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5 - 公爵令嬢

 

 

 目が醒めると森の中だった。

 

 

 突然の事に驚いて周りを見ると、すぐ近くに大きな黒い塊があった。

 取り敢えず知っているものを見つけて安心し、今の状況の整理をしてみる。

 

 太陽の位置からして、だいたい明け方くらいね。

 この子がいるってことはここは北の森よね?

 私いつの間に来たのかしら?

 

 この黒い獣は北の森に棲む魔獣だ。

 猫の様な顔をしているが、体はとても大きい。簡単に説明するならば、馬より肉付きが良く、牛よりも筋肉質な感じだ。

 

 体を撫でてあげると擦り寄ってきたので、次は喉をくすぐると金色の瞳を細め気持ちよさそうに鳴いた。

 

 何故か初めて会った時からとても懐いていて、私もアイビーと名前を付けて可愛がっている。

 それからは、時間があれば森にきて一緒に遊んだり昼寝をしたりしていた。

 

 今も、この前来た時に忘れていった薄い毛布を被っており、記憶はないが自分でここへ来てアイビーと寝ていたのかと考える。

 しかし今まで昼寝はしても夜に一緒に寝たことはなく、さらに昨日の記憶が曖昧なのが気持ち悪い。

 

 シャルの話を聞いていて、また会う約束をして、……ダメだわ。その後が思い出せない。

 最後どうやってシャルと別れたのかしら?

 次に会う日は決めたのかしら?

 

 ぐるぐると同じことを考えるが全く思い出せそうにない。約束の日にちを忘れたとなったら最悪だ。

 今日の仕事が終わったら、何か知っていないか母を訪ねようかと考え、——仕事があったことを思い出す。

 

 

 それからは急いで森をでて家に戻ると、地面で寝たせいか少し湿った服を脱ぎ、時間がないので体は水で濡らしたタオルで拭いて新しい服を着ると、荷物を持って家を飛び出した。

 

 時間の把握のためにも懐中時計が欲しいところだが、なかなかに高値のためお金持ち以外で持っている者は少ないだろう。

 

 

 私は昔から動物に好かれやすく、声が出ないことから接客業など出来るはずもなかったので、人里離れた場所で家畜の世話をする仕事を選んだ。

 牧場を営む夫婦はとても親切で優しく、私にも普通に接してくれる。その為、そこでの仕事はとても気に入っていた。

 だから遅刻なんて以ての外なのだが……

 

 走ってきたことで間に合ったのか、いつものように家畜たちの大量の餌を準備しているおじさんとおばさんがいた。

 そのまま近づくと、走ってきた私に驚き声をかけてきた。

 

「おう、カミールおはようさん。体はもういいのか?」

「おはようカミール。そんなに走って大丈夫なのかい?」

 

 取り敢えず挨拶は返したが、よく意味が分からない。

 

 

 何故か病み上りということで、比較的力仕事の少ない鶏舎の卵拾いと掃除をしながらおばさんの話を思い出す。

 

 1番の衝撃は私はどうやら2日あの森で寝ていたらしい。遅刻どころか無断欠勤だった。最悪だ。

 

 2人も休むどころか遅刻すらしたことのない私が来ないことを不思議に思っていたらしい。

 すると昼頃に馬車に乗って貴族のお嬢様がきて、私は風邪を引いて院で寝込んでおり、当分仕事には来れそうにないと言ったらしい。

 自分は私の友人であり、忙しい母——ミモザさんに代わってここに伝えにきた。とも言っていたらしい。

 

 貴族のお嬢様で私の友人と言ったらシャルしかいない。

 よく分からないけれど、仕事が終わったらやはり母の所に行くべきだろう。

 

 仕事量の少ない分丁寧にやろうと普段あまりやらない所まで掃除していると、お昼の時間になったのかおばさんが呼びに来た。

 隅々まで綺麗になった鶏舎を見て驚いていたが、病み上りでやり過ぎだと少し怒られた。

 

 すぐ近くにある2人のお家でいつものようにお昼をご馳走になったところで、今日はもう帰って大丈夫だと言われた。先程やり過ぎたのもあるのかもしれない。

 しかし気になることもあるのでお言葉に甘えることにする。

 

 

 歩きながら聞きたい事などを整理していると、前方に大きめの馬車が止まっているのが目に入る。

 近づいていくと、どうやら孤児院の前に止まっていたようで持ち主が来たのだろう、御者だろう人が扉を開け馬車に乗り込もうとした彼女と目があった。

 

「カミール? カミール! あなた今まで何処にいたの? 急にいなくなってしまって、どこにも見当たらないし、ずっと探していたのよ? 体はなんともないの? あの魔獣はなんなの? 何処へ行ったの?」

 

私だと分かった途端に馬車から離れ、こちらに来たと思ったらいきなり質問攻めにされてしまい、その勢いに私も聞きたいことがあったのだが戸惑ってしまう。しかし魔獣ってなんのことだろうか?

 

「まあまあ、お嬢さん落ち着いて。取り敢えず見つかったんだし、旦那様に報告しに行かないと。話なら馬車の中でしたらいいよ」

「それもそうね。 悪いのだけれどカミール、今から一緒に私の家に来て貰いたいの。詳しい話は馬車の中でするわ」

 

 そんな感じで流されるまま馬車に乗り込み、シャルの家であるオルブライト公爵家へ向かう。

 そう。馬車に乗り込むなり改めてされた自己紹介で公爵令嬢だったと分かったのだ。

 確かに今日の服は以前会った時と違いかなり立派だった。普段はこういった服装なのだろう。

 

 オルブライト公爵家は代々魔獣使いの名家らしく、王城で魔獣を扱う騎士たちへの指南役を熟すこともあるそうだ。

 しかし今はオルブライト公爵は国の宰相を務めているため、指南役はもう1つの名家であるカースティ公爵家が受け持っているようだ。

 

 シャルは自分の使い魔をまだ持てておらず、この前の話の落ちこぼれはここに繋がっているらしい。

 

 そして私が公爵家に向かっている理由は、家長であるカーリー・オルブライト——シャルのお父上に呼ばれたからなのだが、呼ばれた理由がよく分からない。

 私の使い魔について聞きたいらしいが、そんな凄そうなもの知らない。

 

 2日前の話も聞いた。

 なんでも、話をしていたら突然気を失って倒れたらしい。その後私の影から黒い獣のようなものが現れたと思ったら、私を咥えてまた影に消えていったそうだ。

 

 黒い獣とはアイビーのことかと考えるが、影から出てくるなんて見たことがない。

 

 その後直ぐに探したが何処にもおらず、次の日には孤児院にも行ったが何もわからない。しかし仕事の話を聞いたので見に行ったが居なかったため、もし私が仕事に来たら不思議に思ってくれるようおじさんとおばさんにあの話をしておいたらしい。

 2日も見つからないから凄い心配したと少し泣かれて焦ったが、シャルの私を思う気持ちはとても嬉しかった。

 

「泣いたりしてごめんなさいね。 それに急にいろいろ説明されても困るわよね? でも出来れば普通に接して欲しいの。貴族の娘ではなくて、その、友達として」

 だからその言葉には、時と場合によっては難しいかもしれないがなるべく普通に接してあげようと思い、手を握りながら笑って頷けばシャルも笑ってくれる。

 やっぱり彼女には笑顔が似合う。

 

 そんなことを思いつつも頭の片隅では違うことも考えていた。

 

 

 どうしよう。こんな普通の服で公爵家とかお邪魔していいのかしら? 公爵様にお会いするってことよね? 作法とかもよく分からないわ。それに私2日湯浴みしてないし……。あ、考えたらなんかへこむわ。

 

 平民の女の子としては普通の悩みだとは思う。

 

 

 そんな感じでオルブライト公爵家に到着した。

 

 

 



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