お昼ご飯
長かった?夏休みが終わった。始業式からしばらく経った今でも、夏休みを嘆く声や自慢話が教室を飛び交っている。
それを小耳に挟みながら、リュックの奥底にはいっているであろう今朝買ったパンを探す。
みんないろんな所に行っているようだ。いつも思うけれど、観光って何が面白いのだろう。綺麗な景色?有名な料理?僕には縁がなさそうだ。
「じゃあ君はまず中庭に行ってみようか」
「え?」
目の前には弁当らしき袋を持った彼女がいた。
「どういうこと?」
「そのままだよ。中庭行こ」
「え?なんで?」
クラスメイトの数人がこちらを見てくる。今まで教室で話しかけられたことなんてなかったのに。
「そりゃあお昼ご飯食べに行くからだよ」
「なんで僕と?友達と行けばいいじゃん」
「もし友達と食べたかったらもう食べてるよ。ほら。行くよ」
「そんなん言ったって」
クラス全員が僕たちを見ているような気がする。
「じゃあこのまま注目されたい?」
「分かったよ......」
席を立って彼女に着いて行く。
もはや隠す気のない目線を無視して教室の扉を閉めた。
「なんで急に僕と食べようと思ったの?」
階段を下りながら聞く。
「なんとなく。話したいことがあったし」
「話したいこと?」
「あとで話すよ」
教室では話せないことなのだろうか。病気関連?その場合は教室に帰りたい。
「中庭でご飯食べるの初めてかも」
「私も」
「そうなんだ」
四角いテーブルに腰を下ろす。彼女は斜め前に座っている。
「だいぶ涼しくなったね」
「確かに。まあ暑い中外で食べるのは自殺行為だからね」
「ふふっ。それもそうだね。ちょうどよかった」
小さく「いただきます」とだけ言ってパンを口に運ぶ。それとともに軽い後悔が押しよせる。今日はカレーパンの気分じゃなかった。
「いつもカレーパンだね。飽きないの?」
「飽きるよ。今日は失敗した」
「ふふ、いつかコンビニのパン全制覇してそう」
「かもね。そうなったら教えてあげるよ」
「どれが一番美味しかったか教えてね。死ぬまでに」
「きっとね」
プチトマトを嫌そうに食べる彼女が目に入る。どうせなら好きな物だけいれてもらえばいいのに。そんなことを言っても彼女は否定するか。想像ができる。理由は分からないが。
「そういえば話って?」
「あーそうそう。単刀直入に聞くと来週の日曜日って空いてる?」
「まあ空いてるね。おそらく再来週も」
「それはよかった。じゃあ遊びに行こう」
「いいよ」
「いいの?いつもの君なら駄々をこねるのに」
「僕を幼稚園児だと思ってる?」
「いいや別に〜。まあいいならいいけど」
いつも思うけれどこのカレーパンは全然辛くない。
「じゃあ詳細はまた連絡するね。ということでお先に失礼」
「了解」
先に教室へ戻って行く。二人で帰ったらまた面倒くさそうなためありがたい。
しばらくしてから僕も椅子から立ち上がる。
クシャクシャにした袋を手で握りながら教室へ向かう。
僕が誰かとお昼ご飯を食べたのっていつぶりだろう......。
いつもと違って二段飛ばしで階段を登った。




