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13 - 真実の行方

 

 

 先ほどから、フィオナの様子が何処か可笑しい。

 

 

 いつまでも立ち止まっている訳にもいかないので、フィオナを促し、すぐ近くまで来ていたらしい保管室にて茶葉を分けて貰い、庭園に戻るところなのだが……。

 何処かそわそわしていて、何か言いたげに口を開いてはまた閉じる。

 さすがに気になるので聞こうかと思った時、

 

「よしっ! あの、カミールさん! 私、私の、……姉になってくれませんか!?」

 

 不可解なお願いをされた。

 

「はぅ! 間違えたっ! あの、えっと、お姉様と、呼ばせて貰っても、いいでしょうか……?」

 言い直してくれたのだが、あまり変わって無いような気もする。それに恥ずかしいのか声はだんだん小さくなり、最後はほとんど囁き声だった。

 しかし、赤い顔を隠そうともせずに真っ直ぐこちらを見つめる目は真剣で、期待の中に少しの寂しさが垣間見えた。

 

「私、少し事情があってここへ働きに来たんですけど、来る前はお城での仕事って、華やかで、キラキラした物や人に囲まれた素敵な仕事なんだろうな〜って思ってました。でも、実際は全く違うんですよね。 私欲にまみれた汚い大人たち。姉と呼んで慕うには陰険な彼女たち。ここではみんな笑顔を作ってて、キラキラは上辺だけ。現実は甘くないって知りました」

「でも、カミールさんはそんな人たちとは違う。周りなんて関係なくて、自分を持ってる。あなたみたいな人にはもう会えない気がするんです! だから……あ! 私よく雑用でここを歩き回ってるので色々な情報持ってますし、持ってこれます! きっと役に立ちますよ! ……ダメでしょうか?」

 

《親しくなるのに役に立つ、立たないは関係ない。 私もフィオナとは仲良くしたいと思ってたから嬉しいよ》

「それでは!

《でも、友人ではなくて姉なのには理由があるの?》

「あ、えと、ただ私が姉という存在に憧れていただけでして……。さっき頭を撫でられた時に、雑用を押し付けてくるような姉ではなく、優しい姉が欲しいな〜と思いまして……」

 ここでの仕事は随分苦労しているようだ。

 でも情報を集めたりしているあたり、しっかりしてるというか、ちゃっかりしているというか、転んでもただでは起きない子なのだろう。

 

《成る程ね、分かった。でも呼び方は少し変えて欲しいかも》

「では、ねね様で! 私がそう呼ばれてましたので! あ、私のことはこれからフィンと呼んで下さい!」

《……。まあ、いいかな》

 様を止めて欲しかったのだが、そこは諦めて、嬉しそうなフィンの頭を撫でてやる。

 

「これからの楽しみが一つ増えました。ここに来た時には、少しでいいのでまたお話して下さいね!」

 そうか。フィンは此処での仕事があるし、私も基本ずっとシャルに付いてる。

 今日みたいなことが無ければなかなか会えないのだ。

 

 ……。

 

《フィンは魔獣ってどう思う?》

「魔獣ですか? うーん、みんな頭がいいんだろうな〜って思います。 はっ! もしかして派閥の確認ですか!? 大丈夫です! 私は勿論、保守派ですので!」

《保守派?》

「あれ? 派閥確認じゃなかったんですか?」

 

 

 フィンに聞いた話によると、今この王都では派閥争いによる少し面倒なことが起こっているらしい。

 

 元々はオルブライト家とカースティ家による魔獣の在り方を巡っての意見の相違が始まりだった。

 これにより守護を目的としたオルブライト家は保守派、戦に価値を見出した攻めのカースティ家は革新派と言われるようになり、何方どちらかに付く者、傍観する者に分かれた。

 両派閥は確かに仲が悪くあったが、小さないさかいはあれど特に大きな問題は無かった。

 

 ところが、大きな問題が起きてしまったらしい。

 

 恐らくの発端はシャルとメルヴィル様の婚約にある。

 保守派には旦那様とマスグレイヴ騎士団長、彼の直接率いる近衛騎士、革新派にはカースティ公爵と彼の指南する魔獣使いたち、そしてその部隊を纏める部隊長デール・モンクトン侯爵。といった具合に上手いことバランスが取れていたのだが、シャルが婚約者になったことにより、ラドフォード王家までもが保守派に付いたと噂されるようになった。

 

 勿論そんなことは関係なく、子供たちの気持ちを優先させた親心による婚約なのだが、そんなこと周りは知る由もなく、カースティ公爵もその1人だった。

 彼にもシャルと同じ歳の娘がおり、メルヴィル様の婚約者にと推していたのを断られてのこの結果。しかも選ばれた相手は犬猿の仲のオルブライト公爵の娘。

 それが許せなかったのだろう、彼は思いもよらない手段に出たのだ。

 

 

 この国には政治にはあまり関与して来ないものの、王家と同等と言っていい程の力を持つものがある。

 神殿だ。

 王家と同じくこの国の始まりから存在し、今も神獣が居たとされる泉を管理している。

 また、巫女姫が創ったと言われる神殿は、民衆からの信仰や支持が厚く、神殿の協力により国が纏まったことから、王家も強く出れない存在だった。

 しかし神殿側も表に出ることはなく、裏方でのサポートに回り今まで上手くやってきたのだ。

 

 その神殿が、どういう訳かカースティ公爵と手を組んだのだ。

 

 これにより今はまだ公にはなっていないが、水面下での争いだったものが、国をかけての王家と神殿による争いへと変わりつつあるようだった。

 

 

「末端の一兵士などにはまだ伝わってないようですが、各派閥に付いていたそれなりの権力者たちの間ではやはり大きな問題らしく、最近の城内は今までにない程ピリピリしてます。殿下もこれから忙しくなるのではないでしょうか」

 

 何やらとてつもなく面倒くさいことが起こっているようだ。

 事の次第では、少なからずシャルも巻き込まれるだろう。

 こうなってくると最初はあまり気にしていなかったが、フィンの情報はかなりありがたい。どこでそんなに知って来るのかが気になるところだ。

 

「私はただ掃除をしているだけですよ。彼等が私の近くで話すのです。周りを気にしてますが、ただの小娘の侍女見習いは気にならないようで小声で話出すのです。だから私は少し得意な風魔法を使って傍聴しているだけです」

 そう言って笑うフィンに思わず苦笑い。堂々とした盗み聞きの手口だった。

 

「後はお姉さんたちの会話とか、結構聞いてると役に立ちます。侍女同士、横の繋がりが多少あるらしく、色々な家のお家事情などもよく分かります。主に男女の話が多いですね〜、お話しますか?」

 あまりいい話では無さそうだったので今回は遠慮することにした。

 

 

《それにしても、今まで上手くやってきたのに何故神殿は王家と敵対しようとしてるのかしら?》

「どうやら最近神殿長の代替わりがあったらしく、新しい神殿長とは陛下方もまだ面識がないためよく分からないようです。 ただ……私も聞いただけなのでよく分からないのですが、彼等はこう言っているそうです。————……と」

《何それ?》

「分かりません。ただ、カースティ公爵の娘であるダリア様は巫女姫様の生まれ変わりと言われているので、もしかしたらそれに関することかと……」

《生れ変わり?巫女姫の?」

 この言葉を聞いた時、何故か心臓が大きく脈を打った。

 

「はい。金色の髪に紅い瞳、昔の文献にある巫女姫様と同じ容姿で、白銀とはいきませんが美しい白色の魔鳥を使い魔に持っているそうです。その上、契約していない魔獣とも意思の疎通が可能だそうで、公爵家は時をさかのぼれば王家の血筋に繋がるため生れ変わりではないか、と」

 

 確かに話を聞く限り、そう考えるのも不思議ではない気がする。

 ダリア・カースティ。

 少し本人を見てみたいと思った。

 

 

 それにしても一体どうしたのだろうか。

 巫女姫の生れ変わり。

 この言葉に私の中の何かが反応してる。

 公爵家に来てからよく見る夢と同じ感覚。……いや、夢は私が覚えていないだけで、前にも見ていたのかもしれない。

 

 何にしろ、彼等の言葉の意味が分かった時、私のこの不思議な夢や感覚の答えに繋がる気がする。

 

 

 

 

 

 

『隠された真実が暴かれる時が来た』

 

 



 真実が真実たる証拠とは、何なのだろう。

 

 

 

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