表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/15

14 - 好みと相性

 

 

「手順としては今言った通りよ。何も難しいことはないし、痛みももちろんないから落ち着いてやって貰えば大丈夫」

「は、はいっ!」

「ふふっ、そんなに緊張しなくても大丈夫! レバンは良い子よ。でも、もし嫌なら

「嫌だなんてそんなっ! 少し自信がなかっただけでして……。ふぅー。もう大丈夫です、お願いします」

 

 今フィンはレバンと使い魔の契約をするために、シャルから説明を受けていたところだ。

 

 何故突然こんなことになっているかというと、シャルたちのところに戻ってくる前のフィンとの会話にある。

 

 

 

 

——————

 

 

 フィンから聞いたこの国の話はとても衝撃的だった。

 巫女姫の産まれ変わりや、隠された真実。

 気になることが多すぎる。

 そして何より、神殿と王家のこれから。

 シャルは周りからの多少のやっかみはあれど、学園を卒業したら好きな人のもとに嫁ぎ、大変ながらも幸せな日々を過ごせるのだろうと思っていた。

 しかしこのままではそんな簡単には事は運ばなさそうだ。

 かといって、今の段階で私に出来る事など何もないだろう。

 でも何かあった時のために情報を集めるのは悪くないはず。有事の際に慌てふためくようなのはよくない、いつでも何にでも対応出来るようにしておきたい。

 問題はその方法だが……そういえば、さっきフィンに何か聞こうと思って……

 

「ごめんなさい! 私何も考えずいろいろ話して。ねね様のことを何も考えずに……! こんな話聞いたら色々と心配になって当然ですよね、でもまだ争いごとになると決まった訳じゃないのでっ」

《大丈夫よ、少し考え事をしていただけだから。それに私、少し前までただの平民だったから本当にそういった話は全く知らなくて、というか興味もなかったから、フィンの話は凄く有難かったわ。もう興味無いなんて言っていられない立場だからね。だからありがとう》

 

 突然謝ってきたフィンには驚いたが、私が黙って考え事していたのをこれからのことを心配して暗くなっていると思ったらしい。本当に優しい子だ。

 彼女の情報は本当に有難いのでこれからも色々教えてくれると助かる。

 そう、何かあったら教えて欲しい。

 出来ることなら早めに……あ。


《さっきも少し聞いたけど、フィンは別に魔獣が嫌いとか怖いとかは思ったりしない?》

「そうですね〜。嫌いってのは無いですけど、騎士団の、魔獣部隊の人たちの訓練を見ると少し怖く感じます。でも、文官の人がたまに連れている使い魔を見れば穏やかなものが多いですし、怖さは種類によるって感じですかね。ちなみにここ数年、ダリア様の影響か、綺麗だったり可愛い使い魔を持ちたがるお嬢様方が多いみたいですよ」

 

 例え綺麗で可愛いくとも、生き物である以上面倒や苦労もあるだろうし、お嬢様となるとアクセサリーのように飽きが来そうで少し怖いところだ。

 数年後、オルブライト家の魔獣舎にその子たちが居ないことを願おう。


《フィンは持ちたいとは思わないの? 使い魔》

「興味はありますけど、私にはとても! 自分で捕まえるのなんて無理ですし、買うとなればそれはもう高いですからね〜」

 

 魔獣は長命のものが多いため、まれに親から子へと受け継がれたりすることもあるようだが、基本的には自分で捕まえるか専門の商人から買うかして契約をする。

 ちなみに、オルブライト家の魔獣舎にいる子たちは訳ありの子が多いため、お金では買えないが旦那様と交渉し、許可が貰えれば譲り受けることが出来る。

 

《そういう話なら大丈夫そうね。実は今日一緒に来てる子がいるんだけど、フィンさえ良ければ契約してみない?》

「えっ?」

《オルブライト家で保護してる子でね、取り敢えずここに呼ぶから見て貰える? 見た目はフィンの好みだと思うの》

 そう話しながら指笛を一つ。声の出ない私が呼ぶにはこの方法しかないのだが、レバンは頭が良い上に耳も良いので直ぐに来てくれるだろう。今歩いているのは回廊で、外にいるレバンに音も届きやすい。

 

「え! えっ? えぇっ!?」

《旦那様の許可はあるから大丈夫よ。お金もかからないし、少し難しい子だけれどフィンとは相性がいいと思うの》

「わあ、タダですか? ……っいやいやいやいや! そんなっ! 私には勿体

《あ、来たみたいよ》

「無いって……え? きゃわああぁぁっ!?」

 丁度近くにいたのか、思っていたよりも早く来たレバンは、私たちの周りを一周すると地面に降り立つ。

 下では見にくいので、羽に気をつけながら抱き抱え持ち上げる。少しコツがいるが、慣れれば簡単だ。

《この子がレバンよ。でもこれは魔鳥としての名前だから、契約したらちゃんとした名前付けてあげてね》

「あ、はい。分かりました! ……いやいやいやいや! ちょっと待って下さい、展開が早すぎてもう何が何やら……?」

 

 確かに少し先走りすぎたかもしれない。

 私はレバンとフィンは上手くやれると思うが、フィンがどう思うかもしっかり聞かないといけなかったな。

 レバンの方は落ち着いているし、フィンのことを嫌ってはいない。まあ、まだ好意も持ってはいないようだが。

 

《あー、ごめん。確かに色々と説明が足りなかったかも。一つずつ説明するわね》

「はい! お願いします」

《まず、この子がレバン。オルブライト家で保護してる子で、今日ここには旦那様に頼まれて連れてきたの》

 魔鳥は他の魔獣と違って空を飛んだり、動いてることが多いため、魔獣舎が広くてもストレスが溜まる。とくにレバンは人に慣れていないこともあり酷かったらしい。先日の脱走事件も、きっかけはイアン君だが原因は恐らくこれだ。

 なので早く誰かと契約してもう少し自由にしてあげたいのだが、オルブライト家の魔獣は訳ありで有名らしく、なかなか貰い手がつかない。

 大分だいぶ人にも慣れてきたので、もう少し自由に飛べたらと、今日は私と一緒に来たのだ。

 

《そんな訳だから、もしいい相手がいれば旦那様の許可を頂かなくても、私の判断で譲っていいって言われてるの。 フィンはこの子と相性がいいと思うんだけど、どう?》

「えーっと、訳ありって言ってましたけど、この子にはどんな訳が……?」

《分らないの》

「ん? 分らないのに訳ありなんですか?」

《レバンは魔鳥の中でも珍しい種類みたいでね、何処かの御子息がそこに惹かれて無理矢理契約したけれど、珍しいから何が出来るのかも良く分からなくて、結果手に余って破棄したらしいの。この子はそういう訳ありよ》

「そんなっ!この子は何も悪くないのに……」

《本当にね。 他の魔鳥と同じことは出来るのに、むしろこの子は頭がいいから、他の子よりしっかり働いてくれる》

 魔鳥はどれも飛ぶことに優れているため手紙などを運んだりと連絡手段に使われることが多い。届ける相手の魔力を辿るので、魔力を覚えたり、そもそも魔力のない相手には届けられなかったりと制限もあり、少し地味な役割のためあまり人気はないが、いざという時なかなか役に立ったりもする。

 

《さっきの話に少し戻るんだけどね、私は情報とかには本当にうといの。これからのことを考えると、フィンからの情報は凄く欲しい。でも、お互いに仕事があるし頻繁には会えないでしょう? だから、レバンに手紙を届けて欲しいの。私の魔力はもう覚えてるだろうし。 契約はレバンの為でもあるけれど、私の為でもあるの》

 少しフィンを利用するようで心苦しいが、仕方ない。でも、せめて……

《勿論、何でもない普通の手紙を届けて貰っても構わないわ。あなたの話もいろいろ聞きたいし。 届いた手紙の返事は、そうね……また訓練に通うだろうし、パーシスに預けるわ》

「喜んで引き受けます!」

 餌で釣ったみたいになったが、フィンが喜んでくれるなら結果的には良しだろう。

 

「実はさっきからずっと気になっていたんです! この子の瞳! 色味は少し違いますが、私とパーシスさんと同じ紫なんですよ〜! キリッとした表情がとても美人さんです〜!」

 やはり食いついた。

 この子の見た目はフィンの好みで間違いなかったようだ。

 そして今の言葉で、レバンもフィンに好意を抱いた。彼女は少し気位が高いので自分を立ててくれる相手を好む。

 この2人(1人と1匹)の相性はやっぱり良さそうだ。

《じゃあ、契約してくれる?》

「はい、喜んで! あ、でもこの美人さんは私でいいんでしょうか?」

 その言葉にレバンは私の腕の中から出てフィンのもとに行く。

「わっ! いたっ!? お、重い……」

《フィンを気に入ったみたいね》

 なんとか抱えたフィンに綺麗な持ち方を教えつつ、その姿に笑みが零れる。

 レバンは他の魔鳥の平均が20〜30シムなのに比べ50シムと、なかなか大きい。なのでフィンがレバンを抱えると殊更ことさら大きく見える。

 ちなみに屋敷に来た頃測ったところ、私の身長は166シムとなかなか伸びていた。目線の高さ的にシャルは150シムちょいくらい、フィンもそれ位だろう。

 

「ふわぁ〜! 近くで見ると本当に美人さんです〜! 瞳が綺麗〜、紫がもっと好きになりますね!」

 フィンを見ていたら私もなんだかアイビーに会いたくなってきた。彼女の金色の瞳はなんだかとても暖かい。 そういえば、さっき見た彼の瞳も金色だった。

《紫の瞳も確かに綺麗だけど、金色もとても綺麗じゃない? 珍しいようだし》

「金色? あー、マスグレイヴ様ですね。確かに綺麗だとは思いますが、大半の方は少し恐く感じるみたいです。そう言う私も少し苦手だったりします」

 そう言って苦笑いするフィンに少し驚く。

《フィンにも苦手とかあるのね》

「えぇ!? ありますよー! 顔に出さないだけで、実際は苦手なものだらけですよ〜!」

 

 少し言葉の怪しいフィンのことは置いといて、

《キラキラしてて綺麗なのにどうして恐く感じるのかしら?》

「お顔はとても綺麗な方ですからね、人気はあるんですけど、無表情だからですかね? 金色の瞳は少し冷たく感じるというか……。他のお姉さん方は睨まれてる気がするって言ってました」

《優しいいい人なのに勿体無い。笑うと見える八重歯とか、ずっと見てると目が泳いだりするところとか、凄く可愛らしい人なのに》

「あの人を可愛らしいなんて言う人初めて見ました……。それにずっと見てるって……私には無理です、なんだか食べられちゃいそうです」

 隣を見ると絶句したような表情をしていた。食べられちゃうって、それこそアイビーじゃあるまいし。フィンの顔を見てると何故か可笑しくなってくる。

《ふふっ。食べられないわよ、私食べられてないでしょう? でも、あの人を見てると逆に食べちゃいたくなるわね》

「「えっ!?」  ちょ、それってどういう意味で、ん? あっ! ……ねね様、あの、前に」

 少し揶揄からかうと顔が真っ赤になって慌てだした。と思ったら、前を向いて真っ青になった。

 不思議に思い視線の先を追うと、此方こちらにも顔が赤く染まった人がいた。

《アルヴィン様》

 

 

 どうやら話し込むあまり何度も立ち止まったり、ゆっくり歩いてしまっていたせいで、大分だいぶ時間がかかってしまっていたらしく、不思議に思いパーシスをシャルたちの護衛に残し、アルヴィン様が様子を見に来たようだった。

 どこから話を聞いていたのかは分らないが、反応を見るに私の発言は聞こえていたようなので、冗談だと謝っておいた。

「いや、こっちこそなんだか盗み聞きみたいになってすまない。自分の話だと思ったら声かけずらくてね……でも冗談でも、可愛らしいとか初めて言われたな」

 苦笑いしつつ悪くないのに謝ってくる彼は、まだどこか照れが残って見える。だが、

《そこは冗談じゃないですよ。今もアルヴィン様は、私には可愛らしく見えます》

 ここは冗談にしてもらっては困る。

 固まってしまった彼は残し、少し動揺するフィンを連れてもう直ぐそこに居るシャルの元へ少し急ぐ。

 

 自然と緩む頬は望む反応を見れた満足感からか、それともまた別の感情なのか。

 

 

 

 

 2人の元へ戻った後はしっかり謝った後、シャルにフィンを紹介し、レバンのことを伝え、今に至る。

 

「分かったわ。じゃあそうね、左足を出して貰える? さっそく陣を書き込みましょう。インクはカミールが持っていたかしら?」

 

 側に置いていた鞄から、契約の時に使う特別なインクを取り出し、シャルに渡しながらフィンを見る。

 契約よりも周りの人たちに緊張しているようだ。特にパーシスが気になるらしく、さっきから見る→溜息うっとり→目が合う→逸らす(もだえる)を繰り返していてパーシスも不思議そうだ。

 見ていて面白い。

 

 それにしても、

《足に描くの? 手の甲じゃなくても大丈夫なのね》

「普通は手の甲なんだけど、フィオナは侍女だからあまり目立たない方が良いと思うの。仕事の面と、変に目を付けられない為にもね」

 

 なるほど、言われてみれば確かにそうかもしれない。

 でも公爵令嬢相手に素足を出して、魔法陣をわざわざ描いて貰うというのは、なかなかに厳しい物がある。

 シャルがフィンに跪くのもあまり宜しくない。遠目では魔法陣を描いているのなんて分からないだろう。

 まごつくフィンと目が合うが、さて、どうしたものか。

 

《パーシス、ちょっとフィンを横向きに抱えて貰える?》

「え? まあ大丈夫だけど、いいのかね?」

「え? え!?」

《フィンのことは気にしないで。 メルヴィル様とアルヴィン様はもう少し此方こちらに寄って貰えますか?》

「では失礼しますよ、っと」

「え、あの、えぇ!?」

《じゃあシャル、描きにくいかもだけど頼んでいい? フィンは動いたらダメよ》

「わ、分かったわ」

「うぅ〜……ふふ」

 

 シャルが跪くよりはいいと思ったけれど、よく考えたらこれはこれで不思議な図かもしれない。

 突然抱き抱えられた侍女に、それを囲む貴族たち。

 でも男性陣はみんな背が高いし案外隠れて大丈夫かもしれない。

 フィンもなんだか嬉しそうで、口許の笑みが隠しきれていない。

 

 

 その後、フィンの意識がパーシスに向いているうちに、シャルによって手際よく魔法陣が描かれ、名残惜しそうにパーシスの腕から降りたフィンはレバンに魔力を流して貰い、無事に契約完了となった。

 そして彼女の足首辺りには紋様と文字の入り混じったものが、ぐるりと巻きつくように刻印されていた。

 

 


 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ