少し和らぎ落ち着いてきた。そのまま続けていると、私の座っていた椅子の背もたれに止まり落ち着いた。

 

 近くで見ると大きく、鋭い鉤爪や嘴はとても迫力があるが、紫色の目は賢そうで面立ちは美人さんだ。

 もう一匹の方は全体的に白で足元が少し水色かかった感じでとても綺麗だ。

 躾られているのか、鳥からずっとシャルを守るように構えていた。手を差し出すと近寄ってきたので頭などを撫でて褒めてやる。

 二匹とも初めて見る上にとても可愛いく、これを見れただけでも公爵家に来た甲斐はあったかもしれない。

 

 そんなことを考えていたが、なんだか周りがやけに静かなことに気付く。見てみると、シャルや使用人の人たちが揃って目を瞠っていたり口がだらしなく開いていたりと、取り敢えず驚いている様子だった。

 

 そこにまた、新たな仲間が加わった。

 

「シャル、大丈夫か!?」

「お姉様ごめんなさーい!」

 

 パーシスと緩く巻かれた金髪の男の子が入ってきたが、部屋の様子をみて同じく固まる。

 みんなよく分からないので放置しているとパーシスが戸惑いながら話かけてきた。

 

「えっとー、これはどういう状況? 君今度はいったい何したのさ?」

「はっ! お姉様大丈夫でしたかっ?」

 

 パーシスともう1人——おそらく弟だろう子の

問いかけにシャルも漸く動き出し、大丈夫だと伝え椅子に戻り先程のことを説明している。

 使用人たちも動き出し、少し散らかった部屋が片付けられていく。

 

「すごーい! あんなに興奮していたレバンをそんなに簡単に落ち着かせてしまうなんて! それに、ライリーが父様以外に触らせているところなんて僕初めて見ました! お姉さんは凄い魔獣使いの方なんですか?」

 

 どうやらあの美人さんはレバンという魔鳥のようだ。ライリーは公爵様の使い魔でグレートレーンズという種類らしい。

 

 そして私は凄いもなにも、魔獣使いですらない。

 なのに尊敬した眼差しで見つめられて居た堪れない。

 

「あ、名乗りもせずに失礼しました。 僕はイアン・オルブライトです。10歳になりました! そろそろ使い魔を持つ年齢になったので、家の魔獣舎にいた1番かっこいいのにしようと試したら失敗して……」

「イアン、魔獣舎には1人で近づいてはいけないと言われていたでしょう? 取り敢えず、レバンがここに飛んできた理由は分かりました」

「俺も外に行って驚いたよー。なんか凄い勢いででかい鳥が飛んでくるんだもんなー」

「うっ……。ごめんなさい」

 

 色々とあった事はイアン君が原因のようだ。10歳くらいの男の子の好奇心・冒険心は、貴族も平民も変わらないのだろう。

 

 

 その後も私が紙に名前を書くと不思議がり、話せないことを伝えると驚き、魔獣使いでないことも伝えるともっと驚き少し落ち込んだ。教えを請うつもりだったらしい。

 仕種や話し方は貴族の子息を感じさせるが、気が緩むと出る子供らしい言葉や反応には、やはり普通の子と変わらない無邪気な可愛いらしさがある。

 

 そしてシャルと色々な話を聞かせてくれた。ライリーは気位が高く自分が主と認めた公爵様以外の言う事は勿論、触らせることすらしないらしい。だから私に触らせていたことにみんな驚いたようだ。

 

 他にも、使い魔には鳥が契約しやすいこと、兵士を目指すものは大型の獣を、目立ちたい貴族は珍しいものを持ちたがったり、最近では愛玩動物として契約する人も増えたらしい。

 しかしそれは本来の形に近い。始めは巫女姫様と神獣に習いパートナーとして同等であったものが、やがて戦に使われるようになり、主従関係の契約をするようになってしまったようだ。

 

 公爵様は、契約は魔獣という危険なものを側に置くのだから管理の為には必要なことだが、戦に使うのは間違い。との考えらしく、王城での指南も戦い方より警護や救助などといったことを教えていたらしい。ライリーも戦う為ではなく、家族を守る為に契約したようなもので、余程のことがない限りはこうして家に置いているようだ。

 この家にある魔獣舎も、街につれてこられたものの、様々な理由で契約者が居ない状態のものなどを保護するための場所らしい。

 

 そんな中、今の指南役のカースティ家は反対に、戦に使ってこその魔獣。と言っているらしく専ら戦闘訓練ばかりさせている。その為、オルブライト家とカースティ家は犬猿の仲として有名らしい。

 

 私にもアイビーという魔獣の友達がいるため、完全に公爵様派だ。会ったこともないのに失礼かもしれないが、カースティ家の人は好きになれそうにない相手なので出来れば会いたくない。まあ、貴族様だし心配することは無いだろうが。

 

 

「賑やかな声が聞こえてくると思ったら、随分と楽しそうじゃないか。 おや珍しい、イアンだけでなくライリーまでここにいるのかい?」

 

 色々な話をしていたら、あっという間に時間が過ぎていたらしい。外はもう夕暮れだ。

 

 声の方に振り向くと、扉の所にとても素敵な男性がいた。

 金髪に茶色の瞳。整った顔立ちは間違いなく2人の元になった人物だろう。

 ただ、纏う空気は2人と違いどこか冷たい。国の宰相ともなれば当然なのかもしれない。

 

「待たせてしまってすまないね、私の執務室で話をしようか」

「カミール、心配せずとも私も行きますからね」

 シャルの言葉に安心した。流石にこの人相手に私1人では緊張してまともな会話は無理そうだ。

 イアンも来たがると公爵様は少し驚いた様子だったが許可は出ず、少し拗ねている。可愛い。

 ちなみに、レバンは少し前に魔獣舎の管理をしている人が迎えに来た。本来は穏やかな性格らしく、大人しく連れて行かれた。

 

 

 執務室には公爵様と私、シャルとパーシス、執事のような人の5人で入った。

 パーシスは3人で話をしている時にいつの間にか居なくなっており、公爵様が帰ってくるとまたいつの間にかシャルの側にいた。本当に神出鬼没な人だ。

 

 公爵様が椅子に腰掛け、私とシャルは執事机を挟んで向かいに立つ形だ。パーシスは扉の近くに、執事さんは公爵様の斜め後ろに控えている。

「さて、私の名はカーリー・オルブライト。早速だが君の使い魔について聞きたい。 ああ、シャルから話は聞いている、これを使いなさい」

 挨拶は私からしていいのか、そもそも立っていていいのかと考えていると、公爵様が話し出し執事さんが動きだした。

 紙を用意してくれるのが分かったのでお断りする。

 

《お心遣い感謝致します、公爵様。カミールと申します。 こうして、普通ではありませんが会話は可能でございます。礼節には疎いので、その辺りはご容赦下さい。では、どうぞなんなりとお聞き下さい》

 

 

 突然のことに全員が呆然と固まっていた。

 

 

 私は自分の言葉がおかしくないかがひたすら心配だった。

 

 

 

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